「エレメンタリー」(ELEMENTARY)

-キュートな困ったちゃんキューピー-
2012〜 米CBC ロバート・ドハティ他 監督



このシリーズが始まるというニュースが流れた2012年ごろ、本家「Sherlock」も絶好調だったし、なんでホームズの現代版をアメリカでも作ったりするのかしらん、よせばいいのに、と思っていた。その後、パイロット版が好評でシリーズ放映が決まり、日本ではWOWOWが放映するというのも小耳に挟んだが、ワタシはまだ「Sherlock」に夢中だったので、ふぅん、と思っていた。その「Sherlock」が昨年のSeries3あたりから奇妙な路線変更が行われ始め、ドラマの出来も白眉だったSeries2と比べるとう〜む…という感じで興味索然となってきた昨今、「エレメンタリー」のシーズン1がスーパードラマTVで放映され始めたので観てみたところ、なるほど、これはこれでアリである。面白かった。本家「Sherlock」がSeries3で妙な事になってきた今、NYで困ったちゃんぶりを発揮するだだっ子天才シャーロックを見ていたら「Sherlock」のSeries1を雰囲気的に思い出した。それに、思ったよりもずっと、ジョニー・リー・ミラーのシャーロックはキュートだった。
このアメリカの現代版ホームズでは、ワトソンが東洋系の女性になり、おなじみレストレード警部の代わりに、たまに原作にも登場するグレグソン警部がレギュラーになっている。歴代ホームズ映像化作品初のアジア系の女性ワトソンを演じるのはルーシー・リュー。どうせ女性にするなら思いっきり穴場を衝こう、というチョイスだろうか。でもこれが見事に正解。シャーロック役のリー・ミラーと不思議にいいコンビネーションを醸し出している。最初に聞いた時にはえ!?なんだって?と思ったキャスティングだけれども、プロデューサーは大層な慧眼だった。ルーシー・リューは、誰もが中国系の女性というと思い浮かべる典型的なルックスだ。小柄で、つり上がった小さな目と黒いロングヘア。でも、その典型的なアジアンルックスがアメリカでは強力なアイデンティティになるという事をよく分かっている人なのだと思う。美人でもないし、好きな顔でもないのだが、不思議な魅力があり、知的な雰囲気もあり、エキセントリックなシャーロックの引き立て役には留まらず、ちゃんと自分も光っている。勿論ワトソンも光るように脚本も書かれているのだけど、きっちりと光っているのは、やはりタダモノではないという事なのだろう。



一方、ワタシ的には動いているジョニー・リー・ミラーを観るのは、実に「トレインスポッティング」のシック・ボーイ以来となった。いやいやいや、ご無沙汰でした。もちろん彼はずっとあれやこれやと出ていたのだけど、単にワタシが観ていなかっただけである。最初にシック・ボーイで観たせいか、昔、アンジェリーナ・ジョリーの亭主だったという印象があるせいか、ジョニー・リー・ミラーというと、とんがった男という印象があったのだけど、どちらかというと可愛らしい人なのだな、というのが今回、久々に彼を観て感じた印象だった。それに、もっと長身なのかと思ったらそうでもない。iMDbでも身長177cm(5' 9¾")となっていたが、画面で観た感じでもそんなものだろうな、と思う。だから、かなりハイヒールを履いて伸び上がっているにせよ、ルーシー・リューとさほどの身長差を感じない。


お子様度全開のキュートなホームズ



このアメリカ版シャーロックは、薬物中毒治療のためにロンドンからNYに来ているという設定。当初は施設に入っていたが抜け出して、資産家の父親が所有する古いアパートメントで暮らしている。彼を24時間体制でチェックし、ふたたびクスリに手を出さないように介助する付添人として、元外科医だったジョーン・ワトソンが派遣されてくる。
シャーロックはリハビリのために自ら方法を考えていた。かつてロンドンで面識のあったNY市警のグレグソン警部からの依頼を受けて、事件解決のコンサルティングをする、ということだ。グレグソン警部を演じているのがエイダン・クインというのもちょっとナイスである。今はただのオッサンであるが、80年代半ばから90年代半ばまではちょっと素敵だったエイダン・クイン。マドンナの「スーザンを探して」や「月下の恋」、「レジェンド・オブ・フォール」などでは、いい感じのハンサムマンだった。今は昔の物語である。


エイダン・クインの今昔物語 …時は流れる

現代版シャーロックの基本的なキャラクターは、本家「Sherlock」とほぼ同じである。天才的な頭脳と観察眼を持っているが、エキセントリックでアスペルガー傾向が強く、他人とまともな関係を築く事が難しい、という性格付けだ。その基本設定の上で、バッチ君のシャーロックはかなりアロガント度が強く、ジョニー・リー・ミラーのシャーロックは、よりチャイルディッシュで愛嬌がある、というのがそれぞれのキャラの味付けの違いである。


