目的地としてのホテルを巡る旅 シェムリアップおよびハノイ その4

-ハノイ再訪とソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ-



旅行記の続きで、いよいよハノイ編でございます。
後ろ髪を引かれつつもシェムリアップ国際空港から、夕方の便でハノイへ移動したワタクシら。ハノイとシェムリアップの間というのは1時間半程度のフライトなんですが、シェムリアップに来る時にも飛行機が遅れたし、この日、ハノイに戻る便も遅れ気味で、どうも、凄く近い割りにはささっと物事が進まない移動でした。飛行機が飛び立ってしまえば早いのだけどね。

それと僅か1時間半の間に、急に上がって、また急に下がるという事になるため、気圧の変化が激しかったのか、耳の中の気圧が変になっちゃってなかなか元に戻らなくて往生しました。咽喉を痛めて体調が悪かったせいもあるのだけど、友も飛行機を降りても耳がいつまでも変だと言っていたので、そういう人は多かったかも。水の中に潜っているようなくぐもった音しか聞こえて来ない状態の耳のまま、荷物をピックアップして到着ロビーに出ると、現地代理店の人が迎えに来てくれておりました。

4年前にハノイを訪れた時は7月初旬で、連日34~35℃ぐらいな暑さの中を歩きまわった記憶が鮮明に残ってますが、今回は、夜着いたせいもあるし、晩秋のこととてひんやりと涼しいハノイでした。現地代理店の人によれば、「もう冬の初めですね」とのことで、11月後半のハノイは日本の10月初旬ぐらいな気温かな、という感じ。

空港から一路、ハノイ市内に向けて走り出したのだけど、4年前と較べて道路の整備が進んだなぁ、と思いました。空港の建物自体はこれから改装するとかでかなり地味で事務的だけど、空港から市内への道は、殊に高速など殆ど東京並みに綺麗でしたね。驚いた。
その高速を降り、一般道に入ってからも慎重な運転で走っていたワタシたちを乗せたワゴンなのに、突如鼠取りをやっていたパトカーに止められました。ドライバーは「???」という感じで降りていって警官と話をしてましたが、戻ってきて代理店の人に事情を話したところによれば、車線変更するときにウインカーを出さなかった、というので止められて罰金を払えと言われているとか。ドライバーはウインカーを出したと言っているのだけど、警官はガンとして譲らないということのようで、罰金がかなり高いのか、いいがかりをつけられて癪なのか、ドライバーは負けじと食い下がってましたが、結局のところはダメで罰金を払ってスゴスゴと戻ってきました。
ドライバーの気持ちも分るけれども、ワタシは咽喉が痛い上に耳もプカプカして変なので、一刻も早くホテルに入って寝たいという感じ。タチの悪い警官に捕まって気の毒だけど、粘ったって形勢は不利だから早く払って出発してちょうだいな、というのが正直なところでした。

飛行機がやや遅れた上に、途中に予期せぬアクシデントもあったりで、ソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイに着いたのは、予定よりもかなり遅れて、22時半を過ぎてのことでした。でも、忘れもしない、あの白亜の優美な外観は4年前と些かも変わってませんでした。白い制服のドアガールがドアを開けてくれ、ワタシたちはチェックインカウンター前のソファに座って一息つきました。僅か1時間半のフライトだというのに、ハノイまでの道のりが妙に長く感じられ、ワタシはもう、グッタリとしてソファに凭れていたのですが、ここでまたワタクシらは、日本人スタッフのご挨拶を受けましたのよ。アオザイの制服が似合う若い日本人女性のスタッフがメトロポールに居てくれたざますわ。そこで、チェックイン手続きが済むと、ワタシはこの女性に厚かましいとは思いつつ、葛根湯をお持ちだったら2包ばかり分けてはいただけませんか?とお願いしてみました。
彼女は、前に日本人のお客様から「余ったからどうぞ」と戴いたものがありますが、期限などが大丈夫かどうかわかりませんがお持ちしましょうか、と言って、葛根湯を分けてくれました。着くなり妙な要求をして申し訳ありませぬでしたが、ありがとう。大変に助かりました。


