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「サイド・エフェクト」(SIDE EFFECTS)

-ビッチ、ビッチ、またビッチ-
2013年 米 スティーヴン・ソダーバーグ監督



ソダーバーグの最後の作品(日本封切りは1本前の「恋するリベラーチェ」の方が後になる)だからというよりも、ジュード・ロウとルーニー・マーラの顔合わせというのにちょっと興味が湧いて観てみることにした作品。ヒッチコックをかなり意識しているということだったけれど、ワタシはさほどヒッチコック臭は感じなかった。それはそれとして、キャサリン・Z=ジョーンズの黒眼鏡の不気味な女医っぷりはなかなか印象的。ルーニー・マーラも役にハマっていたし、単純なお人よし夫のチャニング・テイタムも気の毒なばかりの単純なお人よしっぷりで適役だった。

梗概:金融マンだった夫がインサイダー取引で逮捕された事をキッカケに、うつ病になったヒロイン、エミリー(ルーニー・マーラ)は自傷行為に走り、精神科医バンクス(ジュード・ロウ)の診察を受ける。バンクスは新薬を処方し、症状は改善したかに見えたが、エミリーは新薬の副作用(サイド・エフェクト)で夢遊病になり、夫を刺し殺すという事件を起す。バンクスはそんな副作用のある薬を処方した責任を追及され、医師としての生活も、家族との関係も破綻しかけるが…。

というわけで、中盤まではルーニー・マーラ演じるエミリーの真に迫ったウツ病っぷりが物語を引っ張って行く。彼女が以前カウンセリングを受けていた精神科の女医シーバート博士にキャサリン・Z=ジョーンズ。黒髪に黒ブチ眼鏡で切れ者そうだが、どことなく不気味な雰囲気を醸し出している。エミリーの治療について意見を聞くバンクスに、シーバート博士はある製薬会社の新薬を薦める。



製薬会社は臨床例を集めるために、医者と契約して自社の新薬を患者に処方してもらう。医者にはけっこうな額の金が入る。バンクスは、最近新居を購入したばかりだというのに妻が失業し、妻の連れ子が学費のかかる私立校に通っているため、幾重にも金が必要な状況だった。それゆえ、製薬会社との契約話には1も2もなく飛びついてしまうのだが、この不用意さが思わぬ落とし穴となる。

今回、なかなか、と思ったのはルーニー・マーラ。彼女は体当たりで「ドラゴン・タトゥの女」のリスベットを演じた事が確実にステップボードになって、役の幅が広がったと思う。本作のルーニー・マーラはムンクの「マドンナ」を想起させるようなルックス。複雑な役どころで、女優としては演じていて面白い役だったろうと思う。サスペンス系の映画に出て危うい存在感を放つという点では、「イノセント・ガーデン」のミア・ワシコウスカといい勝負だろうか。(映画としては本作より「イノセント・ガーデン」の方がワタシ的には面白かった)


ムンクの「マドンナ」(部分)



ルーニー・マーラは姉のケイト・マーラ(「骨折り山」でヒースの娘を演じていた若手女優)と顔や雰囲気が似ているけれども、姉は気の強さがモロに表に出ているのに引き換え、ルーニー・マーラはややセンシティヴな雰囲気がある。それに似たような顔立ちでも姉より妹の方がやや美人度が高いかなという感じ。今後、さらに楽しみな女優だ。ちなみに姉のケイト・マーラはケヴィン・スペイシー主演のポリティカル・サスペンス・ドラマ「ハウス・オブ・カード」に野心家の若手新聞記者役で出ている。ドラマ自体もかなり面白いし、ケイトも役に合っている。姉妹そろってなかなか活躍しているマーラ・シスターズである。



姉 ケイト・マーラ


姉より、いたいけな雰囲気のあるルーニー・マーラ

まぁ、とにかくこの映画。出てくる女がビッチばかりである。ビッチ大行進。ヒロインのビッチぶりに較べるとさしたることもないかもしれないが、バンクスの妻もひそかにかなりのビッチぶりである。自分は失業して面接を受けに行く以外は時間があるというのに、自分の連れ子である息子を夫が学校に迎えに行かなかったというだけで腰に手を当てて怒りをぶつける。夫はそれどころではないトラブルに巻き込まれて四苦八苦しているというのに。どうせ失業してプーなんだから、息子の迎えぐらいお前が行け!と言いたくなった。バンクスを演じるジュードが怒らないので、代わりに心の中で怒っておいた。


採用面接に落ちたといって嘆く妻を慰めるバンクス

まだ観ていない人も多いだろうので、あまりネタばれになる事は書くまいとは思うのだけれども、ルーニー・マーラ演じる若妻は呆れ果てるばかりの悪女である。贅沢三昧の暮らしが一瞬にして潰えたからって、そこまでするのか?というぐらいにあくどい。心にひとカケラの愛情もない。誰も愛していない。大層もない自己中である。しかも、このビッチは男ばかりか、女まで手玉にとって悪巧みを計画する。ルーニー・マーラは、前半のビョーキ演技(いつ自分で自分を損なってしまうかわからないようなうつ病の危うい様子)から、おや?あららら、という側面を出してくる中盤~終盤まで、女優としては腕のみせどころの多い役で楽しかっただろうと思う。ルーニー演じるエミリーはそもそも、精神的に少し普通じゃなかったのではないかと思わざるをえない。



