「The Photographers」「The Photographers2」

-過ぎ行く刹那を永遠にとどめる、ということ-
2014年 2015年 BS朝日



キヤノンの提供による、ユニークな写真家達のドキュメンタリー・シリーズ。第1弾を昨年観て面白かったので、第2弾が放送されると知ってしっかりと予約録画した。
このドキュメンタリー・シリーズが作られた目的は勿論、キヤノンの主力商品であるEOSの性能をアピールするためのプロモーションという事が第一目的なのだろうけれども、それも巧く伝えながら、ピックアップした写真家達のこれまでと現在について紹介しており、ドキュメンタリーとしても生き生きとした興味深いものに仕上がっているというスグレモノの企画である。


ここで取り上げられた写真家達は、みな自分が撮り続けると決めた被写体と、その写真を撮る事にアディクトしている人々である。むろん、対象とその対象を撮る事にアディクトしているからこそプロの写真家になったのだろうとは思うけれども、時に苦しく、時に険しくても、自分が本当に好きなものを追い続け、写真に撮る、という事を職業に出来ている彼らの表情には、一様に吹っ切れた、突き抜けた何かが漂っていたのが印象的だった。目が迷い無く輝いている。とことん打ち込んでいけるものを捕まえた人の表情だなぁ、とちょっと羨ましく感じた。

もちろん、好きだからというだけで写真家として食べていけるほど甘い世界ではない。プロの写真家というのは大変だろうな、とつくづく思う。カメラは年々性能が向上しているし、お金をかけて機材を揃え、使い方のコツを覚えれば、その高いテクノロジーに支えられて、ド素人だってそこそこの写真は撮れる。ましてやセンスのいい素人の中には玄人裸足の写真を撮る人もいるだろう。誰でもある程度の写真が簡単に撮れてしまう時代だからこそ、プロとアマを隔てる壁は、より高く厳然と存在しているのかもしれない。素人が趣味である程度やってもそこそこ出来てしまう事をプロとして行う時、プロとアマを分けるものは、テクニックだけではなく、何を見てそれをどう切り取るのか、という感覚、感性が大きくモノを言うのではないかと思う。つまり、決め手は Point of view なのではなかろうか。それに根気とフットワークの軽さ。写真家って本当に根気とフットワークが必要な仕事だなぁ、とつくづく感じた。

このドキュメンタリーは、今はそれぞれの分野でプロの写真家として活躍している彼らが、いつごろ何がキッカケで写真家になろうと思い立ち、どうやってプロになったのかを、彼らの日常を追いつつ、さらりと紹介する。そこから漂ってくるのは、好きな事を趣味として終わらせてしまう「普通の人」と、どうしてもそれを職業としてやっていきたい「アディクトしている人」との思いの差である。自分とはどういう者であるのか、何をして生きていきたいのか、を突き詰めている人、または明確な人は、こうして突き進んでいかざるを得ないのだな、という事がよく分かったドキュメンタリーだった。

昨年の「The Photographers」第1弾は、動的な被写体を追う写真家たちを3回に分けて特集していた。飛行機に鉄道、野鳥や動物、そしてスポーツのカメラマン達である。中でもインパクトが強かったのは航空写真家たち。飛行機が大好きで、元はパイロットだったのがいつしか飛行機を専門に撮る写真家になった人や、飛行機+空・雲という取り合わせに尽きせぬ魅惑を感じ、空を何時間見ていても飽きない写真家など、飛行機専門の写真家はかなり独特である。ここで取り上げられていた航空写真家は、チャーリィ古庄だの、ルーク・オザワだのと、何故かカタカナ名+名字というネーミングで、なんと言うか、揃って昔のジャズバンドのバンマスみたいなノリのネーミングセンスである。チャーリィ古庄氏は人柄がユニークで愛嬌があり、心底、飛行機が好きで、自分が撮りたい飛行機を撮ってそれが仕事にもなっているというシアワセな御仁である。撮りたい飛行機があれば、とにかく自腹で世界のどこにでも行って撮る。「自己満足しないと情熱は続かない」というチャーリィ氏。あっけらかんとして表も裏もない。やりたい事を思った通りにやる。とにかく思い立ったら行動する。自分でも、その物好きぶりに首を捻りつつ、しかし、旅から戻るともうすぐに次の被写体のある場所に飛んで行きたくて仕方がなくなるらしい。面白い。



