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「ナイトクローラー」(NIGHTCRAWLER)

−そこにデバガメな視聴者がいる限り−
2014年 米 ダン・ギルロイ監督



これは、ジェイク・ジレンホールが10kgだかの減量をして不気味なルックスを作り、犯罪現場を生々しく撮影して、TV局に売ることを生業とする”取り憑かれた男”を演じた作品。撮影途中から、ジェイクの入り込みようや、かなりの激やせでクリーピー(不気味)なルックスを作り上げた事などが話題になっていた。鏡を割るシーンで、本当に自らの素手で鏡を割って手を切り、救急で運ばれたりしたというニュースも読んだ。かなりのめり込んで演じているのだな、と思ったが、ワタシは、彼の放つともなしに放つ哀愁に惹かれてファンになったので、キモい男を熱演しているジェイクを見る勇気がなかった。
ゆえに、劇場公開時は見送ったのだが、このほどWOWOWで放映されたのを録画しておき、やっと観る気になったので鑑賞してみた。


ジェイク演じるルイス・ブルームは、ロスの片隅で一人暮らす無職の男。時折コソ泥をやって生活しつつも職を探しているが、学歴も職歴も資格もなく、門前払いが続いている。自分には向上心もあるし、頭も悪くないと思っているが、何をしたらいいかも見つけられない。
そんなある日、ひょんな事から、事件現場に警察よりも早く到着し、生々しい事件の映像を撮影してはTV局のニュース番組に売る事を生業としている連中がいる事を知る。自分が何に向いているのか、自分が探していたものが何だったのか、ルイスは漠然と手応えを感じる。早速、盗んだ自転車を売り飛ばして中古のビデオ機材を買い、見よう見まねで事件専門のパパラッチ「ナイトクローラー」業に飛び込んでいくのだったが…。



というわけで、
それまで、どちらかといえばイケメン系のイメージだったジェイクだが、本作では、スクープ映像を撮ることに取り憑かれた男を表現するために、げっそりと体重を落として頬をこけさせ、髪もぺったりとなでつけ、瞬かないギョロ目の上に濃い眉毛を整えずにそのまま生やしっぱなしにして、冴えない服を着て猫背で歩く、小頭が良く、抜け目がなく学習能力の高い、ハイエナのような男を見事に演じている。全体にかなりキモい感じにはなっているが、時折、本来のキュートな面差しがちょっと表層に出てしまうのもご愛嬌…というか、時々目元が微妙にカワイイ、なんて思ってしまうのは、ワタシが元からのファンだからなのだろう。大抵の人にとっては、本作のジェイクはかなりのキモキモっぷりにちがいない。

駆け出しのナイトクローラーとして仕事を始めたルイスは、見よう見まねで事件映像を撮影し、小さなTV局のニュース専門の女性ディレクター、ニーナに映像を買ってもらうことに成功する。



姥桜のニュース・ディレクター、ニーナを演じるのはレネ・ルッソ。「アウトブレイク」(1995)の頃は美人だったが、今はさすがにもうお年…という感じにはなっているものの、なんだか魅力がある。老けたなぁ…とは思うのだが、仕事のためという事が大きくても、彼女の半分ぐらいの年齢のルイスが関係を持ちたがる気持ちも分からなくはない、という雰囲気をちゃんと出している。それにしてもレネ・ルッソとはまた、渋いところにニーナ役を持ってきたなと思ったら、彼女は本作の監督、ダン・ギルロイの奥さんなのだった。なるほど、そういうわけか、とは思ったものの、レネ・ルッソがいいキャスティングだった事には変わりはない。
そういえば、レネ・ルッソは「マイ・インターン」でもロバート・デ・ニーロ演じる初老のインターンに惚れられる会社お抱えのマッサージ師役で登場し、姥桜の色気を振りまいていた。もしかして今、売れっ子おばさんになっているのだろうか。ふほほ。それもまたよし、という感じである。



