「京都人の密かな愉しみ 月夜の告白 Le Charme discret des gens de kyoto La Lune」

−秋の月夜にもの想う−
2016年 NHK BSプレミアム



2015年の1月に放映された第1弾の出来が良く、その後、季節ごとに作られる続編を一応見はしたものの、正直、2本目の夏、3本目の冬はかなりレベルダウンしたな、という印象で、今回、秋をテーマにまた作られたと聞いても、あまり見る気がしなかった。が、ひとまず録画しておいて、ようよう鑑賞してみると、おぉ、出来栄えが蘇っている気配。第1弾のフィーリングがそこはかとなく戻っているじゃないですか。  …ふ〜ん。やはり、京都は秋がいちばん、ですかね。

今回のテーマは「月」。中秋の名月というのは有名だけれども、昔は、日々刻々と形の変わる月を待って、月を形によって仏にみたて、十三夜の月や、十五夜の月、はたまた二六夜の月の出を待ち、月が消えるまで夜明かしをした「月待ち講」なる集いが明治期あたりまで存続していたというのも、初耳だったので興味深かった。
十五夜の月は大日如来、二六夜の月は愛染明王に見立てられているというのも初めて知った。


空に浮かぶ月と池に映る月を双方愛でることができる大沢池 もろに陰陽師的世界観

また、戦前からのチャンバラ映画の大スター、大河内傳次郎が嵐山に別荘として建てた「大河内山荘」の高台の四阿(あずまや)からは、東山三十六峰と京都の街が見渡せて、東山の上に昇る月を眺められるらしい。素晴らしい。戦前の映画スターというのは桁外れに稼いでいたらしいというのは、この大河内山荘の規模や、渋くも贅沢な造りを見ても察しられる。同じ頃に大スターだった嵐山寛寿郎は、大スターだったから大河内より稼いでいたかもしれないが、使う方も超弩級で、結婚と離婚を繰り返し、離婚するたびに別れた奥さんに家やお金を気前よく全部やってしまうので、晩年は小さな家に住んでおられたらしい。さすが、鞍馬天狗のおぢさんである。




比叡山を含む東山三十六峰が見渡せる四阿 その山の上に月がのぼる

さて。
今回は、常盤貴子の三八子以外にも妙齢の女性が二人登場。京都人物語に華を添えていた。京都と京都弁が、割にしっくりと似合っている本上まなみと、芸者姿がサマになっていた黒谷友香である。しかし黒谷友香は京都の芸妓というよりも、東京の新橋芸者とかの方が雰囲気的に合っている気がしたが、それはそれとして京都弁は案外、上手だったようにも感じたので、ちょっとチェックしてみると、黒谷友香も本上まなみもナニワの出身らしいので、京都弁もそれなりにサクっとこなせたのかもしれない。関西人が京都弁を話すのは、関東の人間が話すほどには不自然ではないし、苦労もないのかもしれない。
本上まなみは、やや倦怠期に入り、遊び心がうずいて止まらない夫に対して胸に空洞を抱えた妻が、思いがけず風流な笛吹き男に出会ったことで、気持ちが切なく揺れてしまう、という雰囲気が表情や挙措動作によく出ていた。


役に合っていた本上まなみ


芸者が似合うと思わなかったが、よく似合っていた黒谷友香

この二人の女性から想われる果報な男に安藤政信が扮している。もちろん、折々映画などには出ていたのだろうけれど、ワタシ的には安藤政信を随分久々に見た気がする。(というか、ワタシが知っている安藤政信の出演作品は「キッズ・リターン」だけなのだけど…)このドラマでは、なんだか変なヘアスタイルで全く似合っていなかった。京都弁も、いかにも関東出身の人間が頑張ってしゃべっているけど全くこなれていない、という感じだし、雅楽の笛をたしなむ男にも見えないし、笛を吹く様子もサマになっていなかった。が、最後にバーテンダーとしてカウンターの中でカクテルを作る様子は実にサマになっていたし、板についていた。役者と役には、向き、不向きというものは確かにあると思う。


このヘアスタイルはちょっと…。これじゃ金田一耕助やがな

しかし、この安藤政信が扮している妻を亡くした男が、他に好きな女がいるのに、わざわざ人妻の本上まなみを深夜零時近くに上る二六夜の月を見るために、思わせぶりに「出てこられますか」などと誘ったのは、一体どういうわけだったのだろう。結局、死んだ妻によく似た女の前で、妻の思い出と決別するために物狂おしい音色の笛を吹いて自分の中でケリをつけるための道具として、本上まなみ演じる骨董屋の若奥さんを利用しただけである。なんという身勝手。自分の都合で深夜零時近くに河原に呼び出しておいて、亡き妻をあの世に送り出してやりたい、なんて、冗談はヘアスタイルだけにしなさい、という感じである。まぁ、安藤政信のせいではなく、役の設定が奇妙キテレツなのだけど。
骨董屋の奥さんは、駆け落ちさえも辞さない気で小さな旅行かばんさえ携えて出てきてしまったというのに、思わせぶりもたいがいにしいんかいな。セルフィッシュすぎるがな。でも、まぁ、その件があって骨董屋の奥さんは倦怠期を迎えて浮気の虫がうずき始めていた夫との仲を修復する方向に向かうのだけど…。


