「京都人の密かな愉しみ 冬」Le charme discret des gens de kyoto l’hiver

−京都人はマゾヒスト?−
2016年 NHK BSプレミアム


今回は全くノーマークだったのだけど、第3弾の放映があることにかなりキワキワで気づいて予約録画。早春に冬編の放映か。なんというか、真打の春を出し惜しみしているというか…。まだ出てこない春編がこのシリーズの最終回だったりするのかしらん、どうかしらん。

今回はいつもよりも京都の冬の風習や風物を紹介することに多大な時間を割いていた感じがする。ドラマ部分が後退していた観があった。ドラマ部分はというと、エドワード先生(団時朗)を追いかけて英国からやってきたエミリー(シャーロット・ケイト・フォックス)が、京都と京都人をいけすかない、と言いながら、三八子にライバル意識を燃やしつつも、なんとはなしに京都の習慣にからめ取られていきそうな雰囲気などが描かれていた。
独身主義で自由気ままな生活を愉しみたいエドワード・ヒースローは押しかけ許嫁のエミリーの襲来に恐れをなし、夜逃げして京都の極北、丹後半島の奥地をさすらっている、という設定なので、今回は冬の奥丹後の風景が時折、盛り込まれる。奥丹後の海と風景は、あまり見たことがなかったので新鮮だった。
そうそう。京都には海も山もありますのやな。蟹も美味しそうやった、ほんまに。


奥丹後をさすらうヒースロー先生



エミリーは、エドワードの下宿にそのまま居座り、エドワードと同じ大学に言語学の教授として奉職し、失踪したエドワードを特に探しもせず、悠然と暮らしている。言語学者なので京都弁も研究し始めた彼女が、京都と京都人を胡散臭いと横目にみながら、京都人の定番の言い回しの本当の意味を英語で列挙していくあたりが、いかにもではあったが面白かった。何しろ、昨今は日本中に外国人観光客があふれていて、中でもメッカなのが京都だろうので、京都を訪れる外国人にとっては、この部分はいい指南になるのではなかろうかと思われた。
エミリーの心の声までずっと英語でやっていると煩わしいので、途中から心の声は友近が担当している。友近の早口のキパキパした標準語が、シャーロットの冷ややかな表情とよく合っていた。「京都人の最も重要な資質はマゾヒストである、ということだ」なんてね。
が、シャーロット演じるエミリーが、あまりに斜に構えて、京都人に敵対意識をもち、最初から京都人の性根を悪く取り、威丈高になっているという設定に、やや、やりすぎ感を覚えた。
また、エミリーとエドワードのいきさつも、なんだかあまりにも大昔の少女漫画みたいな設定で興ざめだった。



ともあれ、
そういうエミリーや、非京都人に対して、京都人は「ほっちっち」精神で対抗する、というわけある。

シャーロット・ケイト・フォックスは、「マッサン」の番宣などで見かけた時よりも器量が上がったというか、垢抜けて美人になった感じがした。マッサンの嫁さん役はあまり垢抜ける必要のない役で、しかも控えめで純情可憐な役だったので、特にこれという個性も感じないルックスだったが、今回、初めてちゃんとシャーロットを見てみて、綺麗だし、演技も上手いのだね、と再認識した。確か、最近では故国のブロードウェイで「シカゴ」の舞台に立っていたんじゃなかったかしら、と思ったけれども、それはもう終わったのかな。ミュージカルに出られるということは歌も踊りもできるということだから、演技もできるし、今後、意外なまでの大出世を果たす可能性もある。若い頃、日本で仕事をしていたことのある女優は案外、大成したりするので(キャメロン・ディアスとか、ナオミ・ワッツとか)シャーロットもそのうち、ハリウッド映画に声が掛かるかもしれない。あまり日本で熱心に仕事しない方がいいんじゃないかしらん。余計なことだけど。


けっこうキツい嫌な女の役だったが、上手かったシャーロット・ケイト・フォックス

一方で、「生粋の京都人」という設定の常盤貴子演じる老舗菓子舗の若女将・三八子は、何やらだんだんと存在感が薄くなり、常盤貴子の京都弁も前2作に比べて一向に上達している気配もなく、何やら生硬い印象の京都弁のままで、どうにも「生粋の京都人」という感じじゃないけどなぁ…という印象はもっと強くなってしまった。なんというか、はんなり感が足りまへんのやな。東京人のワタシが言うのもどうかと思うけれども、なんとなく。



その背景には、本当に生粋の京都人である、料理研究家の大原千鶴女史が番組中の京都家庭料理コーナーに登場して、ほんまものの柔らかい京都弁で滑らかにしゃべりながら、季節の京都料理(家庭で楽しんで食べるための工夫の効いた料理)を作るので、そうそう、やっぱり京都弁てこういう雰囲気だよね、という印象を強く感じるということがある。