ルーク・オザワ氏はチョイ悪オヤジ系のルックスで、何時間空を眺めていても全く飽きないという空と雲が好きな人。自分の気に入った空と雲のポイントを見つけ、その中を飛行機がよぎっていくのをじっくりと待って撮る、というスタイルの航空カメラマンである。ハっとする雲や光の中を飛行機がよぎっていく写真は印象的だ。この二人は、心底好きな事を仕事にしているという充実感に満ち満ちて、とにかく、とても仕事が楽しそうだった。



また、鉄道写真は、対照的なスタイルを持つ、鉄道写真の巨匠の元で修業した兄弟弟子二人の、ちょっと微笑ましいライバル関係を描いていて興味深かった。航空や鉄道は多くのファンがいるし、素人カメラマンも多い根強いジャンルであろうが、その中でプロのカメラマンとして生きていくには並大抵でない拘りや独自のスタイルが必要なのだろう。

野鳥や動物などを専門に撮る生物写真家達の中では、野生動物を独特の視点で切り取って2013年度のナショナルジオグラフィック写真賞を受賞した前川貴行氏と、動物園の動物を撮る福田豊文氏が対照的で面白かった。前川氏はインドネシアでオランウータンを撮ったり、北海道で熊を撮ったりという、文字通り自然の中で生きる野生の動物達の一瞬を印象的に捉える写真家だ。



かたや、福田氏は動物園の動物たちのユニークな姿を切り取る。訪れる人のいなくなった夜の動物園で、動物たちはどう過ごしているのか、その姿に迫った写真など、知らずに見れば動物園の動物達の表情にも色あせない野生が閃いていて、管理された環境で生きているとは思えない一瞬の姿や表情を捉えた写真は興味深かった。



この第1弾でフィーチュアされていたカメラはEOS 7D MARKⅡ。多分、動的な被写体を追うのに適した性能を持つカメラなのだろう。そのカメラで、登場するカメラマン達に、ドキュメントの締めくくりとして、それぞれのテーマで被写体に迫って貰うという流れで、カメラマン達はCANONのストラップをさりげなく首からかけて、EOSのファインダーを覗くわけである。製品アピールとカメラマンの紹介が渾然一体となっていて、キヤノンも巧く考えた企画だなぁとニヤニヤした。

今年の第2弾では、風景や人物や天体や水中撮影などの静的な被写体を追うカメラマン達を2回に分けて特集していた。
モータードライブを多用し、被写体も男の世界というか、カメラマンが男ばかりでムンムンしていた第1弾とは事変わり、第2弾は全体に柔らかい雰囲気で、女性カメラマンも二人入っていた。一人は風景写真家の米美知子さん、もう一人は水中写真家の尾崎たまきさんで、二人ともスリムで体の動きが素早く、強い意志をサッパリした笑顔の裏にしっかりと持っている感じの女性達で、撮っている写真も、かたや詩情に溢れた美しい風景を切り取り、もう一方は水俣の海を生涯のテーマとして、水中に留まらない視点でドキュメンタリストとして独自の表現を追求していて、どちらも好感度大だった。


写真は宝探しだという米美知子さん


水俣の海をライフワークとして追い続けるという尾崎たまきさん

また天体写真家の中西昭雄氏は、天然のユニークキャラで、本人は至って真面目なのに、ポツっと出る言葉が妙に面白くて、なんだか見ていてついつい笑顔になってしまうかわいらしいオジサンだった。子供の頃からの天体好きが嵩じて、自分が見た夜空の星の光景を写真に残したいと思ったのが天体写真を撮り始めたキッカケらしい。それでも、天体写真で食べていけるとは思わなかったので、当初はサラリーマンになったものの、趣味で天体写真を撮り続けているうちに、ぽつぽつと教科書に乗せる天体写真などの依頼が入るようになり、脱サラして天体写真家になった。今では日本に数人しかいない天体写真家の一人となり、一軒家も建て、家族を養っている。リッパである。好きな事をあくなき探究心で続けているうちに、ちゃんと食べられるようになっていた、というのは素敵な事だと思う。