アロガントでクールなバッチ君のシャーロック

お子様でキュートな、やせ形キューピーさんという感じのジョニー・リー・ミラーのシャーロック

薬物中毒だった過去、というのはシャーロックにとって非常に重要なファクターであり、キャラクターのアクセントでもある。19世紀に発表された原作で既に、精神的に刺激がなくなるとコカインに惑溺するというホームズのキャラクターを打ち出していたところに、21世紀になってもシャーロック・ホームズが人々に愛される魅惑と先見性が端的に感じられる。コナン・ドイルはホームズ・シリーズを金のためにイヤイヤ書いていたらしいけれども、ホームズの基本的なキャラクターや設定、彼を取り巻く人物群などの長持ちする魅力が、そのイヤイヤの執筆からよくも生み出されたものだと感心する。まぁ、最初はノッて書いていたのだろうけど、そればかり書かされているうちにイヤになってしまったのだろう。同じ事ばかりやっていたら、確かに飽きるしイヤにもなる。

そして、昨今ではシャーロックとワトソンはブロマンス的に描くのが定番になり始めたところで、このアメリカ版はワトソンを女性にしたので、男同士のブロマンスとは、また異なるニュアンスを盛り込む事ができるわけである。どうやら、お子様で利かん坊なシャーロックに対して、ワトソン女史は年長のようなので、時に見守り、時にしつけつつも、なくてはならぬ存在としてシャーロックの中で次第に大きくなる、という感じだろうか。


絶妙だったブロマンス関係もSeries3では微妙になってきてしまった「Sherlock」のコンビ


どういう関係性を作り上げて行くのか、いろいろと遊べそうな「エレメンタリー」のコンビ

原作を現代風にアレンジしている「Sherlock」に対して、「エレメンタリー」は、基本的にオリジナル・ストーリーのようだ。解決する事件などは特に原作から何も引っ張って来ていない感じである。ただ、兄のマイクロフト、"The Woman" アイリーン・アドラー、宿敵モリアーティなどはもちろん登場するようなので、こちらではどんな味付けで登場するのか愉しみだ。アイリーンについては、シャーロックの過去に陰を落とす女の存在について、早くもシーズン1の1話目(パイロット版)から仄めかされているので、アイリーンがそのうち登場するのだろうと思われる。ふふふ。待ち遠しい。

また原作において、ホームズは引退後に田舎で蜂を飼って暮らした、という設定になっているが、このアメリカ版ホームズでは、早くもアパートの屋上で養蜂を行っていたりする。蜂蜜が屋上から壁を伝って階下にしみ出したりしているのだけど、そんなんじゃアパート中がゴキブリの巣になっちゃうんじゃ…と些か引いた。

シーズン2は現在WOWOWで放映されている真っ最中らしい。これもそのうちスーパードラマTVに降りてくるだろうから気長に待つと致そうかしらん。
ひとまずワタクシは、周回遅れでシーズン1をチェックしていこうと思う。

コメント

  • 2015/01/25 (Sun) 10:15
    ベネディクトとJLMは

    初めまして。エレメンタリーは観れていないのですが、2人は舞台フランケンシュタインで博士とクリーチャーを交互に演じていました。
    東宝シネマズで昨年何度かスクリーニングしたのを観ましたがJLMはより子供のような可愛らしさのあるクリーチャーでした。

  • 2015/01/25 (Sun) 20:32

    ちいさん 初めまして。
    2人が舞台で競演して、フランケンシュタイン博士とクリーチャーを交互に演じていたのは勿論、知っていますよん。かなり話題になってましたよね。ただ、舞台の様子は見ていません。子供みたいに可愛いクリーチャーだったんですか。なんとなく想像ができそうです(笑)

  • 2015/01/26 (Mon) 17:37

    こんにちは
    SherLockがS3でこけなければ、kikiさん
    私は「エレメンタリー」を見ていなかったと思います。

    待って待って待った挙句、うそ~~でした。浮かれ踊るバッチ君に追い打ちをかけるかのような、知的な雰囲気皆無のワトソン夫人!
    原作では、コンビ復活の為、早くに病死させられるマダム・ワトソン、好きでした。・・・・ただワンツーを繰り返し見しています。
    エレメンタリー2
    ご無沙汰でしたが、クリマイ新シーズンでWOWOWに再入会しましたので、見て見ます

    • ジェード・ランジェイ #-
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  • 2015/01/27 (Tue) 00:27

    ジェード・ランジェイさん 確かにね。SherLockがS3でコケなければ、ワタシも「エレメンタリー」観る気になってなかったと思いますわ。でも逆に、見てみる気になって良かったかも、という気もします。出来が悪ければともかくも、これはこれで面白いし。それはそれとして「Sherlock」がS4で元の路線に揺り戻してくれるといいんだけど、このまま変な方向にどんどん走っていきそうな気配ですわねぇ。…ふぅ。どうなることやら。

