「ベイマックス」(BIG HERO 6)

-あたたかなマシュマロの神癒力-
2014年 米 ドン・ホール監督



原作はマーベルコミックものなんだそうだけれど、原作をベースにディズニーが巧くアレンジして別物に仕上げた作品、という感じらしい。「アナと雪の女王」には1mmも興味がなく、何が良くてそんなにヒットしているのかサッパリ不明だったワタクシなれども、これはトレーラーを観た時から、漠然と行かなければ、と思っていた。ストーリーとしてはありがちな話ではあるけれども、構成が巧いし展開もスピーディ。主人公の少年をはじめとするキャラ達もキュートだし、何よりぷわぷわでユーモラスなベイマックスには大いに癒される。原作コミックでは、ああいうぷわぷわした白い風船みたいなロボットじゃないらしいのだけど、いやぁ、さすがデズ本舗。脚色も一級品です。

物語の舞台である、サンフランシスコと東京が合体したような近未来都市・サンフランソウキョウの描写も、こういうのにありがちな、キッチュなヘンテコ日本風味がどの程度かなと気になっていたが、確信犯的に赤い橋脚が鳥居みたいな形をしていたり、ビルの上になんちゃって東京タワーみたいなのが乗っていたり、というアレンジで、適当に日本風なデザインしているというのではなく、味付けとしてそういう風味を、頃合いを計算して出している、というニュアンスを感じた。
街全体のデザインとしては、サンフランシスコの坂の多い地形に、東京の町並みを乗せた、という感じだろうか。



ワタシとしては、主人公の天才少年ヒロがなかなかカワイイのもOKだった。この作品は全体にキャラクター・デザインが良かったと思う。ヒロたち人間のキャラ・デザインも良かったが、なんといっても秀逸なのは、ぷわぷわのベイマックスである。よく考えたなぁ、これ。動きがカワイイ、見た目がカワイイ、実に素晴らしいキャラクター・デザインだ。動きも、ああいう体型だとこういう動きになるだろう、という動きをきちんとつけていて、のちにヒロが開発するアーマースーツを着なければ、早くも走れず、風船のような体にはすぐに穴が空いてしまうベイマックスの無害な柔らかい雰囲気がよく表現されていた。充電器にセットされている時には小さくたたまれていて、ヒロがどこかを痛めると、その「痛い」という声に反応してぷわわ〜〜んと膨らんで立ち上がる様子など、ほわほわとして思わず顔がほころんでしまった。


14歳の天才少年ヒロ

ぷわぷわのベイマックス 動作に伴うきゅうきゅうという音もナイス

飛び出し不要論者のワタシは3Dではなく2Dで観たのだけど、年末のシネコンの昼の時間帯は子供達でいっぱいだった。ある親達はグループで来て、子供たちが一列に横並びするように席を予約しておき、おのおの子供達を座らせるとシアターを出ていった。子供と一緒に観ている母親ももちろん居たけれども、そのグループは子供だけを置いて出て行ったので、ゲ!ちょっとちょっと!子供達だけで残したら、誰も制御しないから上映中騒ぎ放題になっちゃうじゃないのよ!と慌てたけれども、予告編時間帯こそ私語が多くてうるさかったが、映画が始まると、ベイマックスの動きや仕草に機敏に反応して受けまくる子供達の無邪気な笑い声で、こちらも観ていて気分が盛り上がった。子供って、本当にここ!というところは逃さず、漏らさず、そのシーンの売りの部分にヴィヴィッドに反応するんだなぁ、と感心した。


ぷぅ〜〜〜〜

子供たちはベイマックスの一挙手一投足に「カワイイ」「カワイイ」と受けまくっていたが、いやほんとうに体型も動きも愛嬌の固まりで、それを実に細部まで細かく神経を配って表現したアニメーションはさすが老舗の底力、本当にお見事だった。あの、パララララ…に受けずにいられる人が居たらお目にかかりたい。

いまさらだけれども、物語の梗概はというと、
両親を早くに失いながらも、カフェを経営するおばのキャスに引き取られて仲良く暮らすタダシとヒロの兄弟だったが、ある日突然、タダシは不慮の事故で亡くなってしまう。兄を失った悲しみに沈むヒロだったが、兄が開発した癒しロボット、ベイマックスがヒロの傍に現れる。当初は邪魔に感じたベイマックスに段々と癒されるヒロだったが、そうこうするうち、兄の死の裏に黒い陰謀が渦巻いていた事が判明する。ヒロとベイマックスに兄の研究室仲間4人が加わった6人は、犯人の究明に乗り出すが…。

というわけで、原題は「BIG HERO 6」。6人の仲間がタイトルになっているが、邦題は「ベイマックス」で、兄と弟の絆と、兄の分身のようにヒロを守るベイマックスがメインになっている。兄タダシの研究室仲間4人は、原作コミックでは皆、日本人という設定だったらしいのだけど、映画化に際して人種もさまざまなカラフルな仲間になっているのも正解だったのだろう。彼らのキャラもそれぞれによく出来ていたし、みなキュートだった。また、兄弟のおばのキャスが、おばというにはあまりに若くて年齢不肖な感じなのも、日本人ぽいといえばいえるのかもしれない。


