BBCからの粋なクリスマス・プレゼント

“Many Happy Returns”



BBCは放映が間近に迫った「Sherlock」Series3の盛り上げかたがた、ファンへのクリスマス・プレゼントとして7分のショート・クリップをイヴにリリースした模様。
このショート・クリップはSeries3のプリクエル(前日譚)ともいうべきもので、シャーロックが死を偽装して人々の前から姿を消してのち、再び戻ってくる前の、おなじみの人々の様子を描いたもの。互いに嫌いで何かとシャーロックとぶつかっていたアンダーソンが髭づらで登場しているのもご愛嬌。

すでにご覧になった方も多いかもしれませんが、まずはクリップをどうぞ。

まずは、髭づらのアンダーソンが、パブの片隅でレストラードにシャーロック生存の可能性を示唆する、というのが、なかなか味な構成。チベットかどこかの僧院で、修行僧に混じっていた逃亡中の麻薬密売人の女の正体を暴いた人物がいたという事や、ニュー・デリーで事件解決に協力した謎の人物がいたという事を列挙し、これがシャーロック以外の、一体誰の仕業だと思うんです?と強い確信を持って意気込むアンダーソンだが、レストラードは取り合わない。



バカな。彼は死んでしまったんだ。もう居ないんだぞ、とありきたりな事を言ってサッパリ取り合わないレストラードだが、アンダーソンは更に、ハンブルグに現れた謎の陪審員の存在を挙げる。ある事件の裁判で、他の陪審員が全て無罪だと判断したのに、ただ1人有罪を主張し、判決を覆らせた謎の陪審員がいたことを。



彼は身を隠しているくせに、結局はどこに居ても犯罪の解決に関わらずにいられないんだ、ははは、と興奮するアンダーソンだが、レストラードはそんな部下を気の毒そうにみつめるだけである。だが、アンダーソンは確信している。南アジアからインド、そしてドイツを経て「彼」が段々、近づいてきていると。戻ってきつつあるのだ、と。
あんなに顔をつき合わせればいがみ合っていた二人なのに、アンダーソンにはシャーロックの不在がかなり堪えていたのだろう。そして、あいつが死ぬわけないじゃないか。きっとどこかで生きているんだ、と世界中の事件やニュースをチェックしてきたのに違いない。
犬猿の仲だったアンダーソンが、唯一、強くシャーロックの生存、生還を信じているなんて、うまい設定ですね。モファット&ゲイティス、いつもながら鮮やかなお手並みなり。

アンダーソンとパブで別れたレストラードは、今は221Bを出て別なところに住んでいるらしいワトソンを訪ねる。
「その後、どうだい?」
「うん、まぁね…少しはマシになったかな」



ワトソンは明らかにシャーロックの死の衝撃が薄れていず、その表情にはいまだに憔悴と疲労の色が漂っている。そして、ぬぐえない深い喪失感…。レストラードは、彼のオフィスで預かっていたシャーロックの物(靴の箱に入っている)をワトソンのもとへ持ってきたのだった。その中に、ワトソンにあてたシャーロックのビデオ・レターが混ざっていたから(箱の中にはシャーロックのデスマスクらしきものも入っている)。
それは、かつてワトソンの誕生日パーティのディナーに多忙で出席できずにビデオ・レターを用意した時の、ボツにした方の映像(多分、そんな感じの事をレストラードが言っているんだと思う)がDVDに納められていたものだった。「すごく面白いから、見てみろよ」とDVDをワトソンに手渡すレストラード。



1人になってから、酒を用意して気持ちを整え、ビデオに向き合うワトソン。マーティン・フリーマンの表情が、せつせつとワトソンの感情を伝えてくる。



画面の中では、シャーロックがいつものように、せわしなく早口であれこれとしゃべっている。ビデオの撮影に付き合っているのは兄のマイクロフトらしい。何を言えばいいんだ、こういう時は笑ったりウインクしたりするもんなのか、などとカメラの背後の兄にしゃべっていたシャーロックだが、やがてカメラ目線でワトソンに語りかけ始める。
「やあ、ジョン。やたら忙しいもんで、そこに行けなくてすまない。ともあれ、誕生日おめでとう。でも、心配するな。僕はごく近いうちに戻る」


“However, many happy returns”

