案外こぴっと面白い「花子とアン」

2014年4月〜 NHK



ワタシはこれまで、ほとんど朝の連続テレビ小説というのを見ずに来た。ああいうのは習慣のものなので、たんにワタシにはその習慣が無かっただけだと思うが、世間でどんなに流行っていても「ふぅん」という感じで興味を持つこともなく過ごして来た。が、「にっぽん縦断こころ旅」の2014年の春旅が始まったので、朝、支度をしつつ7時半ごろテレビをつけるようになり、「こころ旅」の前に「花子とアン」が流れるようになった。耳だけで聞きながら朝の支度を続けていると、不思議な愛嬌のある山梨弁のあれこれが、耳に残って尾を引いた。

ワタシは、大河ドラマは最近全く見ないけれども、ここ10年ぐらいの間では「篤姫」を途中から観ていた。「篤姫」の前に観た覚えがあるのは「八代将軍吉宗」だったろうか。その前はポーンと遡って「独眼竜政宗」、それより前に観ていたものとなると「峠の群像」とか「おんな太閤記」「黄金の日々」あたりになるが、そこらへんは子どもの頃に毎週楽しみに観ていた思い出深い大河ドラマである。かように、間歇的ながらも大河ドラマは時折観ていたワタシなのだけど、朝のテレビ小説というのはこれまで殆ど観ていない。やたらに話題になっていたが、「あまちゃん」すら観ていない。クドカンが朝ドラ?という違和感があったせいもあるし、クドカンのドラマなら「マンハッタン・ラブストーリー」が好みだったのだが、同じようなノリで朝ドラをやっているのだろうな、と漠然と推察されたからである。続く「ごちそうさん」も、さっぱり観ていなかった。あの「ゲゲゲの女房」さえも本放送時は観ていず、ファミリー劇場で放映されたのを2年後に観たワタクシ。こんなワタシが、「こころ旅」ついでとはいえ「花子とアン」を毎朝チェックするようになるとは、つゆさら思わなかった。

「花子とアン」の何がワタシを引っ張ったのか、とつらつら思うに、やはりあの、すっとぼけた素朴なユーモアと、なんともいえない山梨弁の面白みであろうか。脚本の中園ミホは「やまとなでしこ」などを書いた人で、ユーモアを交えてテンポよく話を転がしていきつつも、ここという部分ではエモーショナルな見せ場を盛り上げる事も得意な脚本家。「花子とアン」でも手腕を発揮している。

その山梨弁の中で、使用頻度が高くインパクトも大きいのが、「こぴっと」と「テ!」であろう。「こぴっと」というのは、しっかりと意味らしいが、語感からにじみ出る素朴な愛嬌がえもいわれない。「テ!」というのは、「え!?」とか、「ええ〜?」という時に使うのだろうと思うが、登場人物が、「テ!?」と言うたびに、なんだかぷぷぷと笑ってしまう。どうしても笑ってしまう。ひそかにマイブームである。

そういう山梨弁の面白みに加えて、キャスティングもぬかりがない。花子のおっかぁに室井 滋、じいやんに石橋蓮司を持ってくるなど鉄壁のキャスティングである。それから、案外いい味を出しているのがおっとぅの井原剛志。100%百姓気質の舅とは相容れない開明的な気質で花子の未来を切り開く。が、平民新聞とおぼしきアカの新聞と関わりを持つようになったりしているので、このおっとぅは花子の実家、安東家の頭痛の種になるのかもしれない(笑)ともあれ、東京のミッション系女学校の寄宿舎に入った娘と、夜中に塀ごしに「グッド・イブニ〜ング」とハンド・アクション付きで挨拶してから短い逢瀬を楽しむ様子など、ホワホワとして微笑ましい。

花子の学ぶミッションスクールの英語教師に、どんどん鼻から下が曲がって行く観のあるともさかりえ。小意地の悪いハイミスの英語教師によくハマっている。また、優しいようで規則にうるさい寮母に扮しているのが浅田美代子である事に気づいた時は、ちょっと驚いた。庇髪では年齢は隠せない。赤い風船の美代ちゃんも随分年を取っちゃったのねん。