この素敵なチェックイン・カウンター 何もかもハイセンスなメトロポール・ハノイ

さて。
憧れのメトロポール・ハノイの旧館。Grand Luxury Room Historical Wingという部屋タイプであるワタシ達の部屋は、あまり広くはないけれども、ベッドサイドの照明が素敵な、シックな内装で、「クラシックホテル憧憬」でロケに使われたのと同じタイプの部屋です。ラッフルズ・グランドホテル・ダンコールの場合は特に部屋指定はしなかったのだけど、メトロポール・ハノイについては旅行を申しこんだ時に、代理店の方に旧館指定で予約をお願いしました。何も言わなければ新館の部屋になるだろうと思われたので、何がどうでも旧館に泊まらなくては意味がないと思っているワタクシらは割り増し料金を払って旧館に宿泊した次第。


狭いけれども、ムードのある廊下

今回、ハノイの滞在は1日半ぐらいでメトロポールにも一泊しかしなかったのですが、ワタシも友もハノイは二度目で、過去にハロン湾も見物しているし、今回のハノイ再訪はメトロポールへの宿泊と買い物が目的だったので、1泊ぐらいでいいだろうね、という事になったわけです。…もう1日ぐらい延長しても良かったかもしれないと、あとで思ったけれども。


ホテルのオリジナルのマカロンが小さなテーブルの上で迎えてくれた


ベッドサイドの特徴的な照明がえもいわれない

とにかく憧れの部屋に泊まったんだから、咽喉が痛くてクタクタでも、あちこち撮影しましたよ。シャワールームもガラス張りでオシャレでした。アメニティのシャンプー、コンディショナー、シャワージェルはランバン。こちらはアンコールのラッフルズと較べると水廻りはバッチリで、お湯も水も非常に安定してました。4年前は停電なんていうのもハノイ滞在中に一度あったのだけど、もはや停電もなさそうです。4年の間にインフラ系が格段に充実したなという印象を受けましたね。


鏡がいっぱいの洗面台

ガラス張りのシャワールーム バスタブは狭くて小さめ

アメニティもスッキリとしてハイセンス 綿棒やコットンに混ざってソーイングセットも用意されていた

ただ、バスタブと便座はラッフルズに軍配。ラッフルズのバスタブは広くて、長々と体を横たえてたっぷりとお湯に浸かることができましたが、メトロポール旧館のバスタブは狭くて小さいんですよ。よくある日本の1R賃貸のユニットバスのバスタブと同じぐらいな狭さ、小ささじゃないかと推測。また、便座もひんやりと冷たいメトロポールに較べて、ラッフルズのは木製なので温かく、座り心地が良かったです。


トイレの木製の蓋と便座、そして大きなバスタブ(ラッフルズ・グランドホテル・ダンコール)

メトロポール旧館も部屋の内装はところどころウッディなテイストなんだから、便座も木製にすればいいのに。ワタシはメトロポールの冷たい便座に紙を敷いて座りつつ、それにつけても日本のトイレは世界一デリケートでインテリジェントだな、とつくづく実感した次第。日本人ほど、トイレの居心地、使い心地の良さにこだわる民族は居ないでしょうね。だから日本のトイレ技術とデザインは世界最高峰、最先端ですわね。マドンナが、日本の温かい便座が懐かしい!と思わず叫んだというのも納得。日本のトイレって本当に素晴らしいのよねぇ、と時ならず故国のトイレに思いを馳せつつも、何はともあれ、ワタシは洗顔して歯を磨くと、友が風呂に入っている間に、先ほど貰った葛根湯を飲んでベッドに潜り込み、瞬く間に爆睡しました。


翌日の朝 ハノイは曇りで涼しかった

翌日はゆっくりと目覚めました。クタクタだった昨夜とは事変わり、大分体が軽やかになって気持ちよく目覚めたワタクシ。用心のためにベッドサイドのテーブルに濡れタオルをかけておいたのだけど、朝になってもタオルはしめったままでした。ハノイは乾燥とは無縁なのだね。部屋は表通りに面していたので窓を開けて外の空気を…と思ったけれども、窓は開かないようにボルトで止められてありました。なんでだろうな。
部屋にはサービスのミネラルウォーターがシックなカバーをまとって置かれてあり、ワタシは起きぬけに美味しい水をごくごくと飲みました。

昨夜、風呂にも入らず寝たので髪を洗いたくて、バスルームを十分に温めてから風呂に入りました。狭いバスタブでたっぷりと浸かるというわけにはいかなかったけれども、体と髪を洗って気分スッキリ。支度をすませて友と部屋を出ると、エレベーターで一挙に降りては勿体ないので、見物+撮影がてら、吹きぬけ周辺を階段を降りながらぷらぷらと歩きました。


