「コードネーム U.N.C.L.E.」(THE MAN FROM U.N.C.L.E.)

-続編は作れるのか、流れるのか-
2015年 英 ガイ・リッチー監督



昨年から今年にかけて、やけにイギリスがスパイ映画を繰り出してくる。「キングスマン」も楽しく観たし、鳴り物入りの「007 スペクター」も封切りになる。だが、ワタシは「スペクター」には全く食指が動かない。サム・メンデスが前作「スカイフォール」を踏襲したテイストで作る、とわかった時点でもはや興味索然。トレーラーで老けたダニエル・クレイグを見てダメ押しに見る気がなくなった。このブログを開始当初から読んでくださっている方々の中には、「スペクター」の感想を読みたい、という方もいらっしゃるかもしれないけれど、すみません。ワタクシ、「スペクター」を劇場で鑑賞するのはパスします。爺さんボンドがウジウジと暗い自分探しの旅だなんてワタシの観たいスパイ映画ではないし、「お金と時間の無駄」臭がプンプンする。(ボンドの過去だの内面だのはどうでもいいのだ。方向性を誤っている)
別にその代わりというわけではないが、第3のUKスパイ映画「コードネーム U.N.C.L.E.」にはちらっと食指が動いたので観に行ってみた。

ガイ・リッチーが何かのリメイク的なスパイ映画を撮る、という話は以前、小耳に挟んでいたのだけど、それが「ナポレオン・ソロ」の焼き直しだとは劇場に行って映画を見るまでサッパリ知らなかった。
大体、オリジナルの大昔のTVドラマも、ケーブルの海外ドラマチャンネルで時折流れたりはしているけれども、激しく魅力薄で一度も観たことはなかったワタクシ。しかし、今回のは、昔のドラマの設定だけを借りてきて、新しくガイ・リッチーが作り直した60年代娯楽スパイ映画っぽい映画である。やはり、スパイ物は「東西冷戦下」という時代背景が味付けとして欠かせないのかもしれない。本作では、互いの利害が一致したため、CIAとKGBのトップ・エージェントがある作戦下で共闘させられる、という設定。いやいやながらコンビを組む事になったソロとクリヤキンが凸凹しつつもミッションを遂行する様子が描かれる。CIAのソロの上司役でジャレッド・ハリスが登場。曲者上司役は十八番である。ジャレッド・ハリスはリチャード・ハリスの息子なのだと何年か前に知ったのだけど、まぁ〜親父さんと似てないこと。ジャレッドはちょっと変な顔なのだけど、だから役柄も幅広いのだろうし、脇の曲者役で尽きない需要がありそうだ。



60年代というのは、20世紀のミッドセンチュリーで、ある程度の年齢の人は懐かしみ、若い人は憧れたりする過去なのかもしれない。冷戦はたけなわで、世界は東と西にハッキリと分かれていた。現在の欧米人にとっての「60年代」は、日本人にとっての「昭和30年代」のような「古き良き過去」を指すキーワードなのかもしれない。
時代設定を2015年現在にすると、かつてのように東と西という分かりやすい構造ではなくなったし、テロが横行し、状況がより混沌として複雑で見極め難くなっているので、娯楽スパイ物も作りにくい状況なのだろう。秘密兵器もエスカレートしていくとキテレツなSFになってしまうので、60年代〜70年代あたりの時代設定でスパイ物を作れば、懐古趣味と相まって、スパイのガジェットも行きすぎずにどこか微笑ましく、ストーリーもお話として楽しめる余裕があって、しかもノスタルジックでいながらスタイリッシュという側面もあり、何かと都合がいいのかもしれない。



映画としては、冒頭の、東ベルリンで働く女整備士ギャビーを、西側に逃がすソロと、そのソロをターミネーターのように追うイリヤ・クリヤキンのチェイスが最も面白く、この先どうなるかとワクワクしたが、それ以降の展開は冒頭ほど面白くはなかった。が、映画としては全体的にまずまずの面白さだったし、何よりキャストがWイケメンということで、ワタシ的にはソロを演じているヘンリー・カヴィルがちょっと気に入った。クリヤキンを演じているアーミー・ハマーは何本かの映画で見ているけれども、今回はかなり体ががっしりしている気配で、クリヤキンというよりも、ターミネーターを襲名した方がいいのでは?とたびたび思った。ロシア訛りの英語を話すKGBの腕利きスパイ、という役どころをそれなりにこなしていたが、ロシア訛りやドイツ訛りで英語を話すと、なぜかサイボーグっぽくなり、筋肉質で190cmを超えた長身ともなれば、それはもうどこから見てもターミネーターにしか見えない、という感じになる。