  • 2015/02/01 (Sun) 10:49

    kikiさん

    こんちは!このところ忙しくてあまり家にいないので書き込み出遅れたしまったorz
    kikiさん“君子豹変す”ですな。この言葉は私は好きですよ☆

    ルーシー・リューはアジアンの中でなかなか頑張ってるし声もかわいいし、
    私も顔的には好きじゃないけどついつい応援したくなっちゃいます。
    ジョニー・リー・ミラーとのケミストリーが良かったのね、エイダン・クインとも。
    で、最初見た時なんでホームズとワトソンなのかね、このキャストで。と思ったけどやっぱり原作のある強みをこのドラマでも感じますね。原作をなぞっている訳ではないけどポイントポイントに散らしてある、その加減がいいと思いますわ。

    そしてシャーロックをアメリカ人にしなかったのがミソ!活躍舞台がロンドン(S2で221bが出てくる)とNYなんて贅沢です。英国人俳優がまた大勢でてますねえ。
    昔、メリル・ストリープが英国人俳優が横に並ぶと何となくコンプレックスを感じるって言ってたのを思い出すけどやっぱり大英帝国健在なのかしら?

    このシリーズのアイリーン・アドラー、さてさてkikiさんがどんな評定するのか興味あるところですww

    ところで、昨年私がハマってみてたRussia1の「名探偵シャーロック・ホームズ」がAXNミステリーでやってますね。かのソ連版をやっと去年全編見ることができた事を考えると隔世の感があります。なかなかウィットとオマージュに富んでるよ。ソ連版のあの暖炉の前で二人が語り合うとこそっくりな場面があったり、ホームズが偽名を使おうとしたら本名を言え!といわれてとっさに“ベイジル・ラスボーン”と答えたり(笑)まだ1話しか見てないけど時間ができたらゆっくりみてみたいな。

  • 2015/02/01 (Sun) 20:12

    ジェーンさん こんばんは。
    そうですね。観る前と印象が変わりましたよ、これは。面白いですね。

    ルーシー・リュー、声が可愛いですよね。足も長くないし、どこといって飛び抜けていいところはないんだけど、存在感がありますね。彼女をあの場に配置して、あれだけピッタリとハマるというのは、普通の人じゃ考えつかないキャスティングですね。このプロデューサー、なかなかですわね。

    原作あると強い、という事はおおいにありそうですね。また、コナン・ドイルの原作にちりばめられたエッセンスが100年たっても使える要素が多い、というのが凄いもんだなと思いますね。でも改めて観ると、これはやっぱりBBCの「Sherlock」の影響は受けてますね。あのシャーロックのエキセントリックさの質は、かなり近いと思います。

    シーズン2ではロンドンも出て来るみたいですね。221Bには兄のマイクロフトが住んでいるとか。アイリーンの登場ともども、楽しみにしときますわ。

    ジェーンさんは本当にロシア版のホームズ物、お好きですね〜。その新作のロシア版ホームズというのは、ワタシもちらっとは見てみたんだけど、う〜む、ワタシはどうも乗れなかったかも。ロシア版て、どうもダメなの、ワタシ。ロシア語というのがあまり好きな響きじゃないというのもあるかも知れませんけれど。それに、そもそも論だけど、なんでロシアでホームズ物なんか作るのか、というのがどうしても面妖でね…(笑)ストーリー展開も粘っこいというか、回りくどい感じがしちゃったりして。それに、この新しいロシア版のホームズはメガネをかけていて、性格付けもあまり好きになれぬ感じなのですわ。…というわけで、ワタシ的にはちっとロシア版は苦手でした。ふほほ。すみませぬ…。

  • 2015/02/18 (Wed) 10:35

    kikiさんこんにちは。

    遅ればせながら録画していた「エレメンタリー」1シーズン第一話を
    見ました!
    舞台、キャストをこれだけ変えているのに、
    原作のテイストが感じられるって
    やはりそれだけ力があるということですかしらん。

    一話を見る限り、こちらのワトソン君は保護者的な
    立ち位置にいますが、これからどのように変化していくのかも
    興味深いですね。
    シーズン2ではますます盛りだくさんのようで
    今から楽しみです。
    本家(?)の復活もまだまだ期待していますが。

  • 2015/02/19 (Thu) 20:43

    akoさん こんばんは。
    やっぱり原作に力があるってことですよね。そして、シャーロックの我が儘勝手で空気を読まないアスペルガーっぷりは、本家「Sherlock」の影響を、やはり強く受けているような気がします。「エレメンタリー」を見ていると、なんとなく「sherlock」を思い出しますわ。
    当初、これが制作されている、というニュースを聞いたときには?「ええー?」と思ったものだけど、見てみると案外面白いですよね。これはこれで全然OKです。まぁ、そう感じたのは、本家が冴えなくなってきた、という事も背景にあるのかもしれないですが…。BBC版、元のテイストに戻って欲しいですねぇ。…ふぅ。

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