いかになりゆく映画館



ここ数年、映画館に行く回数が減ってきている。そもそもワタシは、ブログを始めていなかったら、3ヶ月に一度か、半年に一度ぐらいしか映画館で映画を見ないタイプ。映画館で観る事にこだわりなど持っていないし、どうしても観たい新作とか、非常に珍しい旧作の上映とかでなければ、基本的には映画館に行かない。それでも2008~2010年あたりは、けっこう頻繁に映画館で映画を観たのだけど(1週間に2本観に行った時もあった)、最近では観たい新作そのものが減ってきて、数年前までと較べると映画館に行く回数はかなり減った。映画館であまり映画を観ないのはワタシだけではなく、世間一般的な兆候らしい。昨今では自宅のTVでもそこそこの大画面で映画が観られるから、どうしてもDVDになるまで待てない新作でもない限りは、わざわざ映画館まで行かないという人が多いようだ。映画館の方が良いのは音響だけ、と言う人も多い。時代の流れである。まるきり無くなってしまっても淋しいとは思うけれど、映画館で映画を観るのはちょっと面倒くさいのも事実だ。
何しろ映画館というのは、割にストレスがある。まず、昨今はあらかじめ席を予約して行く事が多いわけだけど、隣や近くに微妙な人(性懲りもなくスマホの画面を暗闇で光らせる人とか、レディスデーなのに紛れ込んでくるお一人サマの男たちとか、おしゃべりな3人組の女性とか…)に座られてゲンナリしたり、9割がたどうでもいい予告編をダラダラと流されて本編が始まるまで長らく待たされたり、主張は分るがそろそろCFをチェンジしてほしい「No more 映画泥棒!」のビデオカメラのシャビーなダンスにウンザリしたりなど、いろいろと我慢しなければならない事が多い。
そして、そんなあれこれを我慢して観た映画がさして面白くなかったりした日には、ワタシの時間とお金を返してちょうだいな、な気分になってしまったりもする。よく言われている事だけど、日本の映画料金はやはり割高だ。4月から消費税が上がって、TOHOシネマズではサービスデーの料金に反映されるらしい。やれやれである。

映画が長いと座っているのもタイヘンだ。2時間半以上の映画だとお尻が痛くなるのでしょっちゅう座りなおしたりするハメになる。
2Dで全く差し支えないのに、うっかり鳴り物入りの宣伝に載せられて3Dで観てしまい、結果、やっぱり2Dで十分だった時のうぅ~む…という無念な感じも何とも言えない。
映画そのものも面白く、周辺にむむぅ~な感じの客も居なくて集中でき、あぁ久々に映画館で濃密な時間を過ごした、よかった、と思える事もままあるけれども、昨今はかなり稀な事になってきた。

ここ5年ばかりの間で、この場所でこの映画を観られてよかった、ハッピーだった、と思ったのは神保町シアターの佐田啓二特集だっただろうか。100人程で定員のこぢんまりとしたシアターながら、上映される映画や、出演している俳優たちについてちゃんと知識を持っている観客が、本当に好きで観たいから観に来ている、という空間で、自分も好きな俳優の古い映画を、映画館のスクリーンでじっくりと観賞でき、日本映画好きでなければ分らないような味な脇役のちょっとした芝居に、自分もくすくすと受け、周囲もくすくすと受けている、そういう、作品と空間を他の観客と共有できるような観賞体験というのは実に貴重で稀少だ。ああいう親密な空間は映画館でしか味わえないものではあろうけれども、映画館だからといって滅多やたらと味わう事はできない。神保町シアターというのは日本映画についての好事家が集うミニシアターなので、時に、作品と観客と空間が一体になるハッピーな観賞体験ができたりもする。でも、神保町シアターとても、そんな魔法はそうそう起きない。

自宅のTVの大画面化に伴って、おうちシアターで映画を楽しむ人が多くなった。ブルーレイなどの素晴らしい画質で日常、映画を観ていると、映画館の映像はやや劣化して見えるかもしれないし、新作をすぐに見なくてもいい、DVDやBDになってから観ればいい、という人が増えても致し方ない事かもしれない。
時代の流れで、映画は大勢が一箇所に集まって同時に楽しむ娯楽ではなく、自宅で楽しむパーソナルな娯楽になって来ていると思う。映画館に行くしか観賞方法のなかった時代に戻すことはもう出来ない。かといって、映画館が街からどんどん消えていっても物悲しいものがあるし、やはり映画館で映画を観たい時もある。でも、その度合いはかなり低くなっているのだろう。