花子(はな)の少女時代を演じていた少女が、くるっとした眼で、山梨弁に見合う愛嬌のある顔の少女だったが、大人になってからを演じる吉高由里子とは全く似ていない。子役の少女とスムーズに顔のイメージがつながるのは宮崎あおいかな、と思ったりもしたが、吉高は明治大正風な装いが似合う顔立ちをしているので、物語の雰囲気に合っているかもしれない。昔は朝ドラのヒロインといえば、新人で、かつ清純派として売り出そうとしている女優限定、という感じだったと思うけれども、「蛇にピアス」の吉高が朝ドラのヒロインでOK!というのは、NHKもそれなりに開明的になってきた、という事の現れかもしれない。その花子の妹役に「小さいおうち」で戦前の女中っ子を見事に体現してみせた黒木 華が扮している。貧しい花子の家では、高等教育など受けられたのは花子のみだったわけなので、1つの花を咲かせるための地下茎にならざるをえなかった他のきょうだい達の犠牲や忍耐や憤りが、この妹のキャラを通して描かれるのだろうと思う。黒木 華ってバッチリのキャスティングだ。鉄壁である。

花子が通うミッション系の女学校は東洋英和らしい。キャストの相関図を見ると、のちに、柳原白蓮とおぼしき女性が花子の友人として登場するので、東洋英和に違いなさそうだ。この柳原白蓮をモデルにしたと思われる女性を演じるのは仲間由紀恵。ふぅん。サイドストーリーとして白蓮事件も盛り込まれて来るわけなのね。ちっと楽しみである。ちなみに、仲間由紀恵は柳原白蓮としては顔立ちが華やかすぎる気がする。白蓮は寂しい顔立ちの華奢で古風な美人である。今の女優だったら誰が適当なのか、ちょっと思いつかない。
白蓮は伯爵令嬢ではあったが、柳原伯爵が芸者に生ませた娘だった。15歳ぐらいで無理に嫁がされて一児を生んだものの、折り合いが悪くて実家の柳原家に出戻った。一度結婚して子どもを産み、離婚して戻ったあとで東洋英和に通い、女学校生活を楽しんだが、そのまま実家で安穏と勉強をして過ごす事は許されず、筑紫の炭坑王の許へ二度目の輿入れをさせられる。白蓮は九州で「筑紫の女王」と呼ばれる存在になるのだが、その後、「事件」ともなった有名な不倫大恋愛で駆け落ちし、世間を騒がせる事になる。


柳原白蓮

というわけで、脇に魅力的な登場人物も出てくるようだし、今だって面白い「花子とアン」は、ますます面白くなりそうだ。また、有名だけれども、タイトルを知っているだけで一度も読んだ事がないため、どんな話なのかサッパリ知らない「赤毛のアン」についても、折々紹介されていくんだろうので、それもうっすらと楽しみではある。

明治、大正から昭和にかけての時代背景も興味深いし、極貧の農家に生まれた少女がひょんな事から東京のミッションスクールの給費生となり、何かと言えば「テ!」を連発しながらも英語を猛勉強して、ついには翻訳家・児童文学者となるまでを、お約束の激動の昭和史(戦時下の時代背景など)も折り込みつつ描いて行くのであろう「花子とアン」。こぴっと期待してよさそうだ。「ごきげんよう」の美輪明宏のふるえ声のナレーションは、朝から聞くにはちょっとオドロオドロしいけれども、まぁ、いいか。

コメント

  • 2014/04/19 (Sat) 11:38

    kikiさんこんにちは。

    私もアノ山梨弁に反応した一人です。
    こびっと、て!の他にちょっこしってのもお気に入り。
    なんとなくかわいらしい響きですよね。

    あと、幼なじみのあさいち君(このネーミングはお遊びかい?)を演じている役者さんは、たしか清盛の息子の重盛役の方ですよね。
    私見ですが好みです・・・。

    今回の朝ドラ、主演は吉高さんと聞いてイメージが?と思っておりましたが、髪型お衣装ともによくお似合いで大変よろしゅうございます。朝のお楽しみがひとつできました♪

  • 2014/04/19 (Sat) 13:52

    kiki様、初めまして。mikiと申します。

    何年か前からブログを拝見しておりました。
    「sherlock」や「コバート・アフェア」はkiki様
    の記事が面白くて、実際にドラマを見始めました。
     
