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「深夜食堂 3」

-第三部も深夜に絶好調-
2014年 MBS/TBS 松岡錠司 他 監督



第一部、第二部ともに本放送時にリアルタイムでは見ていず、暫くしてからTBSチャンネルで放映されたものを見て、面白いと思った「深夜食堂」。第三部はあるのかな、と漠然と心の隅に引っかかっていたところ、今年、10月後半から3年ぶりに第三部が始まった。もちろん、このたびは本放送を録画しておいて週末にチェック。今のところ、まだ、まっちげ(松重)さんは登場していないが、「深夜食堂」は第三部も絶好調だ。
深夜食堂は満を持して映画化もされ、来年1月に封切られるのだが、話題を映画につなげる為の3年ぶりの第三部かな、とも思うけれども、質的には第二部より上がっているような気がする。小味でしんみりとした人情物語なので、これを映画にしてどうだろうね、という気もするのだけど(そういう小味なものを映画にする場合には、いにしえの名匠のような演出力と練達な脚本が欠かせないから難しいのだ)、ワタシ的には「深夜食堂」の映画版はちょっと期待してもよさそうな気がしている。


「深夜食堂」映画版 2015年1月公開

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ついでながら書いておくと、最近のもので、ドラマ版と映画版のある作品に「まほろ駅前」シリーズがある。これは映画版の1作目(大森立嗣監督)が皮切りで、その後、テレビ東京で深夜帯の30分の連続ドラマ「まほろ駅前番外地」(大根仁監督)が制作され、今年、映画版第2弾「まほろ駅前狂騒曲」(大森立嗣監督)が封切られた。映画1作目とTVの連続ドラマまでは面白かったが、今回の映画版2作目はヒドかった。連続ドラマが面白かったので、映画化2作目は、ちょっとどうかなぁ…という懸念もありつつ、近所のシネコンで割引で観られるので観てみたのだが、本当に制作費とキャストと時間の無駄遣いで、多田も行天もこれまでの魅力をキレイサッパリと失っており、寒いというも愚かなほどに詰まらない、ギャグとも呼べないギャグはことごとく滑っており、不景気なむくんだ顔の永瀬正敏は存在が埋もれており、話自体も不必要なバスジャックなどのドタバタを盛り込んで大陥没していた。
ユルユルのグダグダで大陥没。最悪である。


「まほろ駅前狂騒曲」

うじうじとウェットな作風が持ち味の大森立嗣が(映画版1作目はそのウェット感で巧く世界観がまとまっていたのだが)、ドラマ版の軽妙な面白みに変な対抗心を持って、「笑い」を取り込もうとした結果、惨憺たる有様になったのだろうと推察する。

「まほろ駅前狂騒曲」は本当にひどい代物だった。脚本も演出もお粗末の一言。おまけに、スチール写真では分かりにくいが、行天を演じる松田龍平が少し肉付きがよくなっていて、行天の飄々とした中に合わせ持つ繊細な儚さのようなものが全く感じられなくなっていたのも見ていてキツかった。分かり易く言うと、行天が微妙にオッサン化していたのである。ちょっと肉付きがよくなってしまうと、あの長髪も、いつも着ている汚いガウンやコートも、シルエットがもっさりと大きくなり、見た目にかなりうざくなる。ゆえに、いい年をして定職にも就いていず、便利屋の手伝いをするともなくしている三十路の男、という身も蓋もない現実がありありとそこに浮き彫りになってしまうのだ。行天のキャラ設定も路線変更が失敗して、容姿、キャラともにさっぱり魅力がなくなっていた。また、瑛太が演じる多田のパートにだけ、大森立嗣お得意のウジウジ感が過剰に盛り込まれて、余計に煮え切らない雰囲気になったのもトホホだった。また、ゲストとして登場した永瀬正敏を久々に見て、その妙に肉のたるんだ、精神的にもキャリア的にも停滞しているような顔つきを見て、些か驚いた。役としても中途半端な書かれ方だったのが、今の永瀬正敏には相応な感じがするのも何がなし物悲しいものを感じた。「息子」(1991年 山田洋次監督)の頃はいい俳優だったのだが、歳月は無惨である。



そんなこんなで、「狂騒曲」は大陥没映画だった。折角、大々的に映画版の2作目を作るなら、ドラマ版の脚本、演出を手がけて面白い作品を作っていた大根仁に任せれば良かったのではないかと思う。大根仁の方が、ドライな中にバディ物の味わいを込め、ほろりとする部分もさりげなく差し込んで、便利屋の範囲内でのちょっとしたアクションも入れて、もっと面白い映画を作ったのではないかと思う。


連続ドラマ「まほろ駅前番外地」

…とまぁ、「深夜食堂 3」とは関係ないのだけど、「まほろ駅前狂騒曲」について単独で記事を書く気にならないので、映画版とドラマ版がある作品という事で、今回の記事の中に感想を挿し込んでみた。
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話を「深夜食堂」に戻すと、「深夜食堂」の映画版は、ドラマ版の第一部、第二部、第三部でメインの演出家としてドラマの世界観を作っている松岡錠司が監督を勤めているし、ドラマ版のレギュラー陣の他に、ゲストとして余貴美子や、筒井道隆、高岡早紀、田中裕子など、そそられる俳優、女優が名を連ねていて食指が動く。期待しすぎは禁物だけど、今回、ドラマ版第三部の出来がいいので、ちょっと映画版にも期待度が高まってきているワタクシなのである。

