「ナイトメア2 ~血塗られた秘密~」(PENNY DREADFUL Season2)

−魔女たちの飛翔−
2015年 米/英  Desert Wolf Productions他



シーズン2も期待を裏切らない出来の「PENNY DREADFUL」。今回、ヴァネッサとマルコム卿の前に現れるのは手強い悪魔の使い−−三人の魔女たちである。老獪な母とその娘二人の三人の魔女は、昼は人間の姿で暮らし、夜になると本性を現してヴァネッサを魔王に捧げるために襲ってくる。果たしてヴァネッサらは、飛翔する魔女たちの襲撃をかわす事ができるのか…。




というわけで、今回の敵は魔女。それも非常に手強い相手である。三人の魔女達のボスはイヴリン。永遠の若さと美しさを保つため、魔王ルシファーに魂を売り、忠誠を誓った妄執の権化のような女である。彼女の二人の娘達も魔女で、母の指図を受けながら邪悪な事を行うが、娘の一人ヘカテーは母を追い落としてその座に取って代わろうと虎視眈眈と機会を窺っている。イヴリンは、ご主人様であるルシファーがあくなき執念で求めるヴァネッサを彼に捧げる事で、自分の若さと命を永遠に長らえようと目論んでいた…。

イヴリンを演じるのはヘレン・マクローリー。私生活ではあのダミアン・ルイスの奥さんらしい。なるほどね。なんとなく似合いの夫婦という感じがする。このドラマでは、イブリンはどう見ても50代半ばぐらいの熟女だが(ヘレン・マクローリーはまだ40代)、それ以上老けてしまわないように悪魔に魂を売ったのだろう、という感じ。ヘレン・マクローリーは、素で撮影秘話などを語っている時の方が若々しくキレイに見えたが、本編ではどこから見てもおばちゃんなのに若さに執着するとは…という感じもなきにしもあらずだった(まぁ、だからこそ悪魔に魂を売っても若さに執着したいという事なんだろうけど)。しかし、このおばちゃん、年ふりた老獪な魔女なので、マルコム卿を魔術と色仕掛けで誘惑して骨抜きにしかけたりして、なかなかに手強いのである。



シーズン2は、この襲い来る魔女たちとの闘いをメインに、邪悪なものと共に闘っていくうちに芽生えてくる狼男イーサン(ジョシュ・ハートネット)と悪魔に惚れられた女ヴァネッサ(エヴァ・グリーン)との、先に進めてはならない禁断のロマンスも浮上してくる。



ヴァネッサに対するマルコム卿の、実の娘ミーナに対するよりも濃くて深いような愛情も言葉ではっきりと示されたりするが(何ものにも代え難い、とヴァネッサについて語る)、魔女イヴリンの誘惑に晒されてメロメロになりかかってしまうマルコム卿(ティモシー・ダルトン)のいつにないデレデレ振りも、あっという間に終了してしまうが、ちょっと興味深い。



また、シーズン2ではさほど出演シーンは多くなかったものの、リーヴ・カーニー演じるドリアン・グレイの退廃とお耽美ぶりはいよいよ極まっている感じだ。シーズン1でヴァネッサに、私たちが付合うのは危険だわ、と振られてしまってふさいでいたドリアンだが、街で知り合った女装の男娼アンジェリークを気に入り、館に呼んで気まぐれに愛人関係を結ぶものの、隠し部屋の秘密の肖像画を見られてしまうと、いつもの麗らかな表情で眉一筋動かさずに男娼の命を奪うあたりは、ドリアン・グレイの「優雅なる冷酷」ぶりがなかなか魅力的だった。


男もあり、女もあり、なんでもあり

余談だが、シーズン2で初めて「ドリアン・グレイの肖像」の全体が画面に映る。これまでの映画などで見てきたパターンとは異なる肖像画で、この辺にも新し味を出したいんだろうな、と感じた。なんというか、肖像画のドリアンはノートルダム寺院のガーゴイルみたいな姿だった。目だけがリーヴ・カーニーという感じで、ややアメリカンコミック風だった。

リーヴ・カーニーのドリアンは、登場人物中でキャラクターのヤバさではNo.1ではなかろうか。お坊ちゃん然として育ちの良さそうな品のいい微笑を浮かべ、どんな悪徳に身を浸しても、晴れやかで美しい顔や姿はいささかも変容せず、何年経っても年を取らない、けれども冷酷で危険である。自分しか愛さない。そんなドリアン・グレイ役に、リーヴ・カーニーはまさに打ってつけで、よくぞ選んだなぁという感じである。ここでイギリスの俳優だからといって数年前の映画「ドリアン・グレイの肖像」のように、ドリアン役にベン・バーンズのような普通に端正な王子様ルックスの俳優を選んでしまうと、この、姿は清々しいが、悪魔的に危険な感じのドリアン像は生まれなかったと思う。


