目的地としてのホテルを巡る旅 シェムリアップおよびハノイ その2 

-石の微笑 アンコール・ワットおよびバイヨン-



翌日、早朝から快調に目覚めたワタクシらは、100%の遮光カーテンを開き、バルコニーからホテルの前に広がる庭を眺め、朝日を浴びて体をしっかりと目覚めさせて、洗顔、歯磨きを終えると水着に着替え、勇躍、中庭の美しいプールへと向いました。
静かな中庭のプールでは、プール掃除専門の人(多分)が、丁寧に道具を使って落ち葉や虫を拾い、プールの水を美しく整えていました。プールサイドにはジムもあるのだけど、ジムでマシン相手に体を動かすのはキライなワタクシらは、バスタオルだけ借りてプールサイドへ。


目覚めると遮光カーテンを開き、プライベート・バルコニーへ 籐椅子に座り、ミネラルウォーターを飲む

簡単な体操をしてから、やや温かめの水が心地よいグリーンのプールの水に体を浸しました。このプールの水がグリーンに見えるのは、底に敷かれたタイルがそういう色だから。いやもう、実に瞑想的なグリーンですのよね。この瞑想的なプールで、まずは朝食前に一泳ぎ。たいして泳げもしないワタクシらだけれど、鳥のさえずりと空を流れる雲、快適なそよ風、心地よい水に包まれて、小1時間、気持ちよく泳いだり歩いたりしてプールで過ごしました。


この美しく心地よいプールで、ほとんど貸し切り状態で過ごした


空の青とプールの底のグリーンのタイルが溶け合う

さぁ、かなりお腹も減ったし、部屋に帰ってシャワーを浴びて、シャンパン付きの朝食をしたためよう、とプールからホテル内に戻る際、ドアを開けてホテル内からプールサイドのバルコニーに出てきたのは、長身、黒髪、40代後半から50代前半といったところのシブーい男前のヨーロピアン。暫し、中に入るワタシ達のためにドアを押えていてくれました。早朝からビシっとダークスーツでキメたこの御仁、どうやらこのホテルの支配人ではないかと推察。甘くない、苦みばしった男前でちょっと好みだったけど、どうにもカメラは向けにくい雰囲気でざんした。まぁ、まず支配人とみて間違いなさそうだけど、ホテルのスタッフも朝7時過ぎぐらいから支配人がダークスーツでキメて、ホテルのラウンジに居るのでは気を抜くわけにはいきませんわね。ふほほ。

そして、この朝、ワタクシは名物エレベーター・ボーイに遭遇したんざますわ。エレベーター前のポジションに立って控えめに微笑んでいた彼に、「4階までお願いします」と言うと、畏まりました、と恭しくエレベーターのドアを開けてくれました。箱に乗り込んでから、「あなたを日本のTV番組で見たわよ」というと、えへへ、という感じで恥ずかしそうに微笑みました。「クラシックホテル憧憬」の「ラッフルズ・グランドホテル・ダンコール」編は2011年1月に放映されたので、撮影は2010年だったのかもしれませんが、彼はその撮影の事をよく覚えているようでした。友が横から、「あなたは日本でも有名人」なんて余計な事を付けたしたので、彼は余計にはにかんでおりましたが、おいおい、嘘はいかんよ、嘘は(笑)


抜群の勘と記憶力を誇るという名物エレベーターボーイ

ワタシ達が滞在していた間に限って言えば、彼は客の動きを察知して、呼ばれる前に上がったり下がったりする、というような事はせず、大体、客を運び終えるとするすると下に戻って、箱から出てエレベーターの前に立ち、体の前で両手を組み合わせて、いつでも客を迎えられるように備えている、という感じでした。あの野性の勘の話はまるきりの作り話でもないんだろうけど、そういつもいつも神経を張り詰めて仕事をしているというわけでもないんでしょうね。あれは番組の演出かな(笑)

ともかく、名物エレベーターボーイの動かすエレベーターで部屋に戻り、シャワーを浴び、着替えたワタクシらは1階の「カフェ・ダンコール」へ。ここでは毎朝、朝食時に宿泊客にスパークリングワインではない、ちゃんとしたシャンパンを振舞ってくれるんですのよ。お代わり自由。朝からそうそう飲めないけれども、シャンパンがグラスの中で少なくなってくると、ボーイさんがにこやかにやってきて、もっとシャンパンはいかがですか?と勧めてくれるんですわね。ワタシは1杯半ぐらいしか飲めなかったのだけど、友は3杯ほど飲んでおりました。