    私は地元が山梨なので、「花子とアン」も見ています。
    最初のうちは、「~ずら」が頻発していて、見ていて何だか恥ずかしかったのですが、回が進むうちに、山梨弁(甲州弁とも言います)がドラマ自体に馴染んでいっているように見えます。

    「こぴっと」は「しっかり」という意味で、「こぴっとしろし」(しっかりしなさい)なんて言います。
    kiki様が山梨弁を気に入って下さった様で嬉しいです。

  • 2014/04/20 (Sun) 09:15

    akoさん こんにちは。

    山梨弁、かわいいですよね。ほのぼのしてて、すっとぼけた味わいがあってキュートです。
    ちょっこし、というのは「ゲゲゲの女房」でもよく出てきてましたね。山陰の方でも使うみたいだけど、山梨でも使うんですね。

    ワタシは清盛を観てなかったので、朝市君が出ていたのは知りませんでしたが、どんどん遠い存在になってしまうけれども、幼なじみで子どもの頃からずっとハナを好きな朝市の、一途な感じがよく出てますね。ふほほ。

    吉高由里子、明治時代の女学生の服装や髪型がよく似合ってますね。余談だけど、吉高由里子って森高千里とちょっと顔が似てますね。名字に「高」がつくだけで、特に関わりはないんでしょうけど(笑)
    ともあれ、これと「こころ旅」で毎朝なんとなく気分よく仕事に出られる感じで、気に入っています。

  • 2014/04/20 (Sun) 09:22

    mikiさん 初めまして。
    いつも読んでくださってありがとうございます。
    「コバート・アフェア」は段々面白くなっていってますが、「Sherlock」はSeries3で何だか微妙な事になってきて、ちっと先行きが心配です。Series4でもっと変な方向に走っていきそうな予感がしていますが…大丈夫かな。

    「こびっと」の意味を教えてくださってありがとう。「しっかり」という意味なんですね。本文も修正しておきました。語感がかわいらしいのに、しっかりという意味だなんて、なかなかワザモノな言葉ですね。「こびっと」は、仲間うちで、時折会話やメールに使い始めています。ちょっと癖になりそうです(笑)

  • 2014/04/21 (Mon) 19:42

    kikiさん、ずいぶんとお久しぶりでございます。
    kikiさんが朝ドラ見てるというのが意外でした(笑)!
    わたしは朝ドラ結構見てまして、「赤毛のアン」も好きですし、吉高由里子の花子にも期待大です。去年かな、「横道世之介」という邦画に彼女が出ていて、それまでちっともいい印象のない女優さんでしたが、この天真爛漫で世間知らずのお嬢さんぶりを見てとっても好印象を持つに至りました。「花子とアン」のプロデューサーもこの作品の吉高由里子を見てキャスティングしたというようなことを知り、とても嬉しい気分です。花子役は今後もっとしっくりと彼女に合ってくるのではないかと期待しています!

  • 2014/04/21 (Mon) 21:54

    おおー、ミナリコさん。お久しぶりですねー。
    なかなかミナリコさんがお好きなジャンルの記事が出なくてすみませぬわー。
    そうなの。毎朝ちゃんと朝ドラを観るなんて、ほぼ初の経験ですわ。でも「花子とアン」は、何かが他の朝ドラと違ったんじゃないかなという気がします。どこがどうとは巧く言えないんだけど。
    吉高由里子、案外な良さですね。台詞の言い方がイマドキ風なんじゃないかと心配してたんですが、きちんとしゃべってるし、着物も似合ってるし、いい感じです。この先もっと良くなっていきそうですね。楽しみです。
    ドラマ的にも柳原白蓮が出てきたし、もっと面白くなっていきそうですわね。ふほ。

  • 2014/05/23 (Fri) 21:26

    「こびっと」と書いてあるように見えますが
    「こぴっと」なのではないでしょうか?
    「kopitto」

    • 通りすがり #-
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  • 2014/05/24 (Sat) 08:17

    ご指摘ありがとうございます。
    調べてみたら、確かに「こぴっと」ですね。本文も修正しておきました。

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