しなやかにお耽美街道を疾走するリーヴ・カーニーのドリアン・グレイ

リーヴ・カーニーは錚々たる出演者の中で何故かトップ・ビリングなのである。「PENNY DREADFUL」は、日本ではティモシー・ダルトンやエヴァ・グリーン、ジョシュ・ハートネットがまず出演者として名前が挙がるが、オープニングタイトルにクレジットされる名前は、リーヴ・カーニーがトップである。理由はただ単に出演交渉順とかだったりするのかもしれないけれど…。



リーヴ・カーニーはNYはマンハッタンの生まれ。アメリカ人である。20代なかばぐらいに見えるが今年33歳。俳優としては売れ出したばかり、というイメージだが、彼はアルバムも出していて、どちらかといえば俳優よりも音楽活動に気合が入っているらしい。とはいえ、これだけのビジュアルの持ち主なので、これからも面白そうな役、彼でなければ出来なさそうな役はどんどん引き受けて、映画やドラマに出てきてほしいと思う。
ただ若くて綺麗なだけではない、爽やかだが危険で魔的な何かを漂わせる事ができる俳優なんて、いそうで、なかなか居ないものだ。ましてやドリアン・グレイ役にピッタリとハマる俳優なんて、そうそう居ない。貴重である。外見的には、ライアン・ゴスリングの弟、というような雰囲気もあるリーヴ・カーニー。どんな風に年齢を重ねていくのか、楽しみである。ちなみに「ハリーとトント」のアート・カーニーは彼の父親の叔父にあたるらしい。

この優雅でヤバいドリアンと、フランケンシュタイン博士が怪物(ロリー・キニア)に強要され、彼の花嫁として蘇らせた結核で死んだ娼婦ブローナが、いかなる運命の導きか、再会してしまうのである。土から掘り出された彼女は蘇ってリリーという名を与えられる。自分が命を与えた生き物に恋してしまう傾向のあるフランケンシュタインは、またもや彼女に恋をするのだが、最初は無垢な少女のようだったリリーは次第に前世の娼婦時代の記憶が形を変えて蘇り、交尾した後に男を殺すカマキリ女に変容していく。前世の娼婦時代は、結核の身で春をひさぎつつ病死してしまう薄幸で善良な貧しい娼婦だったのに、無理に甦らされた後は前世の被害者キャラとはうってかわって加害者キャラの魔性の女に変貌する、という面白い役を演じているのはビリー・パイパー。イギリス女優としては珍しく、唇がめくれ上がったコケティッシュな顔をしている。



彼女は「ルイス警部」でルイスの相棒ハサウェイを演じているローレンス・フォックスの奥さん。ローレンスと結婚する前は、クリス・エヴァンスと年の差婚をしていたらしい。…とビリー・パイパーの事はともかく、魔性の女リリーと、退廃の海に溺れるドリアンが出会い、互いに惹かれあってしまい、まさにエロスとタナトスとしか言いようのない世界にのめり込んでいくという、シーズン2はその序章で、シーズン3では二人の世界がもっと大々的にフィーチュアされているらしい。おぉ…なんて危険な関係(笑)

一方、自分の花嫁に、と蘇らせてもらったリリーはあっという間にドリアンに奪われて、相変わらず報われない貧乏クジばかり引いている気の毒な怪物を演じているのはロリー・キニア。ダニエル・クレイグの007でMの秘書のような役を演じていた彼である。この人は、温和そうな丸顔と、ソフトな声と、非常に綺麗なブリティッシュ・イングリッシュの発音が特徴的な俳優だ。誕生した瞬間からフランケンシュタイン博士に存在を拒まれ、外見の醜さと高尚な内面のギャップで余計に悲哀を深める孤独な怪物は、シーズン2でもさっぱりその悲哀が薄れる気配はない。…気の毒である。いつか彼が誰かに愛される日は来るのか。それとも、生みの親、フランケンシュタインと共に地獄にまっしぐらなのか…。


いつも、いつまでも可哀想な怪物 その知性も詩人の魂も、彼の孤独を癒しはしない

フランケンシュタインというと、ワタシは94年のケネス・ブラナーが監督とタイトルロールを務めた作品を思い出す。ケネス・ブラナーの演技は覚えていないが、この映画で怪物を演じたのはロバート・デ・ニーロで、彼の悲哀に満ちた演技と目の表情は忘れ難い。「なぜ、造った」(多分この字だったと思う)というキャッチコピーがとても強いインパクトで脳裏に残っている。この映画のテーマはまさに、「なぜ、造った」という事だったろうと思う。今回、いつも可哀想なロリー・キニアの怪物を見ていて、久々に「なぜ、造った」というフレーズが脳裏に浮かんだ。