ワタシの利用しているビデオ・オンデマンド・サービスは、映画によっては配給元と提携して、ミニシアターでの封切りと同時に配信され、劇場でサービスデーに観るのとあまり変わらない料金で、家にいながらにして単館系の新作を観る事ができる時もある。
これは、その映画を封切り予定のシアターが近所にない、という人たちにとって有効な手段だし、一方、配給元にとっても悪い話ではない。観る方も出かけずに観られるんだから文句はない。誰にとっても損はない結構なシステムだ。

街から映画館が減っていくと、新作映画もだんだんにネット配信か、なんらかのビデオ・オンデマンド・サービスで配信されるのが主流になっていくのではないかと思われる。あまり映画館のない地域に住んでいる人たちにとっても便利な事には違いない。

ただ、それはそれで便利ではあるけれど、街の映画館が激減しても淋しいし、消滅したらもっと物悲しいし、たまには映画館で観たいということもある。
なかなか映画館に行かなくなった人々の、でもたまには映画館でも観たいよね、などというような我儘気儘な要求を踏まえて、どこにどの程度どんな映画館を残すか、または作るかなど、戦略を練っていかなくてはならないのかもしれず、劇場チェーンを持っている映画会社もタイヘンだと思う。
でもまぁ、一足飛びにそっちの方向に向うという事はないのかもしれない。今年、TOHOシネマズは新しいシネコンを幾つかオープンする予定らしいし、なんだかんだ言いつつもワタシだって、2ヶ月に1本程度は映画館で新作を観ているものね。ふほ。

コメント

  • 2014/03/18 (Tue) 06:19

    映画館に昔ほど通わなくなった今でも、いざ映画館に行くとなったらなんとなく期待とウキウキ感が胸を踊らせ、持ち込みの茶や(なるべく音や匂いのしない)茶菓子はどうしようか考え、その日一日を(せめて映画を観る数時間と観た後の数時間)約束された気がして幸せになれることが多いです。それは子供時代から今も変わらない気がします。

    さりとて、それは映画次第であって、たまたま「今日は絶対映画を観たい日!」と思いついても、どんなアングルから上映作品リストをチェックしても観たい映画・注目の映画がない場合は「唖々…世も末だなァ。最近の映画界はろくでもない原作に金だけ投資しやがって。役者も下手だし、唖々…この流れね。そういうことね。もういい!不作時代もいいとこだ」なんてボヤいたり致します。

    今も昔もサービス料金やタダ券があろうがなかろうが、一映画一作品の基準は「1,800円」なんですね。
    1.000円鑑賞日だろうが、新橋の安チケット売り場で1,250円のチケットを買おうが、一映画一作品の基準は1,800円というのがわたしの基準です。
    それで観終わった後に「この作品は1,500円の価値だな」とか「1,800の元手を取った。1,250円でチケット買ったから550円儲けた」とか、しょーもない子供みたいな計算で映画を査定するのです。
    最近はまあ、1,800円のチケット代を超える名作には出会ってないなァ。
    kikiさんがおっしゃる3Dバージョンなんて、出す金額考えたらチケット売り場で相当悩みますよ。向こうの戦略にまんまとハマるのも悪くないなと思いつつ、いざ3Dで観た時に「ああー、絶対に3,000円以上の映画上映なんてわたしの中であり得ないのに、基準は1,800円なのに、やっちまっただァ!」となります。

    映画館。
    それは昔一大イベントの社交の場。テレビもラジオもない時代は作品の間にニュースも流れる報道の場でもありました。
    映画館に列が並び、活気に満ち溢れた時代。
    恋人や家族と共に出かけ、時には深夜独りでポツンと席に座り静かな夜を過ごした時代。
    地方の駅周辺にいくつもあった映画館が時代と共に潰れていく時代。代わって、ニューシステムのニュータイプ映画館が話題になったりする時代。