カフェ・ダンコール

朝からシャンパンを味わいつつ、ゆったり、たっぷりと朝食をしたためる

この「カフェ・ダンコール」の朝食ビュッフェは本当に素晴らしかったです。何を食べても飲んでも実に美味しかった。シャンパンばかりでなく、コーヒーも美味しかったし、フレッシュなフルーツジュースも美味しかった。スムージーも美味しかった。各種のハムも美味しかったし、デニッシュも全て美味しかった。飲茶もあったし、朝粥もあったし、美味しいものが到底食べ切れない程ふんだんに有ったのだけど、それらの何よりも美味しかったのは、ヌードルスープでしたのよ。カンボジアは中国の影響でライスヌードルの汁麺というのがあるんですが、「カフェ・ダンコール」では春雨のような極細の麺と、卵つなぎのラーメンのような2種類の麺から好みで選んでゆでてもらい、スープをかけて小ぶりの椀で供されるんですね。そこに、好みでトゥック・トレイ(魚醤)をかけたり、葱やパクチーなどの薬味を入れたりして食べるわけですが、これがもう絶品でした。ライスヌードルの汁麺だったら、ハノイでフォーを食べればいい、と思っていたけど、この汁麺は目から鱗の美味でした。ここの朝食の麺は、ここ数年で食べたどの汁麺よりも美味だったと断言できます。


素晴らしく美味しかったスープ麺 スープの味付けが絶品だった

熱々のスープの味付けが何とも言えないじんわりとした旨味で、そこにピリカラな後味が加わるんですが、このスープが麺とからまって絶妙な味のハーモニーを奏でるんですね。あぁ、思い出したらまた食べたくなってきた。2種類の麺をどちらも食してみましたが、双方甲乙つけがたく美味でした。
ワタクシらは、時間をたっぷりかけて、しっかりと美味しい朝食を食べました。ランチを食べなくても全く痛痒を感じないほどにたっぷりとした朝食を。

それから、部屋に戻って支度をし、いざ、アンコールの遺跡へ。ホテルのドアマンにトゥクトゥクを呼んでもらい、終日拘束で1人10ドルずつの20ドルで交渉成立(交渉はホテルは無関係で、自分たちでトゥクトゥク・ドライバーと交渉する)。ワタシ達は、そのトゥクトゥクのドライバーを見て、純朴で表裏のなさそうな様子がすぐに気に入り、翌日も彼に来てもらうことにしようと即、決定。とかく観光でなり立っているような街で、ボッタクリや貴金属ショップへの誘導やオプションツアーの勧誘などから身を守るには、人柄の見極めが第一ざますわね。純朴、誠実こそが決め手。澄んだ目の正直者に幸あれ。


誠実そうな態度と顔つきが気に入って、2日間貸し切りで来てもらったトゥクトゥク・ドライバー

というわけで、11時半を廻った頃にホテルを出発したワタクシたち。ホテルから遺跡の入り口へは車で10分程度の距離。トゥクトゥクでもそんなものでしたが、車よりトゥクトゥクがいいのは、暑い日でも走り出すとすぐに涼しい風に吹かれることで、顔や髪が多少埃にまみれても、その気持ちよさは他の乗り物には代えられないざますわね。もっとも、風が涼しかったのは、11月から2月にかけてが、ここらへんを旅するにはベストシーズンだからで、最も暑い5月にトゥクトゥクで走っても、さほど快適じゃないんだそうな。ともあれ、我々は涼しい風にあまねく吹かれて、実に心地よく走りました。欧米人はレンタサイクルで、日差しをモノともせずに遺跡から遺跡へと走り回っている人が多かったけれど、日に焼けるのも嫌だし、いいドライバーもゲットしたので、ワタクシらは風を感じつつトゥクトゥクで行きました。ただ、埃や排気ガスは避けがたいので、鼻と口はクロマと呼ばれるカンボジア独特の巻き物でカバーして咽喉を守らなくてはならぬのざますが…。道ですれ違う時に見ていると、一様に同じマスクをしてトゥクトゥクや、貸し切りの小型バスなどで移動していたのはK国の団体ご一行サマたち。その姿を見て、ワタクシらは絶対にマスクはよそう、クロマでカバーしよう、と心に決めたのでした。