吹き抜けのまわりの回廊はアート空間になっている


フロアごとに絵画がかかっていたり、タペストリがかかっていたり、趣が異なる


天井からロビーまで続く吹き抜け 天辺からシャンデリアが下がっている


20数年前に大改装をした旧館だが、この階段は創業当時からのものだそうな

メトロポール・ハノイ旧館の内装はシックかつハイセンス。あちらこちらに絵画がかかっているのだけど、この絵なども非常にモダンで色使いやタッチの面白い、けれどホテルの空間によく合う絵でした。シックでモダンでハイセンス、それがソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイのエッセンスなんですわね。生花のアレンジメントもあちこちにあるのだけど、どれも建物の中のその空間によく馴染んでいて、しかも確実にその場の雰囲気を盛り上げておりました。このホテルの内装担当はなみならぬセンスの持ち主ですわね。


回廊のアート空間

階段の踊り場の連作絵画

1階靴磨きコーナー横にもアートが

生花と絵画がしっくりと馴染む空間


…と部屋から1階までの楽しい散歩を終えて、いざ朝食。
1階のレストラン「ル・ボリュー」にて、ビュッフェ・スタイルの朝食を楽しみました。
ここにも勿論、フォーのコーナーがあり、牛肉か鶏肉かを選んでその場で作ってもらいます。フォーは一流レストランで食べても、町の屋台みたいな店で食べても美味しい事は分かっているので、久々の本場のフォーだ!と顔もニコニコ。早速味わってみました。確かに美味しい。でも、飛び抜けて、格別に美味しいという感じではなかったんですね。なんというか、スープが些かぬるいんですね。もっとアツアツの方が美味しいと思うのよね、この季節は特に。ワタクシらは、ラッフルズ・グランドホテル・ダンコールの朝食のヌードルスープを即座に思い出し、汁麺はラッフルズに軍配を上げました。カンボジアの方がベトナムより汁麺が美味しかったなんて予想外の事だけれども、どこで食べても美味しいわけではなく、ラッフルズ・グランドホテル・ダンコールのあの麺が、格別に美味しかったという事なんだろうと思いますが、いまさらにあそこのスープは絶品だったねぇ、と友と二人で遠い目に…。


残念ながらスープがぬるめだったメトロポール・ハノイの朝食のフォー

汁麺以外は、大体、いい勝負だったかな。ベトナムは中国文化の影響が強いせいもあり、飲茶が充実してました。また、デニッシュ類が殊更に美味しかったです。クロワッサンとかね。
メトロポールでは日本人客も多いのか、味噌汁などもありましたが、どこへ行っても、例えば極東や東南アジアのホテルのビュッフェの朝食にスープの1つとして味噌汁があったりすることはよくあるけれど、これは美味しかったためしがない。どんなに食事が自慢のホテルでも美味しい味噌汁と、美味しい醤油を出すことはできない気がします。それは本場の日本で美味しい味噌汁と美味しい醤油を味わったことのない人が準備をして出しているからだろうと思うのだけど、醤油は大抵、古くなって味が変わってしまってるし、味噌汁はインスタント味噌汁のような安い味がするだけ。メトロポールの味噌汁は飲んでみなかったけれど、おそらく例外ではないだろうな、という気がしました。飲んでみたら、素晴らしい!と思ったのかもしれないけれど、分りません。


飲茶が充実していた

シリアル用のミルクが四種類あった ミルクの容器がとってもステキング

静かなレストランの朝

欧米人の客が多い中、ワタシたちともう一組、極東からの客がいました。3人組の品のよいマダムたちだったけれど、一目で同胞と分りました。案の定、料理を取りに彼女たちのテーブルの近くを通った時、「まぁ、このパン、とっても美味しい」「ほんとね」という日本語の会話が聞こえてきました。子供も独立して悠々自適という感じのマダム達は学校の同窓生とかかしらん。ふふふ。ともあれ、日本人は物静かで品が良い人が多いな、と改めて思いましたね。それは絶対に韓国人ではないし、中国人でもない。会話を聞かなくても雰囲気や服装で分る。ガサガサしていないから。