    ま、映画館行くのも、なんの作品を観るかも、昨今のショッピングモールかなんかに設営された映画館で、ポップコーンのガス室みたいな広々とした「箱」でだけは観たくない、どんな名作も駄作になる気がする…と思うこの頃です。
    雰囲気重視です。

  • 2014/03/19 (Wed) 21:16

    sanctuaryさん 
    映画館で映画を観るということを、特別な心踊ることとして位置づけておられるんだな、という事が伝わってきますわ。ワクワクする特別な時間なんですね。上映されている映画次第というところはあるにしても、そうありたいものですよね。
    ワタシなどは、どうも最近、観ることは観たものの「何も書く気がしない」という映画が多くなってきたというのが実感です。そもそも観たいと思う新作映画が少ない中で、さらに選んで観に行っているんだけど、外れ、というものの率が高くなってきた、というかね。

    映画一作品の価値基準を1800円という目安で査定しておられるんですね。そういう人は割にいらっしゃるかもしれませんね。でも確かに1800円を越える価値のある作品なんて、そうそうあるもんじゃないですよね。ワタシは基本的に映画は1000円以上出しては観ない主義なので、ワタシの中では1000円というのが基準値という感じにもなるかもしれません。おぉ、これは1200円ぐらいな映画だった、とか、せいぜい680円だよ、これは、とかね(笑) あれは絶対に3Dで観た方がいい、とか言われて、ごく稀に3Dで観る時も、3Dメガネを持っていけば1900円で観賞できるというシネコンで観るという感じです(3000円なんてトンデモハップン)。でも、3Dで観る意味なんて殆ど無いという感じなんだけど。

    今は、映画館に行くのが、どちらかといえば億劫なワタシですが、子供時代に、親に連れられて行ったり友達同士で行った映画の事はよく覚えてます。誰と行ったのかも、その映画とセットになって記憶に残ってます。それは確かに心踊る思い出になっていますね。

    雰囲気のある映画館というのは年々歳々減っていくんでしょうね。効率第一のシネコンが増えていくんだろうと思います。まぁ、シネコンにはシネコンの良さや便利さもあると思うので、それはそれでOKだとワタシは思いますが、例えば岩波ホールみたいなところは何も変えずに、そのまま残っていって欲しいな、とも思っています。

  • 2014/03/20 (Thu) 00:10

    kikiさん、こんばんは。
    私は週に1回は映画館に行くようにしてますが、主に家の近くのシネコンです。銀座のミニシアターにはさっぱり行かなくなってしまいました・・・(近くのシネコンでは結構ミニシアター系の映画もかけるんですよ)。
    ただ、好きだった映画館が消えていくのは寂しいですね。銀座テアトルシネマがなくなったのは悲しい・・・。

    でも、確かにシネコンはマナーの悪い客が多いし、「しゃべるなら家で観ろ!スマホ観るなら出ていけ!」と、心の中で罵ってます(よほど酷い時は直接注意しますが)。

    3Dは必要ないですよねえ・・・。「アバター」だけだと思いますよ。3Dで良かったのって。この間観た「マイティ・ソー ダークワールド」なんて、3Dだったか?と思うぐらい変化なしでした。あれで300円余計に払うなんて・・・。

  • 2014/03/21 (Fri) 00:51

    mayumiさん
    週に一度は映画館に行くって凄いですね。何も観たいものがない時、というのは無いんですかしら?それだけでも凄いなと思いますよ。
    ワタシも職場の近く、帰途にひとつ、家の近所にひとつ、とシネコンが周辺に3つもあるんですが、ここ2年ほどはそれだけ映画館に囲まれていても、あまり行かなくなっています。観たいと思う新作が減っているせいでしょうね。確かに昨今、シネコンでも、ミニシアター系の映画を上映することはたまにありますけどね。
    銀座テアトルシネマ、なくなりましたね。シネパトスもなくなりましたよね。銀座はシネスイッチとシャンテシネだけが今後も生き残っていけそうだけど…。ワタシもその2つにはよく行きます。
    今後はもう、どんな前評判を聞かされても、金輪際3Dには行きませんわ。根本的にそんなものは映画に必要ないんですよ。2Dで十分なのよね、表現形式としては。前からそう思っていたのに、うかうかと主義をまげてはいけないと、3D甲斐のない「ゼロ・グラビティ」を見た時につくづく思いましたわ。