とにかくヌボーっとでっかいアーミー・ハマー

一方、ワタシはこの映画で初めてヘンリー・カヴィルを観たのだが、第一印象は、マット・ボマーをもっとガッチリさせた感じだねぇ、というものだった。映画を観たあとで、何に出てたんだろう?とチェックしたら「マン・オブ・スティール」だった。なんと最新のスーパーマンであったか。道理で知らなかった筈だ。スーパーマンなんて絶対観ないもの、ワタクシ(笑)
スーパーマンを演じているカヴィルには興味を持てなさそうだが、ナポレオン・ソロを演じるカヴィルはなかなかの伊達男っぷりで、裏街道を歩む手癖の悪いスパイ、という役をけっこう魅力的に演じていたと思う。何で見ても良いわけではないだろうが、この映画ではなかなか魅力的に存在していた。
この人は、顔が男前なだけでなく、スーツの上からでも凄い筋肉を付けていそうなのが分かるぐらいにスーツやシャツがパツパツである。それだけ凄い筋肉を着衣でひけらかしておきながら、トルソーを披露するシーンはなかったような気がする。なぜ? 出し惜しみ作戦? ともあれ、この映画の中では、常にビシっと三揃いのスーツを着ているか、バスローブ姿か、という感じだったけれども、映画を観終わったあとでは、ヘンリー・カヴィルの男前っぷりだけが記憶に残った。



この人はピアース・ブロスナンの後任のボンド候補の一人だったが、2005年の新ボンド選定時はちょっと若すぎた為、最終的にダニエル・クレイグに決まったんだとか。ダークヘアでスーツの似合う伊達男で、体もバッチリでアクションもこなす、となれば、ダニエル・クレイグの次のボンド候補にはこの人も再浮上するかもしれない。現在32歳。これからまさに男盛り。今後の活躍に期待がかかる。



さて。ヘンリー・カヴィルの男性美はなかなかだったものの、「コードネーム U.N.C.L.E.」は現在、日本でもさして当たっていないし、USでもさほど当たらなかったようなのだけど、それは映画が本題にさしかかると何となく微妙に失速した観があるのとともに、紅一点のギャビー役の女優(アリシア・ヴィカンダー)に魅力がない事も大きかったかもしれない。芝居も下手だし、品はないし、若くて細くて脚が長いというだけではダメである、ということの見本のような女優だった。ギャビーをもっと魅力のある女優が演じていたら、作品ももう少し面白くなったんだろうと思うのだが、いささか残念である。


イマイチだった カワイイだけじゃダメなのよ

おまけとして、映画の中盤を過ぎたあたりで、どこの冴えない親父かと思ったら、全体に顔のパーツが雪崩を起こした状態のヒュー・グラントが久々に出てきた。もしかして、あれは…と思って、ためつすがめつ見てみたが、やはりヒュー・グラントで間違いなかった。こういう劣化もあるのだね…。眉も目も口元も頬も、全体にズルズルと下垂している。水に浸した麩みたいなオッサンぶりである。ヒューヒューは、ほぼコリン・ファースと同年代だろうと思うけれど、「キングスマン」でのコリンの水際だったスーツ姿を思い出すと、人生いろいろ、男もいろいろだねぇと感慨深かった。

「コードネーム U.N.C.L.E.」は、大ヒットを見越したのか、映画のラストで続編がある事を匂わせてしまっているので、また、Wイケメンと魅力薄の女優というトリオで続編を作るのかもしれない(興行成績はちっと誤算だったので続編は沙汰止みになるかも?(笑))。
もし作ることになったとしたら、続編はもうちょっと最初から最後までテンションが継続して均等に面白いのをお願いしますよ、リッチーさん。

コメント

  • 2015/12/05 (Sat) 09:10
    no title

    映画の内容がショボそうなのはともかく、「老けた」の一言で切り捨てられる俳優が可哀想でなりません。人は誰でも歳を重ねるものです。
    大衆の我儘さを象徴するような記事で大変参考になりました。