クロマ

暫し行くとアンコール遺跡群の入り口にあたる場所にチケット・ブースがありますのね。1日券(US$20)、3日券(US$40)、7日券(US$60)を売っております。ワタクシらは翌日も遺跡を見ようと思っているので、1日券を2回買うのと値段が同じなら手間を省こうと3日券を買いました。その場で写真を撮られて、写真入りのチケットを貰えるざます。各遺跡の入り口でチケットをチェックする係がいるので、それを見せて通るという次第。まぁ、ここでチケットを買っておけば、離れた郊外遺跡以外の全ての遺跡を見物することができるという寸法。チケットを買ってブースを通り抜けると、またトゥクトゥクに乗って、アンコール・ワットへ。カンボジアは晴れて暑い日が多かったざますが、暑いといっても暑季(3月~5月)じゃないので、最高でも30度ぐらいなら、全然、無問題ですわね。というか、11月から2月はカンボジア観光のベストシーズンだそうで、一番涼しい乾季のシーズンにうまい具合に旅をしたわけですのよ。ともあれ、帽子に日焼け止めなど用心は怠らずに、ワタクシらは聖池に囲まれたアンコール・ワットへと進んで行きました。



この日、ワタシ達がラッキーだったのは、朝から泳いでシャワーを浴び、その後ゆっくりと朝食をしたためて、ゆっくりとホテルを出て来たので、ちょうどランチタイムにアンコール・ワットに着いたこともあって、見物客がかなり少ない時間帯にうまく入れた、という事でしたのよ。何より避けたいK半島の団体さん連中とも、だからご一緒しないで済みましたんざますわ。これはもう何よりの事でした。

ワタシは今回、アンコールの遺跡は初だし、カンボジアも初だったんですが、同行した友はカンボジアは3回目というベテラン(?)。遺跡は過去に一応あれこれと見て廻ったという友の、ここは見るべし、ここはがっかりポイントなので見なくても可、というアドバイスに従って見に行く遺跡を決めた次第。何しろワタクシ、前にも書いたけれど、世界遺産系には割に冷淡な女でして、そもそも血眼で遺跡を見て廻るつもりはないんですのよね。遺跡の背後から昇るご来光なども別に見なくても一向に構わないという不届き者。泊まりたいホテルがあって、そのホテルがアンコール・ワット観光のために建てられたホテルであり、すぐ近くに遺跡があるから折角なんで観ておこうか、というぐらいな低体温なモチベーションだったので、今回でアンコール遺跡見物は卒業するという友と、ちょうど頃合の遺跡への距離感でした。

で、アンコール・ワットは、というと、白い雲の浮いたカラリと晴れた青空を背景に、実にイメージ通りに建っておりました。アンコール王朝の中期(12世紀)にヴィシュヌ神に捧げられたヒンドゥ教の寺院として建てられたアンコール・ワット。ヒンドゥの寺院であるばかりでなく、建立したスールヤヴァルマン2世の墳墓でもあったらしいざます。なるほどね。そんな気配も確かに漂っていますわね。





その後、都がプノンペンに移ってから一時忘れられたものの、数世紀あとに再発見され、未完成だった回廊のレリーフなどが付け足されたあと、仏教寺院に改修され、ヴィシュヌ神の像の代わりに仏像が収められたとか。しかし、寺院を彩る装飾はヒンドゥ教や、古代インドの伝説などに基づいたもので、デヴァターと呼ばれる胸もあらわな女神像が、アルカイックスマイルを浮かべて、柱や壁などに浮き彫りにされておりました。



聖池の真ん中をまっすぐに塔門に伸びる長い参道を日に照らされながら歩き、塔門を潜ると、正面にバーンと中央祠堂がそそり立っているのが間近に迫ってきて、おお、やはりタダモノではない迫力ではあるなぁ、という感じでした。


このように、陽に照らされつつ長い参道を歩いて仏塔に向うのでございます

その日、ワタシ達は本当に観光客があまり居ない時間帯にうまく遺跡に入ったらしく、長い廊下の壁面を埋めるレリーフで有名なアンコール・ワットの中でも、真打というか目玉というか、ハイライトである「乳海攪拌」のレリーフを殆ど貸しきり状態で見物できましたのね。友によれば、これは滅多にないことで、いつも、このレリーフの前には人がひしめいているんだとか。スコーッと人がいなくてのんびりと見物しながら歩けたのは初めてだ、と言っておりました。そうか。ラッキーだったのだね。だから、今回ワタシはアンコール・ワットについて、人を見に行ったんだか、遺跡を見に行ったんだか、というような印象は持たずに済んだ次第。あまり観光客がワサワサしない状況で、ノンビリと見物して廻れたわけです。この寺院はやはりレリーフありき、ですかね。










こんなふうに回廊をすかーっと見渡せるなんて、滅多にない事なんですと

観光客は、欧州や北米からの人が多かったと思いますが、中でも、かなりドイツ人が多かった気がしますね。ドイツ人は旅行好きで、世界中あちこち気軽にホイホイ旅行に行くんだそうですが、本当にどこでも見かけました。家族やカップルで軽装でひょいひょいと歩き回ってましたね。
それにしても欧州からなんて遠いだろうのによく来るねぇ、と思いつつ、ハタと気づいたんですが、パリから日本に来るのは12時間ぐらいかかるわけだけど、東南アジアというのは極東よりも西にあるわけなので、考えたら日本と欧州間ほどには遠くないんですのよね。欧州からカンボジアまでは8時間ぐらいで来るのかしら。国にもよるだろうけど、いずれにしても7~9時間程度で着くのかもしれませんわね。だから本当に欧米の人は多かったです。みんな熱心に歩きまわり、写真を撮ってましたね。