悪魔に愛された女ことヴァネッサは、エヴァ・グリーンの怪演が今回も際立っている。あれだけ白目をむいて悪魔と戦っていたら、演技といったって精神的に影響が出やしないかしら、と心配になるぐらいに、今回も気合が入っていた。
三白眼で眉間にシワを寄せて悪霊を睨んだり、呪文を唱えつつ失神したりと、このドラマではとかくにオーバーアクションな表情の芝居が多いエヴァなので、顔がシワシワにならないかとちょっと心配なのだが、エヴァの魅力の1つとして、どんな強烈な役を演じていても、素顔になると少女のような瑞々しさを残している、という部分がある。化粧をとってしまうと、エヴァ・グリーンは少女のような顔をしている。謎の女、妖艶な女、秘密を抱えた女を演じさせると天下一品の存在感を示すエヴァだが、肌にシワがなく、素顔が少女のようだ、というのも大きな魅力である。



魔女たちに狙われたヴァネッサが、悪魔と対抗する術を学ぶために森に住む黒魔術を操る老婆の元に身を寄せ、悪魔の言語などを教わる。この森の老婆が魔女狩りの憂き目に遭うくだりなどは、中世に時代が戻ってしまったかのような陰惨さだった。森の老女は、実は魔女イヴリンの実の姉だったりする。血縁者同士の愛憎は、他人同士よりも、もっと深く濃くて救いがないものかもしれないな、などと改めて思ったりした。



*****
悪魔に魔女に狼男にフランケンと、怪物大集合のゴシックホラー「PENNY DREADFUL」だが、シーズン3では、なんと、ジキル博士(とハイド氏)も登場するらしい。19世紀的怪奇ロマン総動員である。まだ登場していないのはヴァンパイアぐらいだろうか。これまで出てきていないのが不思議なぐらいだが、昨今は巷にヴァンパイアものがあふれているので、ここでは故意に登場させていないようにも思う。今後登場するのかどうか、さりげにチェックしていこうと思う。

シーズン3は現在、USとUKで放映中なのだと思うけれども、これが日本で放映されるのは、やはり来年まで待たねばならぬだろうか。今年の冬ぐらいにどうにかならないものだろうか。
なんとか頑張って今年放送して! WOWOW。

コメント

  • 2016/05/30 (Mon) 21:19
    ハマりまくりです

    kiki さんこんにちは.

    ボクも完璧にハマっております.
    最初は エヴァ・グリーン の妖艶さに惹かれて観始めましたが、タイトルでもある三文スリラー小説にでてくる強烈な脇役たちの出現でいろいろな楽しみが増えました.

    ただ内容的にもエロ&グロが多いので、かなり観る人を選んでしまうドラマかもしれませんね.
    そんな内容なので当然と言えば当然なんだろうけれど、ところどころに出てくるボカシがとても不自然に見えてしまいます.

    それともう一つが ドリアン・グレイ のラブシーン.
    ここまで描かなくても ・・・・・・・ これはボク的に限界でした.
    決して同性愛を否定はしていませんが、このラブシーンはアウトだな (笑)

    まだまだいろいろ楽しめそうな予感がするドラマですので、あまり変な方向に行かないで欲しいものです.

  • 2016/06/01 (Wed) 08:45
    Re: ハマりまくりです

    la_belle_epoque さん こんにちは。

    おお。やはり、ハマっておられますか。これ、ある世界を極めてますよね。けっこう予算もかかってるし。製作者も出演者もすごく楽しみながら撮影していて、それが視聴者にも受け入れられている、というのはハッピーな事だなと思います。エヴァちゃんは他の追随を許さないポジションを極めたな、という感じですね。

    エログロが多いのも、このドラマの特色なんでしょうね。怪奇ロマンというのは、やはりその要素も欠かせないと考えているんでしょうね。ボカシは却ってイヤラシイのでやめた方がいいと思うんですが、日本ではなかなか改正されませんね。

    ドリアンのラブシーンは、男性にはちょっと…うぐぐぐぐ、という感じであろうことはお察し致します(笑)限界を迎えてしまわれましたか。ワタシは女性なので、そっち系は見ている分には全然大丈夫です。ドリアン・グレイの原作者はオスカー・ワイルドですし、そっち系もバンバン有りになるのはやむなしかも(笑)目をつぶってやり過ごしてください。まぁ、男性相手はもう暫く無いんじゃないかと思われますが…。

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