現在、第三部は3話目までが放映されたところで、常連陣は、主だったところでは不破万作の忠さんとお茶漬けシスターズしか登場していず、まっちげさんの竜ちゃんや、綾田俊樹の小寿々さん、安藤玉恵のマリリンなどは、まだ姿を顕していない。もしかすると、この辺の常連陣は終盤になって登場するのかもしれない。映画まで登場しないのはオダジョーだろうか。だとしたら、それは戦略として正しいかもしれない(笑)

ともあれ、その辺が出てこなくても、第三部は脚本、演出ともにいい感じで推移している。1話目からいきなり、赤いスリーピースがトレードマークの料理評論家・戸山(岩松了)が登場。初登場の時の嫌味な様子はどこかに消えて、バターライスを愛好する、もの静かな常連になっている。そこへ、ちょっとくたびれた中年女が深夜食堂に現れ、マスターにメンチカツを注文する。その女はかつての人気歌手かしまみさお(美保純)だった。みさおは8年前に夫を亡くして以来、歌手もやめて引きこもりのように過ごしていた…。



というわけで、美保純演じるかしまみさおのキャラクターモデルは、多分、ちあきなおみ、なのだろう。大ヒット曲「喝采」で有名なちあきなおみは、才能と雰囲気のある素晴らしい歌手だったけれど、俳優だった夫の郷鍈治(宍戸錠の弟)が亡くなって以来、哀しみのあまり芸能活動を停止。実質的に引退状態でひっそりと暮らしている。
そのちあきなおみを想起させるかしまみさおを演じる美保純。童顔の彼女もついに、かなりおばちゃん風味になってきたが、そのちょっとすがれかけた風情が役に合っていた。みさおが時折、深夜食堂に顔を出すようになった頃、料理評論家・戸山の一回り年下の妻(渡辺真起子)が癌で入院してしまい、みさおのファンである妻の願いを叶えるため、戸山は一切、人の為には歌わないと決めたみさおに、妻のために歌ってほしいと頼むのだが…。



毎回、あるメニューにちなむ客の思い出とともに、新宿の路地裏の深夜食堂にふきだまるように集まる人々の人生の断面や、その折々の哀歓が、料理の湯気の中に、しずかに、しみじみと綴られる本作。第三部も1話目から「深夜食堂」健在という感じのエピソードで、これこれ、この味だよね、と嬉しくなった。深夜にのれんを潜ってやってくる客達のそれぞれの人生、それぞれの悩み、ささやかな喜びを受け止めるマスター(小林薫)の、必要以上に立ち入らず、だからといって弾きもしない、頃合いの距離の取り方は、第三部に入って、ますます達人の粋に入りつつある。



2話目の「豚バラトマト巻き」は、新人賞を獲ってデビューしても、その先が険しい若手漫画家のお話。マンガは日本のサブカルを支える大きな柱であり、巨大な市場だが、マンガ家は売れるまでも、売れてからも厳しい職業であるということは漏れ聞く。狭い門をくぐり抜けてデビューしても、読み切りの単発だけでは食べていかれず、連載を持ち、それが単行本化されて印税が入るようになってようやく食べられるようになるのだが、売れて連載をいくつか抱えるようになり、アシスタントを何人か雇うようになると、今度はその体制を維持していくのに経費がかかり、印税がある程度入ってきても赤字になる時もあったりするなど、売れれば左ウチワというわけにもいかぬらしい。アシスタントを遣わずに一人で描くか、せいぜいアシスタント一人ぐらいでまわしていかないと、そうそうゆとりは出ないらしい。そういう実態を何かの記事で読んだので、デビューしたはいいものの、なかなか芽の出ない漫画家のありようを描く2話目は、まぁ、実際にこんなもんだろうねぇ、という気がした。自分の担当する雑誌で賞を獲った新人を深夜食堂に連れて来て「豚バラトマト巻き」をふるまうベテラン編集者にダンカン(演技はかなりの棒セリフ)、新人賞を獲っただけでかなりの勘違いぶりを発揮する新人漫画家(石田法嗣)も、いかにもな感じが出ていたし、主人公の心象風景をマンガのカットで表現するなど、演出もそれらしくて良かった。