*****
法律スレスレだろうが何だろうが、倫理だの何だのと二の足を踏んでいる間にショッキングな映像は流した者勝ちだ、という考えのニーナに「釘付けになるような絵を撮ってきてちょうだい!」とハッパをかけられたルイスは、気合を入れてナイトクローラー業に邁進する。
ニーナの狙いは、リッチな白人たちの恐怖感を煽って視聴率を稼ぐことである。白人の多い高級住宅地で強盗殺人事件が起き、犯人が貧困者やマイノリティで逃走中であれば理想的だ、と言う彼女。ルイスは彼女の狙いを察する。

しかし、ある夜、同時に起きた2つの事件の選択を誤ったルイスは、ニーナに激しく罵倒される。同業者の撮ったもう1つの事件のスクープ映像は他局に買われて大々的に放映され、翌朝、その映像を見たルイスは悔しさのあまり狂気の叫びをあげ、洗面台の鏡を割る。(ジェイクが手を切ってしまったのはこのシーンだと思われる)
確かに、このシーンの演技は特に気合が入っており、ジェイクの顔には「シャイニング」のジャック・ニコルソンにも引けを取らない狂気がみなぎっていた。(ひ〜〜〜〜〜)



ニュース・ディレクター、ニーナに叱咤されて夜を走り回るうちに、ルイスはもう撮るものなどないと思われた事件現場で撮るべきものを見つけ出し、独自のアングルで視聴者の耳目を惹きそうな映像を撮る事に成功する。
何を撮るかだけではなく、どう撮るか、その事件をどう切り取るか、によって、ネタがないと思われた現場で売れる映像が撮れることに気付いたのである。それが彼の視点となり、売りとなっていく。
ルイスは職にあぶれた若者をナビゲーター兼撮影助手に雇い、警察無線を傍受しながら、助手に最速で現場に到着できるルートを探させ、事件を追って夜のロサンゼルスを疾走する。

そして、それまでに出会ったタフな人間たちの交渉術を全て取り入れ、駆け引きにも強くなっていく。
やがて、法律や知人の生死なども屁とも思わず、ネタとして冷静に撮影し、利用するようにもなる。
彼の行動や思考は、とにもかくにも迷いがなく徹底している。このルイスの迷いの無さ、「ナイトクローラーとして成功する」という目的に向かって、手段を選ばず一直線に進むさまが、いっそ潔く感じられる。どうせそんな稼業をするなら、どこまでも割り切って、罪悪感もなにもなく、とことんやる方が清々しいというものかもしれない。


なんでも撮るよ〜俺は!

ルイスはまさしく、気持ちいいぐらいにまっしぐらである。彼にとっては、14年もこの道でやってきた先輩のクローラー(ビル・パクストン)が事件を追いつつ事故をおこして重傷を負っている姿も、単なる被写体でしかない。明日はわが身などとはけして思わず、救急車に運ばれる同業者を瞬きもせずにビデオに撮る。彼にとっては当たり前の事である。そしてその特ダネ映像をニーナとの交渉用にしっかりと使う。まさにお見事と言っていい手際である。

ルイスにとって、どこか通じる感覚を持っているニーナは仕事上の同志だが、それ以外の人間は利用するか無視するか、のどちらかしかない。そして必要なくなった人間は情け容赦なく、「合法的に」切り捨てるのである。
この切り捨ては事件に紛れて行われ、彼はまたしてもそれを瞬きもせずにビデオに収める。
この映画の新し味は、そのことで、ルイスが何ら報いを受けない、というところかもしれない。うまうまと邪魔になりだした人間を葬りながら、罪にもならず、何の蹉跌にもならず、むしろそれまでより一段階以上、飛躍するキッカケとする点である。

警察はルイスに目をつけているものの、具体的に何をしたというわけでもないので事情聴取をするのが関の山である。何か胡散臭いと思っていても、当面は、いかんともしがたいのだ。映画としても、ルイスのありようを全く否定していない。むしろ、これからはこういう人間がどんどん増えるんじゃないの?そう思わない?というニュアンスを感じる。
ルイスは警察に嘯く。「人々の破滅の瞬間に僕が顔を出すんだ。それが仕事だ」と。