キャサリン・Z・ジョーンズも色と欲のふた筋道で身を滅ぼす女医にピッタリ。それにしてもあの黒ぶち眼鏡とダークな口紅の不気味さときた日には。がっちりとした黒いフレームの眼鏡をかけると、彼女の鼻が上を向いている事や、薄いけれども上唇がめくれ気味なのが目立つ。今回、一番役にハマってみえたのは彼女だったかもしれない。こういう女医っていそうだ。結婚に破れた挙句に、今度は女に走っちゃうという気配がそこはかとなく出ていた。ビッチはビッチなのだけど、散々利用されてオシマイの、気の毒なビッチだった。



一番気の毒なのが、夫を演じるチャニング・テイタム。お人よしで単純そうなルックスと役の雰囲気が合っていた。チャニング・テイタムって昨今セクシーNo.1で大人気らしいのだけど、あまりにもモクモクと筋肉が付きすぎだし、ぷわっとした口元とか、どうにも頭が悪そうで筋肉バカ(あくまでも見た目にそういう感じがするというだけだけれど)としか見えず、ワタシはあまり好みではない。でも、本作ではあまりに立つ瀬のない役なので、ちと気の毒になった。



そして昨今、見事に広いM字額が定着したジュード・ロウ。存在感にかつての華はないが、落ち着いてどの役にも自然に馴染んでいる印象だ。本作でも、中年でちょっと男前ではあるが、年齢なりに皮膚にも頭髪にも疲れの見える精神科医を着実に演じていた。とかく美貌で売り出すと、女優だけでなく俳優も、中年期以降は美貌の衰えにつれてキャリアをどう構築していくのか、流れの中で上手く存在感を転換していかなくてはならないのだけれど、ジュードは早く頭髪が危うくなってきたために、美貌でなくても成り立つ役への転換が早めに進んだのではないかと思う。事実、本作のジュード・ロウにはさっぱり華やかさは無かったが、だからといって存在感がないわけではなく、等身大な感じで悪くなかった。
この分なら、名実ともにジュード老になっても仕事を続けていかれるだろう。



本作では、ジュード演じるバンクスが、ビッチ二人にハメられて窮地に追い込まれつつも、僅かなところから糸口を見出して形勢を逆転する流れが、もうちょっとメリハリのある演出で観たかったという気もする。何か、サラサラサラーっと流れていった、という印象もなきにしもあらず。
利用され、コケにされ、やられっぱなしにならなくて良かったねぇ、という感じではあるけれども、ラストで、一度は出て行った女房がチャッカリと子供を連れて、何事もなかったように元鞘に収まっている様子には、はぁ!?という感じがした。調子いいわね。何なのかしら、あの女房。

とまぁ、そこそこ面白くはあったけれども是非とも観るべき、というような作品ではない。ただ、何か映画観たいけど、特に観たいものを思いつかない、という時などにはお薦め、という感じだろうか。

昨今、とにかくTVドラマ(海外ドラマ)で面白いものが多いので、映画はよほどの出来でないと、ふ~む…という感じにしかならなくなってしまった。TVドラマはじっくりと回を追って描けるので、物語も人物描写も深く掘り下げる事ができるが、映画は2時間だから、ドラマよりもっと筋運びや演出に工夫がいるのかもしれない。映画には映画の見せ方があると思うけれども、出来のいいTVドラマをあれこれと観ていると、並みの出来や、並みよりちょっと良いという程度の映画にかなり点が辛くなってしまうなぁ、と、最近感じる事の多いkikiでございます。

コメント

  • 2013/09/19 (Thu) 00:00

    すみません、ジュード老に笑ってしまいました。
    まあ、確かに昔のキラキラしていたジュード(「リプリー」が最盛期だと思う)にはもう戻れないとは思いますが、落ち着いたいい俳優になりましたよね。昔はジュードの演技ってちょっとクセがあるなあとは思っていたのですが、今回は良かったです。
    ソダーバーグ最後の作品とのことですが、本来こういうちょっとした佳作みたいなのが彼の持ち味なのでは?と思います。

  • 2013/09/19 (Thu) 22:41


    mayumiさんもご覧になったざますねー。本作のジュードを観てたら「ジュード老」という文字が脳裏に浮かんでしまって。ぷふふ。
    そうね。ジュードは落ち着いてきましたね。堅実な俳優になったというか。華がなくなった代わりに長持ちしそうな気配です。それと、本作のジュードの役ってユアンでも違和感なくスイッチ可だな、とも思いましたわ。あの二人は友達だけど、役柄とか今後なんとなく被ったりしていきそうだな、と思ったりね(笑)

    ソダーバーグの持ち味が「ちょっとした佳作」にある、というのは、その通りかもしれませぬね。

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