  • 2014/06/03 (Tue) 15:29

    映画館って意識しないと行きませんね。
    行くと楽しいなあと思ったりもするのですが、上映中にスマホをいじっている人がいて「その光、邪魔!」とかお話してるマダムがいて「お静かに!!」などと思う機会があるとやっぱりおうちでいいかななんて思ってしまうこともあります。

    でも映画館とおうちシネマだと何が違うかと言うと、映画館だとちょっとくらい自分と合わないシーンがあってもお金を払っているので出るという
    選択肢がなく、結果全部観て、エンドロールが流れるとそれなりによかったなと思うのですがDVDだともう止めてしまっておしまいです。
    拷問のシーンとか無理、と思うと止めてしまいました。トランス、どういうお話だったのだろうと思いつつ、我慢がきかないなぁと思います。

    映画館で見られてよかったのは、一番最近だと「コリオレイナス」
    これはならでは、だと思います。

    むかーしですと「親切なクムジャさん」
    DVDになっていても観ようとは思わないのですが、なんとなくレイトショーで観た時のあの余韻もよかったですね。あの時代の韓流もすごかった覚えがあります。

    「グランド・ブダペスト・ホテル」と「シンプル・シモン」
    あとはここで教えていただいた「ブルージャスミン」を観に行きたいな―と思ってます。

  • 2014/06/04 (Wed) 00:50


    砂利さん
    そうですねー。意識しないと行かないし、DVDになるまで時間がかかるので、ちょろっと観たい時とか、レアなのでこの機を逃さず観ておかないと、という場合が大半ですが、時折、予定していなかった映画を気分でぷらっと観に行く事もありますね。
    でも、ワタシは、いわゆる「映画は映画館で見るのが王道!」みたいな「我こそは正統的映画ファン」的な人々の「映画館が好きな自分にウットリ」みたいなありようは、かなり気持ち悪いと思ってしまう方です。どこで観たって映画は映画だ、というのがワタシの考えだし、映画館で観ないと!と思い込んでいる人達の、エンドロールを最後までじっとみじろぎもせずに見るのが正しい鑑賞の仕方だ、みたいな思い込みも何か厭ですねぇ。宗教儀式みたいでこれまた気持ちわるい。

    で、確かに一応お金払って映画館に入ると最後まで一応観ますね。出ちゃった時もあるけど(笑)DVDとかには必殺早送りとか飛ばしという手があって、詰まらないとどんどん飛ばしちゃう。映画館で観てて、たまに、あー、こんなシーンはリモコンで飛ばしたい、と思ったりもしますが…。ふほほ。

    「グランド・ブダペスト・ホテル」はワタシもちょっと気になっていますが、一方でDVDでいいかなぁ、という感じもあったりなかったりです(笑)きっと面白いでしょうけれどね。

  • 2015/04/24 (Fri) 08:23
    映画館で見ることは

    映画館だけでなく見られるのは良いことだと思う。
    しかし、大画面で見るのとテレビの画面で見るのとはだいぶ違うものです。
    スクリプターの白鳥あかねさんによれば、岩井信二の『Love Letter』の時、最初岩井は自分の家の小型編集機で編集し、白鳥さんが「映画館で見ると違うよ」と言い、実際に上映すると彼も駄目と分かり、白鳥さんが付き合って再編集したそうです。

    若い男女のデートの場所としては、映画館は生き残ると思います。
    その意味では、シネコンのようにきれいにすることが重要だと思います。

  • 2015/04/26 (Sun) 15:56

    確かにね。でも、闇雲になんでも映画館のスクリーンで見なければ!という思い込みのようなものは、ワタシにはありません。映画館で見ないと醍醐味が味わえない作品は、なるべく映画館で見たいと思いますけどね。
    映画館はまるきり無くなってしまっても寂しいし、時には映画館で見たいと思う事もあるので、淘汰されつつも残るべき映画館は残っていく、ということになるんだろうと思います。

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