おもしろカワイイおじさん

しかし、この第2弾で最もインパクト大だったのは、竹沢うるま氏の写真だった。この人の写真には、なんというか、一目で見るものを惹き付ける強い吸引力がある。構図といい色といい、訪れた土地でひたすらにその土地を歩き周りながら、ビビっと来たものを撮っているのだが、人物写真などは、躍動感のある写真も静かな肖像写真も、構図と光線の加減が絶妙で、ピタっと、ここだ!という一瞬が切り取られている感じがある。彼にとって、「写真は言葉」であると言う。言語では伝えられないものを写真で伝える、というのだ。色彩感覚と構図に独特のセンスがあり、その写真には強い魅力と磁力がある。2014年のナショナルジオグラフィック写真賞を受賞した竹沢氏。飄々としたそのありようとともに、彼の写真からは「本物」感がオーラのように放たれていた。久々に強く捕まれる何かを感じた写真だった。



切り取る風景、その視点が面白い、という点では、一流商社を辞めて写真の世界に飛び込んだGOTO AKI氏の写真も、ああ面白いな、と感じさせてくれる「何か」があった。ご本人も可愛らしくて飄々とした雰囲気で、世界を巡って旅をすることと写真を撮るという大好きな事がふたつながら仕事として成り立っている心地良さのようなものが漂っていた。ANAに乗るとぱらぱらとページをめくるのが楽しみな「翼の王国」の写真も担当しているらしい。旅をして写真を撮れる。旅と写真が好きな人にとっては至福の職業だろうと思う。



第2弾でフィーチュアされていたカメラはEOS 5Dシリーズで、登場するカメラマン達はこのカメラで締めくくりの写真を撮っていた。

写真家達は、みな、撮りたいものを求めて移動し、ビビビと来るポイントがみつかるまで三脚を担いで歩き回る。時には国内のみならず世界を股にかけて移動し、とにかく歩く。そして諦めない。旅と写真というのは不可分のようである。写真家たちは移動しながら何かを見つけ、それを撮る。何かを探しながら旅をする場合もあれば、撮りたいものがあってそこまでの旅をすることもある。いずれにしても、旅と写真は不可分だな、というのが強い印象として残った。
1つの作品が終り、次の作品を生み出すために、旅は欠かせないインスピレーションの源であり、心の栄養でもあるのだろう。

そんな写真家たちも、最初からいきなり写真で食べていこうなどとは思わないので、大抵は普通に就職するのだが、サラリーマンや保母やエレクトーン講師などをやっているうちに、枠に捕われずに仕事をしたい、自分を表現できるような仕事がしたい、何がどうでも写真を撮って生きて行きたい、と、やむにやまれぬ衝動が沸き上ってきて写真家を志向するようになる。強く志向すれば、みんながみんなプロの写真家になれるわけではないだろうが、どうしても!という思いの強さがいろいろな事を動かしていくのだろうな、とも思う。

旅と写真はワタシも大好物で、どちらも人生には欠かせないと思っているけれども、それで食べて行こう!などとは思わない。食べていけるとも思えないし、ワタシにとってそれらはあくまで趣味で十分なのだが、好きな事を仕事にして、目を輝かせながら被写体を追っている人々を見ていると、何かを本気で追求する、本気で挑戦する、という事の純粋無雑さが、ひたすらに眩しく見えた。写真を撮る事は、自分を探す事でもある。好きな事で食べていく、というのは険しいけれども、無上の喜びでもあるのだろう。好奇心と探究心に衝き動かされて、日々、目を輝かせながら生きていかれる、というのは、幸せな事だなと思った。そこまでの「強い思い」を抱けるという事が、既に才能の一部なのだろう。

ピックアップされていた写真家たちの写真(主に竹沢うるま氏の写真)を生で見たいので、この番組と連動企画の写真展「The Photographers2-心を揺さぶる光景を求めて-」をキヤノンギャラリーに見に行こうと思っている。
ワタシは、コンデジではかなり前からIXYを使っていて、一応キヤノンユーザーではあるのだけど、今ちょっと気になっているカメラがあり、このドキュメンタリーを見ていて、やはりあのカメラを買ってしまおうか、などと心が動き始めている。
…あぁ、なんてキヤノンの思う壷か。しかし、心地よく乗せられる、というのもまた幸いな事であり、さして押し付けがましくなく、いつしかその気にさせる、というのはプロモーションを兼ねたドキュメンタリーとして出来がいいという事の証左だろうと思う。    しかし、巧く考えた企画だなぁ、これ。

コメント

  • 2015/07/09 (Thu) 21:51

    kikiさん

    これ、観たいです!DVDにならないでしょうか~被写体が天体とか自然とか戦場とか、山とか、自分の興味のある世界ならなおさら。
    ドキュメンタリーなどのカメラマンは重い機材を抱えながら過酷な場所に立っているので、険しい山岳の登山家よりも撮影しているカメラマンがすごいと思ったりします。探してみます!