女史の実家である、花背の料理旅館「美山荘」については、まだ訪れたことはないのだけれど(一度、桜の季節に泊まって、摘み草料理を味わってみたいと思っているけれど、そんな時期はそれこそ一見さんお断りになりそうな気がする)、その存在を随分前から知ってはいた。10年ほど前に見た民放のドキュメンタリー番組で、大原女史の弟さん(多分)である現在の当主が、美山荘を料理旅館として確立させた先代である偉大な父の跡を継ぐにあたって、方向性に悩み、美山荘の料理とは何か、わざわざ山奥まで来てくれるお客様に何を提供するべきなのか、を、瓢亭の主人、高橋氏や、菊の井の主人、村田氏などの京都料理界(というか日本料理界)の重鎮にアドバイスをもらいながら、模索していく様子が描かれていて、美山荘の佇まいともども印象に残っていた。千鶴さんは、亡くなられた先代の美山荘主人であるお父上に面差しが似ておられるようだ。



この千鶴さんのコーナーが好評なのか、どんどん時間が長くなり、その分、常盤貴子の三八子の出演シーンが減っているような印象があるけど、気のせいだろうか。ともあれ、今回の千鶴さんの京都家庭料理、骨正月の白味噌のお椀と蒸し寿司はとても美味しそうだった。ちょっと作ってみたくなる料理だ。白味噌の粕汁に使われていた漆器も塗りが綺麗で大ぶりでとても美しいお椀だった。ああいうお椀だと汁物も余計に美味しく感じるだろうなぁ、などと思いつつ眺めた。





それと、今回は、冬が旬だということで、聖護院かぶらの漬物の仕込み風景がかなり長く紹介されていた。

かように、季節的にも行事が目白押しのせいか、京の風物をぎっしりと紹介することに重きを置かれた感じの今回の冬編は、それなりに興味深かったけれども(有職雛の老舗がとてもいい感じだった)、そういうのは情報番組や旅番組でけっこう見られるからねぇ…というのもあったりして、ドラマ部分とのバランスが崩れてるな、という感じもした。そのへんのバランスが絶妙だったのは、やはり初回の秋編だったと思う。情緒といい、余韻といい、最高だった。夏編のときにも感じたが、最初があまりに出来がいいと続編というのは難しいものだ。しょっぱなに最高のものが出てしまうと、あとは下降するしかないからである。今回はドラマ部分が後退し、情報番組色が濃厚になっていた観があった。

冬編の京都人物語は一編だけで、それもなんだかなぁ…というようなエピソードではあった。ただ、関東の男と結婚し、キャリアを捨てて子供を産んだが、夫とのズレが激しくなって離婚を決意し、京都に戻ってきた女性を演じる戸田菜穂が、私生活でも何かあったの?と首を傾げたくなるほど、何か非常に疲れて傷ついた雰囲気を醸し出していて、泣くシーンでも芝居を離れて泣いていたように見えたので、かなりのストレスを抱えていそうだな、という感じがした。余計な世話だけど。
また、久々に再会する女子大時代の友達が小沢真珠というのも、何やら違和感のあるキャスティングだった。



*****
それにしても、常盤貴子演じる三八子は、想い人かと思った男は結局腹違いの弟だったし、その後もロマンス系は全くかけらもなしの様子は相変わらずで、それもなんだか無味乾燥だなぁという気がする。しかし、彼女はエドワード先生に全く興味がないわけではなさそうなので、次の春編(おそらく)で、エミリーも含めてそこらへんの決着がつくのかどうか。…付きそうもないけど。
しかし、エドワード先生が三八子と…というのはちょっと合わない感じもする。誰かもう少し、これという感じの男を登場させたらどうであろうか。パリっとした感じの男だと設定としてありきたりではあるので、意外に地味でどこがどうというわけでもない、ごくごく普通の男と結婚することになったりしても面白いような気はするのだけど。ふほほ。



また、三八子とエミリーが京都弁で会話するシーンを見ていて、京都人でない人間が京都人を相手に京都弁で会話をするのは滑稽である、ということを今更に感じた。標準語でいいのである。非京都人は京都人になろうとしなくていいのだ。京都人の邪魔をしないように、京都の最低限のルールは知り、侵さぬようにしながらも、自分のアイデンティティを消して京都に同化しようとしなくてもいいのではないかと思う。どうせ、非京都人は京都人にはなれないのだから。
それゆえ、最後にエミリーがお稲荷さんのお返しにサンドイッチを三八子に渡し、「しょうもないもん、じゃないですよ。私は京都人じゃないから、ほんまの事しか言えません」と言うのは非京都人のありようとして正解だと思った。
非京都人は、物静かに、本音で京都人に対するのが一番かもしれない。