かくしてルイスは目論見通りに、彼なりの成功の階段を登り始めるのだが、彼にそうさせているのは、おぞましいもの、恐ろしいもの、ぞっとするほど生々しいものを見たい!という視聴者の欲求である。需要がなければ供給はない。ルイスが、もっと、もっと、と夜の街を駆け回り、撮ってきた映像が売れるのは、それを見る人々が確実に存在するからに他ならない。
ルイスは不気味な傍観者だが、もっとも不気味な傍観者であるのは、自宅のソファにどっかりと座りながら、生々しいニュース映像を見ているTVの視聴者なのだ、という構図もしっかりと伝わってくる。
ルイスが生きがいを見出したナイトクローラーという職業は、必要悪というものなのだろう。人間がそういう生き物である限り、ナイトクローラーに限らず、必要悪的な職業は栄えていくというわけなのだ。

この映画は撮影も良く、ハリウッドを中心に、ロサンゼルスを切り取った映像が良い。ジェイクの演技と同じくらいに良い。昼は乾いて埃っぽく、広い通りにヤシの木が高くそびえ、夜はスペイン風の建築をライトが浮かび上がらせる。小高い丘の上から眺めるロサンゼルスの早朝や、ルイスの住むロス郊外のアパートから、高層ビルの立ち並ぶ中心地を舐めた映像など、折々のロスの風景が効果的に挟まって映画全体の雰囲気を作り上げていた。

*****
ワタシはジェイク・ジレンホールのミーハーなファンなので、今後もあまりこういう役でジェイクを見たいとは思わないけれども、本作はとても面白かったし、ジェイクも演技者として一段階も二段階も、進化した仕事っぷりを見せてくれた。「エベレスト3D」は、別にジェイクじゃなくても誰でもいいような役で、映画自体もちょっとどうなんだろうか、という感じではあったが、「サウスポー」ではボクサーを演じて、また気合の入った役作りをしていたようだ。とにかく、演じがいのある役、手応えのある役を求めて、ガンガンと仕事をしている感のあるジェイクだが、ワタシとしては、ついつい、哀愁の漂う目元を生かした役で出てきてほしいと思ったりしてしまう。

そういう映画としては、「Demolition」(2015)は妻を悲劇的な事故で失った男が新しい出会いで再生するというストーリーで、ありきたりな話ではあるが、ジェイクが久々に普通のルックスで出ている映画だし、共演はナオミ・ワッツなので見たいと思っているのだけど、今のところ日本公開されるかどうかわからない感じである。劇場公開しなくてもいいから、映画チャンネルのどれかで放映してもらいたいと思う。


「Demolition」のジェイク

…ワタシは、普通の男を演じるジェイクに少し飢えているのだな、と苦笑した。

コメント

  • 2016/10/03 (Mon) 23:46
    No title

    kikiさん おひさしぶりです。ふうです。

    私は普通の男を演じるジェイクに少し飢えてる...

    すごく共感します。ナイトクローラー、レンタルDVDもよく見かけるのですが、なかなか手が伸びません。サウスポーは観たのですが、普通か?というとそうではないし、まあ,奥さん役のレイチエルマクアダムスや娘役の子役さんとのからみとか、このナイトクローラーに比べると、まだ入りやすかったですけど。

    たぶん今は演技へのエネルギーをありったけの勢いで発散せずにはいられない時期なんでしょうね。ファンとしては待つしかないのでしょうねえ。

  • 2016/10/05 (Wed) 00:11
    Re: No title

    ふうさん どうもどうも。
    本当にね〜。ここいらで普通の男のジェイクが見たいですよね。新作のニュースを聞くと、いつもなんか変に頑張った役なので「う〜〜、またそういうやつなわけね…」とため息が出ちゃったりして(笑)
    まぁ、そのうち、ごく普通の男を演じたいモードに切り替わるだろうので、待つともなしに待ちましょう。気長に(笑)

  • 2017/05/21 (Sun) 16:13

    ブラザーのジェイクがすきです。

  • 2017/05/26 (Fri) 21:18
    Re: タイトルなし

    yukoさん こんばんは。
    超かめレスで申し訳ありませぬ。
    ブラザーのジェイク、いいですよね。切なかった。やはりジェイクは切なさ命だと思います。あの瞳がぎゅんぎゅん訴えかけてくるんですよねぇ…。

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