  • 2015/07/10 (Fri) 07:48

    ふうさん
    そうそう。本当に、登山家よりも、その登山家を一緒に登りながら撮影してるカメラマンの方が凄いと思いますよね。

    で、面白かったですよ。これ。でもまだDVDにはなっていないんじゃないかと…。というか、DVDになるのかしらん、こういうのって…。Ummm.
    ともあれ、BS朝日の番組なので、BSの番組って暫くすると再放送したりするんですよ。三ヶ月とか半年たつと。だからもしかすると、秋か年末あたりに再放送する可能性大だと思います。もしその情報をキャッチしたらお知らせしますわ。

  • 2016/03/07 (Mon) 22:00
    今頃ですが・・・

    kiki さんこんにちは、今頃のコメントで失礼します.

    この番組、ボクも大好きで、Blu-ray に録画して観ました.
    たまたま数日前にも一番古いものを観たばかりです.

    ボクはこの番組 (最初の2回) を観て、ついつい 7D Mkll を買ってしまい、いまではドッブリ写真にはまっています・・・・・・キャノンの思う壺にドップリなのです(笑)

    この番組に登場するカメラマンは、人間的にすごく引き込まれるような魅力のある方ばかりです.
    特に ルークオザワ 氏の 「何時間空を眺めていても飽きない ・・・・」 というのは、ボクも全く一緒なのです・・・・・・ただ、ボクは飛行機には興味ありませんが.
    こういうことを言う人、ボクはなんとなく信じちゃうなぁ.
    kiki さんも書いておられるとおり、この番組はそんなカメラマンたちに魅力がよく引き出された番組だと思います.

    今年 CP+ というカメラの大イベントに行ってみましたが、カメラ人気のすごさを痛感しました、と同時にそんな中でもカリスマ的なカメラマンの凄さというものを改めて肌に感じてきました.

    ちなみに kiki さんがどんなカメラを購入したのか興味津々です.

  • 2016/03/08 (Tue) 22:10
    Re: 今頃ですが・・・

    la_belle_epoqueさん こんばんは。おひさしぶりです。
    いつの記事でも全く問題ありませんので、お気になさらずコメントしてください。むしろ、古い記事にコメントをもらった方が微妙にうれしかったりしませんか?(笑)

    CANONはこれ、上手く考えましたよね。カメラという商品を売るのにこれ以上はない企画だと思います。番組見終わるとカメラ欲しくなりますよね。まず間違いなく。ふふふ。
    で、la_belle_epoqueさんは、うまうまとCANONの術中にハマって7D Mkllを購入されたわけですね? 使い心地はいかがですか? やっぱり手放せない!という感じでしょうか。

    大好きな事を仕事にする、というのは、しんどいこともあるでしょうけど、結局好きな事をやっているので、どんな事にでも耐えられてしまうんでしょうね。その上、軌道に乗ればお金にもなって、毎年新しい事に挑戦していかれる、となったら、これはもう突き進んでしまうだろうと思われます。番組を見ていて、登場するカメラマンたちがちょっと羨ましくなりました。

    カメラのイベントは大盛況なのでしょうねー。凄そうです。素人カメラマンは巷にあふれまくってますよね。カメラの性能もいいので、素人でもある程度の写真が撮れてしまう、今のような時代だからこそ、プロとアマを隔てる壁というのは高くなっているような気もします。素人がちょっといい写真を撮れる時代に、さすがプロだね、と人に思わせる写真を撮るというのは並大抵じゃないだろうな、と思いますよね。

    …で、ワタシが何を買ったかなんですが、あれこれと物色したり、調べたり、人に意見を聞いたりしてみて、重たくてゴツい、カメラ然としたカメラを買っても、重くて大げさなので、すぐに面倒くさくなって使わなくなるし、旅に持っていってチョイ撮りするには大きなカメラじゃない方がいい、という意見が幾つか出たので、そうか、旅に持って出て、直感的にシャッターを押すには、ゴツすぎるカメラだったり、レンズをあれこれとりかえなくちゃならない感じだと面倒になって、そのうち使わなくなってしまうな、と自分でも想像がついたので、ガッツリとした、いかにもなカメラは買いませんでした。
    で、目的と便利さと、今の自分の力量とに鑑みて最適と思えるカメラを買いはしたんですが、CANONじゃなかったんですねぇ、これが。申し訳なし。

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