コメント

  • 2016/03/22 (Tue) 11:53
    デフォルメ

    確かにこの番組は楽しいです。
    保守的、閉鎖的な部分をを結構誇張した感じはあります。
    京都人、大阪人とはよく聞きますが、東京人、埼玉人など
    その他の県人はあまり聞いたことがありません。
    せいぜい、○○県人会くらいです。
    では、なぜ京都人、大阪人と呼ばれるのでしょうか?
    特殊だから? 憧れを隠した批判的呼び方?
    多少京都をデフォルメしても、成立するから京都は不思議です。
    私は京都人にさげすまれている滋賀人ですけど。

  • 2016/03/22 (Tue) 13:52
    お久しぶりです❗

    夏編以降、初回編が秋編となり・・ということは今回は冬か・・・という流れを承知しつつも、情報が盛り沢山すぎた気がしましたね❗
    たしかにドラマ部分が少なく、内容もそれで?てな感じだったように思います❗
    間人蟹は学生時代丹後へ釣に行った時に泊まった民宿で死ぬほど食べた記憶があり、地元の毛蟹やタラバより語れますよ😁
    それぞれのエピソードもなかなか進まず、次回 春で完編なのかもしれませんが、またまた期待して待ことにします。
    今日も雪がちらちらの北都の地より✌

  • 2016/03/22 (Tue) 14:07
    No title

    お久しぶりです。
    第3作は、凡作に終わった感じですね。

    挿入されたドラマ(戸田菜穂)がこの『京都人・・・』にイマイチ関連性が感じられない。
    第1作の「走る大黒さん」や「洗い職人の進路・・・」などは、自然とこのオムニバスドラマにうち溶けていたのに残念です。
    第一、シャーロットをこじつけてここに登場させるのはあまりも不自然です。

    もうひとつ文句があるのはバックに流れる音楽です。
    第1作は、「忘却」(寺井尚子+リシャール・ガリアーノ)を思い起こさせるような哀切感漂うバンドネオン?がラストシーンで流れていたのですが、今回はあっさりしたもんです。

    兎も角、シャーロットの出現から、ドラマは変な方向へと向かった感じですね。

    さて、春編では、再び若女将三八子さんを主役の場に立ち返らせて欲しいものです。
    だって、あの和服姿は絶品ですものネ。

    • ractyan #r/lOnjdY
    • URL
    • 編集
  • 2016/03/23 (Wed) 23:09
    Re: デフォルメ

    しんさん
    保守的、閉鎖的な部分を誇張してあるのは、多少シニカルに誇張しないとカリカチュアとしてぬるい感じになるからでしょうね。
    東京人、というのは昔からの呼び方ではないでしょうが、最近では言うのではないかと思いますよ。いわゆる「江戸っ子」とは異なるニュアンスで東京の人間について概括しようとすると、「東京人」ということになるかと思います。「東京人」という雑誌もありますし。
    京都人、大阪人または名古屋人などと呼ばれるのは、その県民性(府民性)が、非常に特異で、際立って独特な個性を有しているから呼ばれるんだろうと思います。特殊性によるんでしょうね。そういう意味では東京の人間にもやはり他府県と違った特性があると思います。憧れの裏返しというのは、京都人に対しては、なにがしかあるかもしれませんが、大阪人に対する憧れというのは近畿地方の人以外は無いと思います。

  • 2016/03/23 (Wed) 23:13
    Re: お久しぶりです❗

    沼っちさん
    今回は、本当に盛りだくさんでしたね。ただの情報バラエティじゃないの、これは、という感じでした。

    間人蟹、お味はいかがでした?
    あんな感じで、風呂上りにどーんと海を眺めつつ、茹でたての蟹を食べたら至福でしょうねぇ。あれはやってみたいな。

    おお、次を期待されますか。
    ワタシはどうかな。何しろ、どんどん質が低下しているので、春編をきっちり締めくくれるのかどうか、かなり微妙だなという感じになってきました。秋が頂点で、夏、冬とどんどんダメになってきてますよね。下手に当たるのも考えものかも。

  • 2016/03/23 (Wed) 23:17
    Re: No title

    ractyan さん お久しぶりです。
    凡作でしたねー。前回の夏編の方がまだしもでした。
    夏編でも出来には不満だったのだけど、今回の冬編に比べたらまだしもでしたね。

    シャーロットだけのせいにしては可哀想だけど、最初の秋編が評判を取ったあと、続編を作るに際して、ちょっと舵取りを間違えちゃったのかな、という感じですね。
    前と同じようにやってもマンネリ化するし、かといって新機軸を打ち出すと外すし、という感じで、けっこう難しいんでしょうね。