ヒロとベイマックスと仲間たち

おばさん、カワイすぎ

ベイマックスのシーンで何といっても印象的なのは、背後からぷわっと柔かくヒロを包みこむ仕草だろうか。観ているだけでも背中があったかくなるような、ヒロの感じている温かい安心感が伝わってくるような、いいシーンだった。「癒し」というものを視覚的に端的に表現するとこうなるのだな、という見本のような映像だった。



敵役の仮面の男も、歌舞伎の隈取りを被ったお面に巧く活かして不気味な存在感を際立たせていたし、彼がヒロの発明品を横取りして操るマイクロボットの自在な動きも滑らかで手強くて面白かった。

全体にスピーディで展開がテンポがいいことと、キャラクター造形が優れていること、アクションとエモーショナルなシーンのバランスがいいこと、見せ場は全てきちんと盛り上げていることなど、作品としてのアベレージが高く、子供ばかりか大人までも100%楽しめて癒される、一段と進化したデズ本舗のポテンシャルの高さをまざまざと実感させてもらったアニメーションだった。栄えている老舗にはワケがあるのだ。伝統を踏まえた上でたゆまず進化を続けていればこそ、老舗の看板も風化せずにいよよ強く眩く輝くのである。

何度も衰えかけては不死鳥のように再生しているディズニーだが、昨今の第3次黄金期の隆盛は本当に見事だと思う。ワタシにとって、それを象徴する作品は「塔の上のラプンツェル」と、この「ベイマックス」ということになりそうだ。子供向けという前提で、字幕版は殆ど上映されておらず、仕方なく吹き替えで観たのだが、吹き替えが嫌いなワタシも今回は吹き替えで全く違和感を感じなかったし、非常にスピーディな展開なので字幕を読みながら動きについていくのはけっこう大変だったかもしれないな、と思ったりもした。



デズ本舗初のマーベルコミックの映画化、わけても近未来の日本を舞台としているという事で、初の日本テイストの取り入れとなったので、お約束的にそこばくのキッチュ感が漂っているけれども、それも緻密な計算の上に絶妙のさじ加減で味付けされている気配が感じられ、ここ数年で、サブカル系を通じてじわじわと広がった、他国の日本に対するイメージがあるポイントに達して、日本人にとって不快さや大きな違和感のないところに着地したのかな、という気がした。



いや〜、それにしてもベイマックス。観ているだけでも癒される。
子供達にはもちろん楽しい作品だろうけれど、本当のところ、これは疲れた大人のためのアニメーションではなかろうか、という気がした。

コメント

  • 2014/12/30 (Tue) 15:00

    kikiさん、こんにちは。お久しぶりです。

    私も「ベイマックス」観てきましたー!本当に癒されますよね。
    私はベイマックスにバフッと抱きつきたい衝動に駆られてました(笑)。

    ヒロたちが住むフランソワソウキョウ。東京のテイストを出すために日本人スタッフが細かくチェックしたそうですよ。日本人が観て、あまり違和感があってはならないと配慮したんだそうです。

    大人が観ても楽しめる作品でしたね。

    では、良いお年をお迎えください♪

  • 2014/12/30 (Tue) 22:11

    ベイマックス、癒されますよね。あの癒し感のあざとさを感じさせない醸し出し方は本当にお見事だったなぁと思いますわ。押し付けがましくないものね。
    mayumiさんはパフっと抱きつきたい感じなんですねー?ワタシはどうしたいかな。ベイマックスに寝転がってもらって、カウチみたいにその上にホワンホワンと寝転がりたいかな(笑)

    サンフランソウキョウ、あのそこはかとなくキッチュでありつつも、実際の東京の感じもなんとなく醸し出されている気配は、やはり日本人のチェックが入っていないと向こうの人だけじゃ無理ですよね。なんかそんな気はしてましたわ。

    ほんと、大人が見ても楽しめる作品でしたよね。

    mayumiさんもよいお年をお迎えください。

  • 2015/01/03 (Sat) 21:45
    べいまっくす

    新年あけましておめでとうございます。
    今年も楽しいお話し楽しみにしております。
    でもって、疲れた身体を癒してもらいたくて、年末大掃除前にみてきましたーわたくしも。子供から大人まで、結構映画館には人がビッシリ入ってましたよ、名古屋も。
    たしかに.ベイくんは、ホワホワポニョポニョで、「うちにも欲しい〜癒されたい。」声をあげてしまいそうでしたが、ずーーと見ていると、あーなる程、日本人にはこの話しにスイと入れる要素が沢山あるなぁと思ってしまいました。
    これ、ドラえもんと、クレヨンしんちゃんを足して割った感じでは?と思ったりした訳でして。
    そんなふうに感じのは私だけ?
    そうそう!ホワホワポニョポニョはクレヨンしんちゃんの犬のシロだ!!
    なんてね。



  • 2015/01/04 (Sun) 20:46
    Re: べいまっくす

    わかみんさん あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくおつきあいください。

    ベイマックス、あー、確かにね。ドラえもんの要素はありますよね。クレヨンしんちゃんのテイストはどこに入っているのか、しんちゃんを見ていないワタシにはよく分からないんですが、きっとどこかに近い要素があるんでしょうね。とにもかくにも、いろんな側面から徹底的に日本人に受ける事を狙って作ったな、という感じはしますね。マーケティングをきっちりしているというか。日本の文化やアニメに対するオマージュみたいなものも感じ取れましたね。そうやって日本に気を使いつつも、けして日本でだけ受けているわけではない、というのが、また良いところですわね。ふほほ。

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