このレストランの外側は舗道に面していて、「ラ・テラス」というカフェバーになっております。ここは文字通りオープンエアーのテラスのテーブルで行き交う人や通りを眺めつつ、飲食を楽しめるわけですわね。もう1泊していたら、次の日の朝食はこのラ・テラスで摂ってみたかも、だけれども、まぁ、いいか。


「ラ・テラス・ドゥ・メトロポール」

ホテルでゆったりと朝食を摂り、一休みしてから、さて、町に出て、ベトナム雑貨を買わなくちゃね、という事で歩きはじめたワタクシら。
ホテルの「テラス」に沿って歩いていると、通りのそこかしこで、結婚式を控えた(あるいは終えた?)男女が記念撮影をしておりました。これは「クラシックホテル憧憬」でも紹介されていたけど、メトロポール・ハノイが新婚カップルに人気の記念撮影スポットであるというのは、不動のステータスみたいですわね。この記念撮影、被写体の新婚さんよりカメラマンが熱いんざますわ。絶え間なくポーズの注文をつけつつ、助手を従えて、めまぐるしく舗道をあっちに動き、こっちに動きしながらカップルを激写するんですわね。それを何m置きかであちこちで何組もやっているので、なかなかのミモノでした。ベトナムではカメラ目線で写真を撮らないようざます。ウットリと見つめ合わせたり、斜めに目を伏せた奥さんを、ダンナさんが慈しむように見守っていたり、というようなポーズをカメラマンがこうるさく注文をつけて取らせ、激写する、という感じ。そんなところで人目も構わずウェディングドレスとタキシードで堂々とポーズをとって写真に収まるからにはルックスに自信のあるカップルが多いのか、いい感じのカップルが多かったですね。殊に、一番最初に目に入ってきたカップルの奥さんの方がなかなかの美人で、ウットリポーズがサマになっていて目の保養になりました。ふほほ。


ウットリポーズが決まっている美人の花嫁さん(すみませんが便乗で撮影させてもらっちゃいました)


あっちこっちでウットリ撮影大会開催中

メトロポール・ハノイはホアン・キエム湖に近いし、大教会まで歩いて15分ほど。そして大教会周辺はハノイのお買い物スポットである事は記憶に新しいワタクシ。歩き始めると、フランス統治時代のコロニアルな建物が町並みを形成していて、やはりフォトジェニックなハノイ。シェムリアップでは殆ど街の写真を撮る気にならなかったのだけど、ハノイに来るとやはり街の写真を撮りたくなってしまいますわね。というか、気づいたら写真を撮っているという感じ。


やっぱり撮りたくなっちゃうハノイの街並み


前は旧市街の中にあるホテルに泊まったので、旧市街を出るまで舗道がとても狭い、或いは舗道として機能していない、という印象だったのだけど、今回は旧市街ではないので舗道も広いし、そして目抜き通りの広い道には、随分信号が増えたな、という気がしました。信号が増えたのと比例してるんだろうけれど、4年前はとにかく道を走っているのは9割バイクだったのに、今回は車が増えたなぁという印象。勿論バイクは相変わらず多いのだけど、車もかなり増えてきたな、と思います。



以前は車といえば、タクシー以外にはビジネス用の車しか走っていなかったと思うけれど、自家用車を持つ人が増えたように感じました。ベトナムは確実に豊かになってきてますね。そういえば、今回は旧市街も久々に歩いてみましたが、以前はあんなに見かけた、あのベトナム傘を被り、天秤棒を担いで花や果物などを売り歩いていた物売りの姿がかなり減っていた、というのも印象的でした。この分ではもう、地方の農地でも痩せた水牛が田んぼで働いていたりしないかもしれないな、と思いました。アヒルや水牛を使って農業をしているうちにベトナムを再訪しなければ、と思ったのだけれど、あっという間に変わってきてるんだな、と些かの感慨を禁じえないワタクシ。
前回、ハロン湾に車で向う道中にはところどころ未舗装道路があったんですが、それも昨今ではもう無くなっているかもしれませんわね。戦後、貧しかった日本が昭和30年代後半から40年代にかけてメキメキ高度成長し、激変していったのを見て欧米の人はさぞ驚いたのだろうけれど、ワタシも僅かながらそういうたぐいの感慨を、変わりゆくハノイの様子に感じました。

というわけで、またも長くなったので続きは次回。

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