誰も信じなくても、シャーロックの帰還が間近い事を1人強く確信するアンダーソン。
死人が帰ってくる事などありえまい、としか思えないレストラード。
1人、喪失感を抱きつつ追憶に沈むワトソン。
さまざまな人々の思いの中、再びゲームが始まる。

 “The Game is back on”

シャーロックのウインクで幕切れとは、粋なような、意外なような感じだけれども、さすがBBC。本放送が間近に迫って、さらにサービス精神旺盛ですね。

この7分のミニ・エピソードを観たファンは、もちろん大喜びの人が大半だけれども、中にはtoo muchだという感想の人もいる様子。確かにちょっと饒舌かな、と思わないでもないかな。些か調子に乗っちゃってるとでも言おうか…。でも、世界中で盛り上がっている期待感に、ちょうど時期的にクリスマスも挟まる事だし応えなくちゃいかんよね、と思ったんでしょうね。そういうモファット&ゲイティスの気持ちも良く分りますわね。その心意気が嬉しいざますわね。



そして、このミニ・エピソードを観て感じたのは、これだけ衝撃の癒えなかったワトソン君だもの。実際に意気揚々と生きて戻ったシャーロックを目の当たりにしても、嬉しいとか、驚くとかよりも、激しい怒りが先にたつのも無理もないよね、ということ。シャーロックにしてみれば、ハドソンさんやレストラード、そして誰よりワトソン君の命を救うためには、他に方法はなかったのだから、苦渋の決断だったのだけど、それを分かって貰うにはちょっと時間がかかるのかも、ですわね。結局のところ、もちろんのこと二人のコンビは復活するんだろうけれども、それまでの紆余曲折を楽しめるのがSeries3なんでしょね。あまつさえワトソン君には本命の彼女も出来るし、その彼女がまた、シャーロックのペースに乗せられないばかりか、時に彼をやりこめたりもするツワモノなんざますわね。そしてSeries3では新たな強敵も出現してシャーロックを苦しめるわけで、実に幾重にも期待してしまう新シリーズでございます。



それにしても、シャーロックはこの空白の2年の間に南アジアまで来ていたのか。だとすれば、中国を経てちらっと日本にも来ていたかもしれぬわねぇ、ふほほ、なーんて、あれやこれやと想像して楽しむのも、楽しみのうち。 いやはや。いろいろな楽しみ方を提供してくれるドラマです。

 

コメント

  • 2013/12/30 (Mon) 02:40

    初めまして。
    sherlockで検索してこちらにたどり着き、ずいぶん長く読ませてもらっていますが
    コメントは初めてです。
    いつも楽しい記事ありがとうございます。

    いよいよシリーズ3が放送されるんですね!
    DVDはすぐ発売されるようですが、日本語しかできない私が楽しめるのはいつのことやら…。
    でもやっぱりワクワクします。
    正典(『ホームズの生還』)をさきごろ読み直し、失踪中はインドにいたとあったので、Many Happy Returnsにインドが出てきてニヤニヤしました。

    sherlockも、それ以外の海外ドラマ記事も、楽しみにしてます。
    それではよいお年を。

  • 2013/12/30 (Mon) 04:24

    粋ですね
    BBC
    もう、「映画」公開の近日スケールです!
    登場人物になぞらえて、ファンも待って、待っていた2年間です。
    そう、容易く 姿消していたシャーロック、許せない(笑)

    ドクター・・・・クリックした先で見ましたが、あれが新シリーズですか?

    アンダーソンもいいですが、ピンクのカウンターの女性が気になりました。
    モリーかな?と思ってしまった。何はともあれ、確かに近ずいている・・・嬉々です。

    • ジェード・ランジェイ #-
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  • 2013/12/30 (Mon) 08:31

    くらしなさん 初めまして。
    コメント・デビューなんですね。記事を楽しんでいただいて何よりです。

    そうなんですよ。ほんとにもう、UKでの放映までカウントダウンが始まった、という感じですね。DVDは既に予約しましたが、それが届くのは3話目のUKでの放映が終わったあと、さらに1週間先の1月の終わりか2月の初めぐらいだろうと思うので、それまでヤキモキしつつ待つのが長いというか、何と言うかね。まぁそれも楽しみのうちでしょうね。きっと、あっという間にひと月たってしまうんでしょう。
    原作読まれたんですね。失踪中は、マイクロフトに資金を送ってもらいつつ、シャーロックは長旅に出てるんですよね。そういえば、BSプレミアムで放映しているグラナダ版のホームズの冒険もこの前「最後の事件」を放映してました。新年5日には「空き家の怪事件」が放映されるそうで、あっちこっちシンクロしてますね。ふほほ。

