「天皇の料理番」

-案外いい感じの2015年版-
2015年 TBS



そういえば昔、堺正章主演で「天皇の料理番」て連続ドラマがあったなぁ、と、新しく「天皇の料理番」が連続ドラマになるという噂を聞いた時に思い出した。昔のドラマは1980年だったらしい。そうだっけ。まぁ、とにもかくにもけっこうな昔だ。日曜の夜に家族で観ていた記憶はあるのだが、細部はすっかり忘れてしまっている。明石家さんまが出ていた事を漠然と覚えているけど、あれは何の役だったんだろう…。あのテのドラマを今のキャストでやってどうなんだろうねぇ、と思っていたが、評判が良さそうなのでちらっと観てみた。篤蔵に佐藤健てスマートすぎやしないの?と思っていたけど、案外ハマっていて面白い。おまけに薫サンも出てるなんて。…侮れない。
昔の1980年版を殆ど覚えていないので比較もしようがないのだけど、2015年版を観ていて、この役は昔は誰がやっていたのかな、なんてチェックしてみるのも一興だ。ワタシが覚えているのは篤蔵の妻、トシ子を昔は壇ふみが演じていたことだ。2015年版は黒木華。壇ふみの方が美人だけれども雰囲気的には近いものがある。トシ子が黒木華と知って、うまいなぁ、とキャスティングにニヤニヤした。2015年のこんにち、トシ子を演じる女優は黒木華をおいて他にはいるまい。



トシ子といえば、1980年版で、堺正章の篤蔵が「トシ子ぉ」と呼びかける時の独特のイントネーションは未だに覚えている。ワタシの父は壇ふみが好きで、このドラマも壇ふみを目当てに観ていたようなところがあったので、ワタシも壇ふみが出ていた事をよく覚えているのだと思う。父が丸髷姿の壇ふみに「いいねぇ」と目を細めていたのを思い出した。

薫サン(小林薫)は、篤蔵が修行していた華族会館の料理長・宇佐見を演じている。一流だけど頑固という職人気質の定番的なキャラである。でも、コワモテの薫サンはヘラヘラしている薫サンよりも、ワタシ的には好みだ。この役は1980年版では、「ヒッジョーにキビシーッ!」の財津一郎が演じていたらしい。あはは、そうだったんだ。残念ながら財津一郎がどんな風に演じていたのか覚えていないのだけど…。



そして今回、篤蔵を演じる佐藤健は、セリフ回しにたくまざるユーモアがあって面白い。佐藤健が演技をしているのは初めて観たのだけど、そうか。なかなか味がありますね。声も低めで甘っちょろくないし。なんでキャスティングされたのか不思議だったが納得できた。なるほどね。



他にも篤蔵の父親に杉本哲太(けっこう売れてるなぁ)、母に美保純(それなりにキャリアを積んでいい感じになってますね)、病に倒れる秀才の兄に鈴木亮平が扮していて、激やせして肺病の感じをよく出しているし、巧い。
明治らしい感じを出すためか、鈴木亮平に黒木華、柄本佑など、あっさり系の昭和顔俳優がうまい具合に配されている。柄本佑の演じる山本辰吉役が、昔、さんまが演じていた役らしい。微妙に思い出してきたけれど、この辰吉は途中で料理人を諦めて別の道に行くんじゃなかったかしらん。違ったかしらん。


鈴木亮平 プロ根性の「病人顔」

オープニングのタイトルバックも、アニメーションがいい感じだし、BGMは「威風堂々」と来たもんである。篤蔵の修行時代は明治だものねぇ。「偉大な明治」には「威風堂々」が似合うのだ。また、セットも赤煉瓦な明治、という雰囲気がよく出ていて、かなりしっかりとセットを建て込んである気配。一丁倫敦を再現しているらしい。何やらTBSよりNHKのドラマのような感じもする。TBSの60周年記念と銘打っているので予算もそれなりにかけているんでしょうね。1980年版に比べると、セットは今回の方が遥かにしっかりと立派なものを作っているんじゃないかという気がする。



ドラマは、いよいよ篤蔵のパリ修行時代に突入するということで、ますます盛り上がって行きそうな気配だ。地上波の連ドラを観るのは、深夜枠の30分ドラマを除いては、いつ以来だか忘れたほどに久々だけれども、1980年版は殆ど内容を覚えていないので、篤蔵がどんな具合に修業していくのか、トシ子とはいつどうやって復縁するのかなど、ニヤニヤしながら観ていこうかと思う。