  • 2015/12/06 (Sun) 07:42

    007だけでなく、スパイものの魅力はもちろん主役の諜報員/工作員のキャラクターと、レディ(ース)だと思います。
    ところが、最近あまり良いボンドガールに巡り合えてないな~という印象。
    好評だった「スカイフォール」でもダニエルは良かったが、ボンドガールはイマイチだった。
    「スペクター」は監督の意向で、よりエンターテイメント性を引き出したらしいが…。
    30歳のレア・セドゥのことはまだ良くわからないけど、なんだかケイト・モス系のお顔立ちだし、イタリアの至宝なんかいわれてる(た)モニカ・ベルッチなんか50歳でボンドガール抜擢です。
    ダニエルもやや老けたが、マグナム肉体フェロモンだけで世の男たちを虜にしてきたモニカさん、もういいよ~…カラスの足跡がキツイよ…と思ったり。
    「コードネーム U.N.C.L.E.」の方もレディ(ース)が魅力がないならば、スパイ映画の価値も半減ですね~。
    その前にガイ・リッチィの映画に基本お金は払いたくないのがわたし。
    ストーリーにしろキャラクターにしろアクションやカメラワークなどの見せ方にしろ、どうも好きになれない。
    彼のセンスを認められない。クールでファッション的にも…なんて感じで「ウケ」はいいのでしょうが。
    しかしながら、ガイさんが撮ってる撮ってない関係なく、ただ「コードネーム U.N.C.L.E.」の予告だけを観て思ったのは「スペクター」や最近の他スパイものにない「新しさ」だったし、「スタイリッシュさ」と「スリルさ」を感じ取りました。
    …しかし、冒頭で申し上げたように、スパイにはやはり魅力的かつ魅惑的なレディ(ース)が必要なのです。
    そこに主役と同等かそれを上回る知性と品性があれば申し分ないのですがねぇ…。

  • 2015/12/06 (Sun) 16:38

    sanctuaryさん 
    スパイ映画に限らず、女優が出てくるなら魅力がないと却ってまずい、という感じではありますわね。今回、モニカ・ベルッチもかなりオバさんになってしまった感じではありますが、レア・セドゥは割にいい感じではあるようです。しかしまぁ、「スペクター」は映画全体に何か吸引力がないですね。一応、2006年から毎回観ているので、今回も当初は行こうかと思っていたんだけど、どうにも観る気にならない。「カジノ・ロワイヤル」の時には有無を言わさず映画館に引っ張られたんだけど、そういうものを感じない。さっぱり食指が動かない。ワタシにとって、ダニエル・ボンド物は「カジノ・ロワイヤル」に尽きるって感じです。結局、その後作られたものは全て消化不良感があってイマイチな印象です。

    ガイ・リッチーに関して、ワタシは特にどうこうという見解は持っていないので、面白そうなら観に行くし、そうでもなければ放置だし、という感じですが、これは女優にもうちょっと魅力があればよかったな、とは思います。

  • 2015/12/06 (Sun) 16:39

    名無しの人へ
    俳優が老けただけでは切り捨てません。一番の問題は、映画が面白くなさそうだからです。ワタシが観たい方向性ではない、と書いてあります。

  • 2015/12/06 (Sun) 20:36

    kikiさん

     私もこの映画がナポレオンソロのリメイクとは露知らず。大昔、テレビで放映されたときたしかイリヤクリヤキンに惹かれました。デビッドマッカラムのファンというより、イリヤのキャラクターが面白かったみたいです。まだ若かりし乙女だったのでソロの遊び人風のキャラよりイリヤのクールなところが新鮮だったんでしょうね。アーミーハマーはマッカラムとはまったく違うイメージの俳優なのでそれもあって気付けなかったみたい。
     それにしてもあのころの俳優と違って現代の俳優は端役にいたるまで鍛え上げた肉体の持ち主ぞろいですよねえ。
     最近腰を痛めてしまって映画館から遠のいてしまい、この映画もたぶん観に行けないでしょうが、懐かしくて書いてしまいました。(キングスマンは間に合って観れてよかったです!)

  • 2015/12/06 (Sun) 22:36

    ふうさん
    ワタシも観ていて、ヘンリー・カヴィルの役名が「ナポレオン・ソロ」だとわかった時に、なんだって〜???なんじゃそりゃ、と思いました。で、そういえば何かガイ・リッチーがリメイクするとか言ってたのは、それだったか、と気づいたわけで。
    ふうさんは昔のTVシリーズご覧になってたんですね。アーミー・ハマーはクリヤキン役だから、マッカラムじゃない方ですよね。
    そうそう、今、ハリウッド経由で世界的に売り出そうと思ったら、俳優はものすごく体鍛えなくちゃならなくなりますよね。誰もツルツルのひょろひょろな体の人は居ないというか。メジャーになりたきゃ鍛えなさいって感じなんでしょうね。