3話目「里いもとイカの煮もの」は、男女の機微を描いたエピソード。浮気や不倫を繰り返す男(古舘寛治)と、その男に純情な女心を踏みにじられてから、興信所の浮気調査員になってしまった女(石橋けい)の二人が、いかにもリアルに世の中のあちこちに存在していそうな腐れ縁の男女という感じを醸し出していて、その地味さが良かった。男前でキッパリしている興信所調査員の女けいと、彼女に面倒を看てもらっている研修生の若造(淵上泰史)の対比も、世間によくありそうな感じである。女は、焼け木杭に火がついてしまった昔の男について、「相性がいいのよ。里芋とイカみたいなもんかな」と言う。お約束のあざといセリフといえばいえるが、あざとさを全く感じさせない自然なセリフ回しがグッドだった。その相手の、女手入りを繰り返す男を演じる古舘寛治が、「良い女でした」と彼女について言う。深夜帯でなければ実現できそうもない地味なキャストでの男女の機微にまつわるお話だが、その地味さ加減がリアルで、深夜食堂っぽくて、なんとなく良かった。



…というわけで、まだ3話目までしか観ていないけれども、「深夜食堂」は第三部も絶好調である。脚本、演出、出演者が3拍子揃って、理想的な練れ具合になっている。この第三部では、小寿々さん(綾田俊樹)が、何故甘い卵焼きを好むのかについての、種明かしのエピソードがあるのではないかと思っているのだけど、どうだろうか。ふふふ。



いつ観ても素晴らしい、新宿の路地裏飲屋街のセットは、今回も変わりなく、揺るぎなく、その世界観を形作っている。別に深夜営業の店じゃなくていいのだけれども、こういうドラマを観ていると、その店に行ってカウンターに座ってほっこりし、他の常連客とどうでもいいような他愛のない事をしゃべりながら、好きなものを食べ、ビールか日本酒を美味しく飲んで、気持ちのいい時間を過ごせる行きつけのお店、というものを、そろそろ1つか2つ、持っておこうかなぁ、という気になってくる。レストランでも居酒屋でも、よく行く店、というのは勿論いくつかあるけれど、行きつけ、という程になじんだ店はまだ持っていない。そういう店が1軒でもあるというのはいい事だ。自宅に帰る前にちょこっと寄る、もうひとつの家、みたいなね(笑)
新しい店を開拓するのが好きなワタシだけれど、オトナになったんだから、料理と酒の美味しい、無口なマスターの居る、小味な行きつけの店のひとつやふたつは持っていたいものだと、改めて思ったのだった。

>>関連リンク 「深夜食堂」第一部/第二部

コメント

  • 2014/11/13 (Thu) 19:48
    あきですねー

    秋だわ〜秋、紅葉の秋、しんみりする秋て、思う前にもう冬だがね。(名古屋弁)
    その上もう、後1.5ヶ月で今年も終わりざますぅ。。早すぎです。
    深夜食堂。。前から友達に面白い面白いて、聞きながらずいぶん経ちました。面白そう。美味しそう。
    よし!見よう!と、思うといつも終わります。
    ところで、kikiさんは秋旅はしないのですか?て、もう紅葉も終わってクリスマスよて、言われそうですが。1年て早いなぁ、そういえばバッチ君も、身をかためるらしいですね、シャーロック3で燕尾服見てしまってるから、さぞやカッコが良い花婿さんだろうなぁと、思うとちょっと複雑だわぁ〜
    秋風ピープーだわ。。

  • 2014/11/15 (Sat) 09:06

    今年は9月には涼しくなってきたので、例年より秋が長くて素晴らしいと思ったけど、なんだかあっという間に11月半ばですね。銀杏も色づいたと思ったらそろそろ散り始めたりして。
    「深夜食堂」面白いので是非どうぞ。まだ中盤だし1話完結だから途中からでも無問題ですことよ。火曜の深夜(実質的には水曜の1:11から)
    秋旅は、旅というほどではないけども、日帰りでちょこちょこと出歩いてはいますよん。でも前に行った事や、書いた事のあるところだと記事にはしないのでね(笑)
    バッチ君、婚約しましたね。新聞の冠婚葬祭欄に告知を出す、という方式は暫く流行るかも、ですね。写真を観る限りではお似合いな感じの女性で、正解のチョイスじゃないかな、という感じがしました。

  • 2014/11/17 (Mon) 23:07

    kikiさん

    kikiさんに教わってDVDを借り、はまってしまったこのシリーズ、あっという間に観終わってもっと見たいなあと思ってたところ、三部作が来年わが住む県でも放映というニュースで今からわくわく待ってます。でも映画化までは知らなかったです~ありがとうございます。いまどき、こんなしみじみした雰囲気のTVドラマってとっくの昔に消えてしまったと思ってましたが。しかも推理小説も我慢できずにラストから読んでしまう私には一回一回単発で短いからうれしいです。(映画はもっと時間は長いでしょうがこのドラマなら観れそう)

  • 2014/11/18 (Tue) 22:45
    Re: タイトルなし

    ふうさん
    「深夜食堂」お気に召されたんですのねー。良かったですわ。3年ぶりの第三部もなかなかの出来で、期待を外さず頑張ってくれてますので、この分なら映画版もきっと面白いと思いますわ。ひそかに、けっこう期待してる感じです。30分ドラマ、というのがこの「深夜食堂」の世界観にあってるんですよね。短い中に淡々と余韻が漂っているという感じで、毎回、好ましいです。年明け1月末に映画版が公開になるので、これも楽しみですね。

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