余談だが、明治・大正・昭和初期の人は人生で初めてカツレツを食べた時、その美味しさに衝撃を受け、以降の食の好みや人生が左右されたという人が多い気がする。確か大正生まれの池波正太郎も、株屋の少年店員だった時代に銀座の洋食屋に入って、自分の金で生まれて初めてカツレツを食べて、世の中にこんな美味いものがあるのか、と感嘆したのが食い道楽への道の歩き始めだったと思う。明治・大正・昭和初期の少年にとって、カツレツは異文化との遭遇であり、その味と匂いを賞味することは、魂を揺さぶる体験だったのだろう。そして「天皇の料理番」も、洋食事始めの時代にカツレツの洗礼を受けた少年が、パリで修業して本当の一流のフランス料理を作れる料理人になるまでが、明治から大正の、日本の近代化とシンクロする形で進んで行くわけである。


しっかり、がっちりと明治色が出ている 時代考証にはかなりの本気度を感じる

佐藤健の篤蔵は不思議なユーモアがあって、予想外に役にハマっていて好感が持てた。彼を筆頭として、このドラマはキャスティングがバッチリだと思う。
ただ、肝心の料理が、今のところ、画面に映る様子が、あまり美味しそうに見えないのはちょっとどうだろうか…という感じもしなくもないのだけれど、これも段々、修業が進んで来ると美味しそうに見えるように映るのだろうかな、などと思ったりしているけど、どうなんだろうか。

コメント

  • 2015/06/01 (Mon) 10:04

    kikiさんこんにちは。
    「天皇の料理人」わたしも初回から拝見しております。

    佐藤健さん、以外にと言っては失礼ですが、
    いい雰囲気を出していますよね。
    どうしても「ルーキーズ?」あたりのチャラいイメージしかなかったので
    あまり見たこともなかったのですが、
    Eテレの「スイッチインタビュー」に出演の折、
    演技に対するとてもしっかりとした考えを語られていました。
    そしてそれに向かう情熱も感じられて
    ちょっといいかもと思っておりました。

    久しぶりに録画までして見たいと思う地上波のドラマ。
    これからが楽しみです♪

  • 2015/06/01 (Mon) 23:23

    akoさん こんばんは。
    初回からご覧になってるんですねー。
    ワタシは、少し前からです。最初の方は観ていないけど、まぁ、ある程度は予想がつくのでよしとしようかと(笑)

    佐藤健、ほんと、予想外にいい感じですよね。タカをくくらずにちゃんと観てみないと、よしあしは分からないな、と改めて思いましたわ。

    セットも頑張ってお金かけてるし、脚本もキャストもいい感じだし、地上波で次も観ようと思った1時間ドラマは、本当に久々です。クラシカルな設定って根本的に好きなので、出来が良ければ文句ないですわ。ふほほ。

  • 2015/06/04 (Thu) 15:41

    kikiさん、こんにちは。
    暑くなりましたね。

    「食」
    食べる行為は生きとし生けるもののもっとも重要な快楽のひとつですよね。
    時の天皇も、時の武将も、統治したり象徴だったりする人々もやはり我々一般サピーと等しく食されるワケで、この度の宮中晩餐会での天皇陛下はいったい何を召し上がるのだろう、何がお好きなんだろうと想像を張り巡らせますが、実は意外なものだったり。
    佳子ちゃんばかりクローズアップされて、彼女は一挙手一投足を観察され、好きなものも自由に食べられないのでは?と心配したり…(うそうそ。笑)

    家康が天ぷら好きで死んだとか、秀吉はニンニク好きで戦の時もニンニクを数珠つなぎで首から提げて、小腹が空いたらかぶりついていたとか、時のトップもいろいろと好みがあるようで…。

    天皇の料理番は初回から第三話まで観て、仕事や付き合いで以後途中途中をチラホラと観た程度で、キャストや話の展開は概要だけはなんとなく理解しているつもりです。
    確かにみんな佐藤健という役者がトレンディ俳優の一人として軽視していた傾向がありますよね~。
    「とんび」でしたっけ?内野聖陽と演ったのは?
    あれがあるからこの天皇の料理番があるのかな~なんて思ってますけど。
    ルーキーズや、るろうに剣心に出ている佐藤くんより人間身があり、演技がどことなく異様でそそられるような…。
    若手でも小栗旬や綾野剛みたく、勘違いしていないところがいいなと。
    オカメ昭和顔というか、もっと昔の時代からやってきたような黒木華も出てきた時に「あれー」と思いましたが、あれは年配の映画監督やテレビ番組製作者に受けてるでしょうね。最近の女優さんにない妙なエロさがある女優さんです。
    今回のように明治大正の時代劇に良く似合います。



  • 2015/06/05 (Fri) 23:31

    sanctuaryさん こんばんは。
    じわじわと暑くなって来ましたね。でも、今はまだ湿度が低くてラクですが♪そのうち梅雨入りして、夏が来て、ジメジメしちゃうんでしょうねぇ。…ふぅ。