奥さん、すごいお弁当ですやん

ここで本上まなみがせっせとこしらえる弁当がやけに素人離れしたお弁当で、奥さん、それお金取れますやん、という感じの素晴らしいお弁当だった。このお弁当の献立も大原千鶴さんの監修なのかどうかは不明だけれど、毎日こんな素晴らしいお弁当を作ってくれる妻がいたら、男も申し訳なくて浮気なんぞできまへんやろね(笑)
フラフラしている骨董屋の若旦那の様子をそれとなくチェックしに来る、粋人の京都の旦那衆を演じる佐川満男のワケ知りな雰囲気もなかなかグッドだった。


佐川満男の登場シーン さりげなく良かったざます

そして今回は、あの弟だった雲水さんではなく、どうやらおフランスに三八子(常盤貴子)の想い人がいそうだ、ということが判明したりする。フランスに住んでいる日本人ではなく、おフランス人らしい気配ではあるけれども、何やら三八子の片思いっぽい気配もありやなしや…。

このシリーズも、もしかすると来年の春の桜あたりで打ち止めとなり、シメとしては、腹ちがいの出家の弟が老舗和菓子屋を継ぐことを了承し、三八子は晴れて家の重いくびきを離れて自由になるが、フランスにいる想い人とは添えるのかどうなのか…というあたりで終わるのではないかと推察するけれども、どうだろうか。
そしてヒースロー先生は、出家したフリをしようがどうしようが、結局は地の果てまでエミリーに追いかけられるであろうということで、あぁご愁傷様。


宇治の寺に身を潜めている先生だが…

今回は、出家した腹ちがいの弟を演じている深水元基の表情が、前回、前々回よりも明るくなっていてナイスだった。この弟が店を継ぐことになるのかどうなのか…。




雲水姿がよく似合っておられる

*****
それにしても、このシリーズを観ていると、つくづくと、良い季節にぷらっと京都へ行って散策したり、美味しいものを食べ歩いたりするのは最高だけれども、京都に住む、というのはかなりハードルが高いし、うっかりすると、あまりの面倒くささや窮屈さに京都を嫌いになってしまいかねないので、非京都人はあまり住むことは考えずに、遠くから遥かに、京都っていいよねぇ、ふぅ…とため息とともに眺めているのがベストかもしれない、と思う。
たとえば、素晴らしい美人とは一緒に生活するよりも、遠くからさりげに眺めていて、たまに他愛ない会話を交わすぐらいが最も快適なように。ある程度の距離をおく、ということはけっこう大事かもしれない。

それはそれとして、次に京都に行ったら、大河内山荘の四阿で月を眺めてみたいものだなぁ、と思ってしまったkikiでございます。柴犬と月を眺めていた和尚さんの山寺も微笑ましかった。ちょっと行くのは大変そうだけど(笑)

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「京都人の密かな愉しみ 夏」

「京都人の密かな愉しみ 冬」

コメント

  • 2016/12/09 (Fri) 15:46
    No title

    kikiさん、お久しぶりです。

    ここ数年身内の慶弔事が続き特に今年は夏から秋にかけて。やっと落ち着いてきたと思ったらすでに師走!ああ、今夏のリオ五輪や錦織圭活躍のテニスなど愉しいスポーツ談義に加われなくて残念でしたわ。

    さて、本放送時は気が付きもしなかったのですが先日の再放送で何とか見る事ができました。2回目の秋か・・・と思いつつ。第一弾の心地良い衝撃には及びませんでしたが私もkikiさんと同じく良かったかなと。雲水さんの心が解けてきたようで何となくちょっぴり安心しました。そして三八子は恋をあきらめたのかしら?あ〜もったいない姉弟どすなあ。

    本上まなみ、黒谷友香もいい感じでしたがもっと常盤貴子が見たかった。エミリーは狂言回しっていうかトリックスターね。エドワードとその後どうなるのか俄然興味が湧いてきましたよ。皆んなまあるく収まるといいのにね。

    大原先生のは、お料理コーナーではなくもうトークショウ化してますね(笑)それはそれで面白いんですが、やっぱり三八子をもっと出して〜と思ってしまう私です。

    やはり秋は良いですね。それと対ということで春爛漫の京都も見てみたいです。
    ※今ふと思い出しましたが、小学生の一時期私満月というあだ名で呼ばれてました!

    • ジェーン #io8unDfk
    • URL
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  • 2016/12/10 (Sat) 13:27

    ジェーンさん お久しぶりー。
    夏から秋は色々お忙しかったんですね。ワタシも、今年は特に夏から秋が仕事が忙しくて、それが一段落してふと気づいたらもう11月に入っていた、という感じでした。夏が終わると本当に1年が早いですね。
    もう師走であっという間に新しい年が来るってことで、毎度ながら早いと思います。夏までは比較的ゆっくりと時間が進む感覚なのだけど、夏が終わると一気に師走まで行ってしまいますよね。

    テニスは来年、年明け早々からATPツアーが始まるし、1月中旬には全豪が始まるので愉しみです。全豪で盛り上がりましょう。

    そういえば、三八子の出番がここのところ減ってますよね。これって、最終回に向けての布石というか、それまでにあまり露出しないように、彼女の話はあまり進めないようにしている感じもなきにしもあらず。
    まぁ、来春で最終回かどうかも分かりませんが、あまりノンベンダラリと続けているよりも、どこかでさっと終わりにした方がいいでしょうしね。

    秋は、京都奈良の観光客が最も増える時期らしいですね。春の桜よりも秋の紅葉を求めていく人が多いんだな、と思います。でも、春の桜もいいんですよね。京都は垂れ桜が多いのが京都らしくてナイスです。

    小学生の頃のあだ名が満月って凄いネーミングですが、丸顔だったということかしらん(笑)

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