    この映画は「キングスマン」ほど当たってないから、劇場公開は長びかないでしょうけど、その分DVD化は早くなるだろうので、機会があれば見てみてもいいかもしれませんね(笑)

  • 2015/12/07 (Mon) 01:47

    スペクターの感想を読みたい、という一人のRikoでございます。KIKIさん、劇場ではご覧にならないのですね。う~ん、残念です。私はダニエルがボンドを演じているだけでOKなので勿論速攻観にいきました。カジノロワイヤルが一番ではありますが、それ以降もそれなりに楽しめましたし、ボンドガールも好みなのです、毎回。エヴァちゃんはちょっと私的にあまり、なのですが(KIKIさんは違いますよね)カテリーナ・ムリーノもオルガちゃんもベレニス・マーローも今回のモニカ・ベルッチも好きなタイプなのです、見た目的に。傾向が分かりますね、我ながら。モニカ・ベルッチはどんな感じでダニエルボンドと絡むのかと期待していたのに、少~ししか登場しなくて残念でした。
    ただ確かにダニエルは年齢を重ねているし、随所に過去の作品を髣髴させるシーンが挟まれるので、感慨深くもあり、ダニエルボンドの集大成といった面も感じられ、もう見られなくなるのか、と悲しくなりました。仕方ないけれど。
    「コードネーム・・・」も見ました。可もなく不可もないかなあ、という感想ですが、次回以降のボンドは彼でも良いかも!ただQのベン・ウイショーは続投して欲しいです。好きなので。

  • 2015/12/07 (Mon) 23:17

    Rikoさん すみませんねぇ…どうも今回のはサッパリ気乗りしないんざますわ…。
    もうご覧になられたとのことで、そこそこ面白かったですかしらん? 集大成っぽい雰囲気だ、というのはチラホラ聞きますね。でもダニエルはあと1本契約が残っていたんじゃなかろうかと。もし契約通りに撮るとしたら、次が最終になるんでしょうね。ただ、今回のでサム・メンデスの契約は切れるそうなので、最後の1本は違う監督が撮ることになり、少し違うテイストになるかもしれないですわね。誰が監督をやるのかによって、次を観るかどうかは決めようかしらん。とにかく、サム・メンデスはボンド映画には向かないと思います。「スカイフォール」の終盤には、マジでゲンナリしましたのでね…。ああいうんだったらもういいわ、という感じなんですのよね。ダニエル・クレイグももうボンドには疲れ果てているんじゃないかしらん。毎回やめたいと思ってるけど金のために出ている、とかインタビューに答えている記事を見かけましたわ。正直過ぎよ、あんた、と思いましたけどね(笑)就任9年程度でかなりの老けっぷりなので、次までやると、もうボンドとは別次元のものになりそうな気もしますわね。ベン・ウィショーや、レイフのMは続投するんじゃないかしらん。ダニエルが降りても。

    そうそう。「コードネーム…」は割合と平均的な出来なんですよね。冒頭の部分は面白かったんだけど、そこだけで、あとは失速しちゃうんですわ。でも、ヘンリー・カヴィルだけはちょっと印象に残るでしょ? 彼の方がボンドっぽいんじゃない?とか思いつつ観てましたわ。

  • 2016/03/13 (Sun) 18:07
    UNCLE

    kikiさんのブログを読ませていただいていたので、長い飛行時間、訳の無い「UNCLE」を見ていまして、おっ、これはかの有名な イリア・クリアキンのリメイク版ではありませんか!とやっと気がつきました(笑)

    NCISで、ギブスがDrダッキーを「イリア・クリアキン」とマクギーに紹介していたのは、彼が
    デビット・マッカラムだったからなのですね。
    遅い!
    納得しました。

    いい名前ですね イリア
    いつも、kikiさんのご指南で、DVDを選びます。コリン・ファースは、あまり好きではなかったのです。でも、ダーシー役をマシューと比べ、納得。
    バシッと掴まれましたわ、キングスマン、見ます。

    • ジェード・ランジェイ #-
    • URL
    • 編集
  • 2016/03/13 (Sun) 20:15
    Re: UNCLE

    ジェード・ランジェイさん こんばんは。

    飛行機の中でご覧になったざますか。途中から間延びした展開になるんですが、冒頭は面白かったですよね、これ。結局のところ、ヘンリー・カヴィルの男前っぷりだけが印象に残った映画でした。

    そうですか。DVD選びの参考にしていただいているんですね。「キングスマン」は間違いなく面白いですので、ご覧になってみて損はないと思いますわ。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する