    海外ドラマは面白いものが多いので、あれやこれやの新シーズンがとても楽しみですね。
    くらしなさんも、よいお年を。

  • 2013/12/30 (Mon) 08:35

    ジェード・ランジェイさん

    粋ですよね。ニコニコしながらウインクするシャーロックなんて、ちと別人?と思ってしまうぐらいだけど(笑)
    映画の長めの予告編みたいでもありますね。本当に、物語の中で2年の歳月が流れただけでなく、正味2年間しっかりと空いたわけですからね。2年は長いのか、短いのか。微妙な歳月ではありますね。ふふふ。

    ドクター・フーとのコラボもありましたね。ワタシ、ドクター・フーはあまり興味ないので、ふぅん、て感じだったんですが。

    カウンターの女性、ずっと座っているので、ちょっと気にはなりましたが、あれはモリーじゃないですね。もっとおばちゃんだし、太目だしね。でも、ただ座っているんじゃなくて、何かしら物語に絡んできそうな気配ではありましたね。

  • 2014/01/04 (Sat) 09:54

    kikiさん明けましておめでとうございます。
    シャーロックからの思いがけないお年玉をうれしく拝見いたしました。
    これもkikiさんのブログにおかげです!
    今年もよろしくお願いいたします。

    UKではもう第1話は放送されているのですね。
    早く観たいですが、こちらで放送されるのはいつのことやら・・・。


  • 2014/01/04 (Sat) 12:04

    akoさん
    今年もよろしくお願い致します。

    新年の1日に第1話放送だから、その前のクリスマスにビデオレターっぽいショート・ムービーを繰り出すなんて、BBCもやりますよね。1月1日に1話目が放映されて大層もない視聴率だったようですが、1週間もたたぬ5日に第2話が放映されるようです。トントン行きますね。ワタシはひとまずUK版のDVDを予約したので、1月末に届いたら、即行観て記事を書きますわ。日本での放映は…かなり早くても3ヶ月は先でしょうね、何となく。吹替え版を作らなければもっと早くオンエアできるんじゃないかと思うんだけど(笑)

  • 2014/01/05 (Sun) 11:15

    初めまして、KIKIさん。シーズン3、凄く楽しみですね。
    モリーが出ていなくて大変残念でしたが、予告編もわくわくして面白かったです。やり過ぎという意見があったとのことですが、海外の掲示板を見られたのですか? 私はスマートな予告だと感じましたけど、そういう批判的な印象を持つのはコアなファンという気がしますね(笑)。

    シャーロックは演出も何もかもスマートで洗練されていると思います。ホームズというジャンルに対する哲学が背景にあるというか。私はエレメンタリーも見て、この米国版ホームズも楽しめたのですが、やはり全体的に俗っぽいというか、シャーロックが持つような『ホームズとはこうあるべき』という思想を感じないというか。うーん、漠然とした印象ですね(失礼)。KIKIさんはエレメンタリーはご覧になりましたか?

  • 2014/01/05 (Sun) 18:54

    Guratanさん 初めまして。
    Series3、2年待たされましたからねぇ。期待感が充満しちゃいますよね(笑)
    このショート・ムービー、よく出来てましたよね。このムービーは、海外のニュース記事で知ったんですが、too much という感想も、その記事の中に、アメリカ人のファンの声として出ていました。主旨は、こんなものを見せられると、早くEP1全編が見たくてヤキモキしてしまう。UKでは1日に放映だからいいけど、USでは19日に放映だから、それまで間がありすぎて爆発しちゃう、というような主旨でした。ワタシがちょっとはしょって紹介しちゃったので、誤解を招くかもしれませんわね。ふほほ。
    ワタシは「エレメンタリー」観てないんですわ。どうも、観ようという気がおきなくて…(笑)シャーロック・ホームズについては、あまりケレンミを狙うよりも、ここは外せない、というラインをきっちりと押えてあるものの方が、見ていて腑に落ちるという気がしますよね。

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