    次の春編(…と勝手に決めているけど、まぁ、多分そうですよね)では、鮮やかな帰結をみたいものですが。何かグズグズとしそうで、嫌な予感がします。

    原点に立ち返って、優雅に美しく、哀切に、余韻をもって締めくくって欲しいもんでございます。
    …どうかなぁ。

  • 2016/03/31 (Thu) 13:03
    No title

    こちらにもお邪魔させてもらいます。

    私ももう少しで見逃すとこでした。あれ〜?と思いながらも結局最後までリアルタイムで観てしまいました。第一弾からだんだんとクオリティの低下傾向にあるからねと思いつつ。でも間人蟹など知らなかったから興味深かったです。あまり食べ物に執着ない(除くお菓子)私でも、あのカニは食べてみたいと思いましたわ。

    またまた一つ気になった事があります。常盤貴子の京都弁は仕方がないにしても大原千鶴さんです!!ここからは虚構と現実が交差しますが、美山荘といえば左京区といえども京都は北の山の中。洛中室町通りに住む三八子たちからすると美山荘中東家の方々って京都人って思えるのかな。というのも、日文研の井上章一先生の本にこんなくだりがあったので…。

    嵯峨育ちの井上先生は重文「杉本家住宅」の杉本秀太郎氏からそれとなく嵯峨を見下されたような事を言われたので、民博の梅棹忠夫先生(西陣出身)に事の次第を話すと「そりゃ、嵯峨だから仕方ない。自分も子供の頃は嵯峨の人の言葉はおかしいと思うとった」等言われて意気消沈。今度は中京区新町御池で生まれ育った友人に告げると「なんや西陣ふぜいのくせに」って(笑)それから、山科からの縁談に「山科なんかに行ったら東山が西に見えてしまうやないの」と嫌がった中京の老舗のお嬢さんの話とか。。。もう爆笑しましたよ。
    まあ、どの地域でも多かれ少なかれこんな事はありますが、やっぱり京都人の中華意識(!)はすごいと思った。なので、大原さんももしかしたらハブられてるのかな?なんて余計な心配してしまいました。

    戸田菜穂と小沢真珠の話は、何コレ百合のお話なの?と思わずにはいられなかったし。小沢真珠だから「牡丹と薔薇」か。って私はみた事ないんですが(笑)

    シャーロットケイトフォックスと三八子の静かな火花ぱちぱちが良かったな〜。東西の美女ふたり、なかなか乙なものでした。エミリーが「しょうもないもん、じゃないですよ・・・」といったとき、三八子が一瞬だけど微かに笑った?顔が印象的で心に残りました。kikiさん仰るように日本と関わると大成するってあるよね!オリヴィアデハヴィランドとジョーンフォンテイン姉妹(生まれて幼少までの滞在だからお仕事はしてないけど)、シャーリーマクレーンなどオスカー貰ってるものね。あ、ちと話が古いかな。

    三八子にロマンスが無いのはほんと残念。なんであんな美人をほっとくのだろうか、京の男たちは!(怒)それにしても毎回三八子が着てるお着物は素晴らしいですね、憧れます。次回素敵なしめくくり編を期待しておきますわ。

    ※井上先生によると京都をみくびる度合いは大阪がいちばん強い、そうです(笑)

    • ジェーン #io8unDfk
    • URL
    • 編集
  • 2016/04/02 (Sat) 19:55
    Re: No title

    ジェーンさん
    そうそう。新しいのができるたびに、どんどんクオリティが下がっていってますよね。今回のはもう、なんだこれは!という感じで何も書くまいと思ったんだけども、一応、行きがかり上、書きました。ひどかったですね。方向性を完全に間違っていると思います。
    確かにね。カニは食べてみたいですけどね。奥丹後は要チェックですわね。

    大原さんも、京都の中心部に住む人たちから見たら、近郊の人って感じなんでしょうね。東京で言えば、23区じゃなくて三多摩地区の出身じゃないのよ、みたいなノリかしら。でもまぁ、関東の人間からしたら、千鶴さんは立派に京都人ですわ。向こうの人が千葉や埼玉も東京とみなす、というのよりはかなり範囲も狭いと思います。

    シャーロット・ケイト・フォックス、単体ではなかなか良かったですよね。このドラマにはあまり必要ないといえば必要ないけれども。

    次、春編(多分)では秋編につぐぐらいのクオリティで締めくくってもらいたいですね。何かこのままだと地滑りしていってダメダメな感じになりそうな予感もすごくするけれども。頑張ってもらいましょう。

    > ※井上先生によると京都をみくびる度合いは大阪がいちばん強い、そうです(笑)

    ほっへー。それは単なる僻み根性じゃないんですかしらね。良く分かりませんが…。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する