ワタシは一応、第3回廊まで登ってみました。上の方に行けば行くほど神秘性も増したように感じましたね。第3回廊に登る前に、帽子を被っていたら脱がなくてはなりませぬ。不敬にあたるとのことで、急いで帽子を脱いでバッグにねじ込み、急な階段を昇りました。一渡り見て階段のところに戻ってくると、若いお坊さんが二人、第3回廊の窓からデジカメで外の景色を写してました。その姿を背後から欧米の観光客が珍しがって撮っていて、ワタシはそのまた後ろから写真を撮らせてもらいました。ふほ。



そんなわけで、見物客の少ない時間帯にサクッと見て廻ったという感じのアンコール・ワット。まぁ、いろいろな意味でイメージ通りだったな、という印象でしたね。とにもかくにも、適度な見物客数だったので、観光客にまみれずに見物できたのはラッキーだったと思います。



次に、シェムリアップ3度目という友が、ここは絶対に観ておくべき!ということで行ったのは、アンコール・トム遺跡の中のバイヨン寺院。確かにここはインパクト大でした。来た来た来たー!という感じ。



どうしてこんなに大きな仏の顔を塔の四面に彫ったのか…。そしてその仏の表情が実に魅力的。静かで穏やかで、全てを見抜いているような、その上で何もかも赦してくれそうな、けれど伺い知れない謎を含んだその微笑…。



青空の下、時代のついた石の仏塔に刻まれた、それぞれに微妙に造作の異なる仏の表情を興味深く眺めつつ、しばし不思議な気分に浸されました。からりと晴れた空と朽ちかけたような石の対比がえもいわれないハーモニー。ワタシ的には、アンコールの遺跡のハイライトはバイヨンだな、という感じ。これは一見の価値あり。真打ち登場、という気分でしたねぇ。









逆に言うと、バイヨンを訪れて、ワタシがアンコール遺跡に漠然と求めていたものが満たされたので、他の遺跡はもうあまり見なくてもいいや、という気分になってしまったのも事実。
「バンテアイ・スレイ」で東洋のモナリザを見物するのも悪くないかな、と思ったのだけど、友がそこは期待して行くと、けっこうガックリポイントだ、と言うので、じゃまぁ、見なくていいかという感じに。あとは翌日、タ・プロムの遺跡を見て、ついでにどこか廻れそうなところに廻るという感じにしようかねぇ、という事で遺跡見物プランはざっくりと立ったわけです。なんて大雑把なのよ、ワタクシら。

アンコール3度目の友と、世界遺産にあまり血の騒がないワタシゆえ、ご来光を見に早起きしてアンコール・ワットに行ったり、夕陽をプノン・バケンの遺跡ごしに眺めに行くというのはスルー。これらは全て友が過去に経験済みで、ご来光はともかくも、夕陽は、確かに沈んで行くのを眺めるのは壮麗でいいのだけど、日が落ちるとあたりがあまりにも真っ暗になってしまって、戻ってくるのがけっこう大変だ、という事なんざますわね。それでなくてもワタシ達は、早起きしたら朝日を拝むよりも、ホテルの中庭の優雅なプールで、とにもかくにも貸し切り状態で泳ぎたい!という思いの方がずっと強かったので、早起きはしたものの遺跡には向わずに水着に着替えてプールへGO!という感じだったんですのよね。ふほほ。

その日はアンコール・ワットと、特にバイヨンを見物したことで非常に満足し、夕方4時ごろにはバイヨンからオールドマーケットに貸し切りのトゥクトゥクで移動。そこでトゥクトゥク君に料金を払ってリリースし、周辺でちょっと買い物をして、カフェで一息入れてから、予約してあったSPAに行きましたのよ。SPAは当初、宿泊したホテルのものか、すぐ近くのビクトリア・アンコール・ホテルのSPAにしようか、と考えてましたが、一流ホテルのSPAは施術料以外に、なんだかんだと税金やサービス料がのっかって、けっこういいお値段になるんですね。日本で受けるよりもちょっと安いけれども、けっこういい値段になるのでお値打ち感がないね、という事で、街で評判がいいというSPAに行く事にしましたざます。

というわけで、ちと長くなったので、この続きはまた次回。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する