    今上天皇の食のお好みは、いかがなものなんでしょうね。かなりヘルシーなんじゃないか、という気がしますけども。いずれにしても80過ぎても現役で働いてるんだから、健康に気をつけて頑張っていただきたいですね。

    佳子ちゃんは、皇室の女子としてはカワイイので、まぁなんだかんだと目立っちゃいますわね。お父さんのナマズ殿下も若い頃はけっこう好き勝手やってたみたいだから、彼女のキャラは父親譲りかもしれませんわ。だから好きなものも食べられないなんて殊勝な事はないんじゃないかと…(笑)

    これ、初回から3回までご覧になったんですねー。ワタシはつい先々週ぐらいから漠然と見始めた、という感じです。佐藤健、結構いいですね。「とんび」は観ていないので分かりませんが、紋切り型の演技じゃなくて、ちゃんと役になってるな、と思いました。
    黒木華は、現代劇に出ればそれなりにちゃんと演じるし、時代劇や、明治、大正、昭和初期の女性にはうってつけですよね。山田洋次とかが大好きそうなタイプです。妙なエロさね(笑)確かにそうですね。ふふ。

  • 2015/06/07 (Sun) 15:45

    kikiさん、ばぁばです。
    観るべきドラマの見当たらない昨今、この『天皇の料理番』は出色だと思います。佐藤健がすばらしい。目がいい、眼力に圧倒されます。
    四か月修業したとかで、包丁さばきもあざやかですよね。
    kikiさんは堺正章版を観ていらっしたんですね。興味深く拝読しました。
    リメイクの方、初回から観ていますが、主人公が料理に魅せられるころから、ドラマの展開が一段と良くなってきました。テンポもいいです。
    佐藤健の現代劇も観てみたくなって、ゆうべ『カノジョは嘘を愛しすぎてる』も観てしまいました。素に近い、彼もよかったです。このひと、どんな役もこなせるんじゃないかと思いました。

    そうそう、あなたのおかげでイマジカ観るようになって、感謝しておりますが、あれやこれや録画がたまって忙しいです。
    カンバーバッチのフアンでいらっしゃいましたよね。『パレーズ・エンド』はストーリーの進行急ぎすぎていて、感動少なくがっかりしました。評判作品ではあったようですけど。

  • 2015/06/08 (Mon) 06:35

    ばぁばさん こんにちは。
    「天皇の料理番」確かに昨今のドラマの中では次回も観る気になる、数少ないドラマですね。佐藤健もいまどきの若手、という枠をはみ出してきっちりと役になっている感じが好感が持てます。
    包丁さばき、本当になかなかのもんですよね。頑張ったんですね、かなり。
    ただ、イマドキのドラマだから、全11回とかなので、途中から話が飛ばし気味になるんですね。60周年記念だから頑張って昔のように半年ぐらい放映するというスパンで制作すれば良かったのに、と思うけども、視聴率取れなかった場合に悶絶するだろうので、まぁ、そうそう博打もできなかった、というところでしょうかね。
    堺正章版は、昔だから半年ぐらいのスパンで放映していたと思います。細部は全く思い出せないけれども、毎週、家族で楽しみに観ていた、という事は覚えていますわ。

    イマジカ、今、英国俳優の特集で一段とあれこれ流してますね。CATVは便利でいいのだけど、あっちこっちとドラマや映画が滝のように流れているので、録画をセットするのも大変だし、録画したものをちゃんと観るのも大変ですのよね。
    「パレーズ・エンド」。制作していた時期にはUKでけっこう話題になっていたようなので、ワタシはUKからDVDを取り寄せて観たんですが、出来としてはう〜む、なんだかなぁ、という感じではありました。バッチ君はきっちりと仕事をしていましたし、貴族としての彼の佇まいや、セリフ回しは楽しめましたけどね。脚本がイマイチだったかな、と。

  • 2015/06/08 (Mon) 20:48

    kikiさん、
    おっしゃる通りです。きのうのフランス版は正にくずれてきて、大食いコンテストとか、あの外交官にしてはあまりに俗っぽい、郷ひろみの長ぜりふとか、華ちゃん演ずるトシコへの思いはどうなったのかと思うような、美貌度のおちるフランス娘との恋とか、あれもハショリ過ぎによるものなのか、だんだん観る気が失せ始めるような、気配です。ドラマはホント、丁寧に作ってほしい、ディテールをしっかり、説得力ある場面づくりに、手抜きせず、励んでほしいと、つくづく思いました。

  • 2015/06/09 (Tue) 22:11

    ばぁばさん
    折角パリに行ったのに、かなりはしょり気味の上に、妙な具合にコメディになってしまってましたね。回数が少ない事が要因だろうとは思います。せめて20回にするとか、60周年記念なんだから新機軸を打ち立ててみれば良かったのにね。11回や12回ではディテールにこだわりようがないのかも…。

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