「イエスマン “YES”は人生のパスワード」

~Noというのも、また大事~
2008年 米 ペイトン・リード監督




どうもタイトル(特にサブタイトル)がちょっとなぁ、という空気を孕んでいたので見に行く予定はなかったのだけど、案外面白いという評判を聞いたのでもしかすると植木さんの映画を観たあとのような気分になれたりするかしらん、と思って観てみる事にした。
結果、植木さんのくれるカタルシスとは味わいが違うものの、ジム・キャリーおよび映画全体に十分に楽しませてもらった。
ジム・キャリーを映画館で観るのは、もしかすると初めてかもしれない。彼のこれまでの代表作は封切り時には見ないで、DVDかTVで観ただけじゃなかろうかと思われるが、ネクラなタイプも、振り切れハイテンション系も得意とする彼にはまさにうってつけの役だった。
キャリー演じるカールは何事にも気乗り薄な男。特にウシロムキなつもりは自分では無いのだが、結婚半年で離婚した×イチ男の彼は友達の誘いも断ってばかり。とにかくこの男、電話に出ない。あんなに電話に出たくないなら何故に携帯を持ち歩くのか?とか、こんなに何を言っても気乗り薄でことわってばかりいる男をそれでもなお、偏執狂のように誘うあの友達の方がかなり変なんじゃ?などという思いが次々に湧いてしまうわけだが、周囲はめげずに彼に声をかけ続け、彼はそれをなんのかのと言って断り続けるのである。
普通、あれだけノリが悪かったらもう誘わないでしょうに…。
全ての誘いを断って何をしているのかというと、家でカウチポテト。観る映画は「300」。
ははは。ま、いいじゃないの。本人はそれで楽しくやってるなら。
そんなカールは銀行の融資担当。当然、融資の申請は全て却下しつづける。



そんな彼に、「Yesと言おう!」という自己啓発セミナーへの誘いが齎される。やれやれ気分で一応会場に行くカールだが、ここでセミナーの主催者として登場するのがテレンス・スタンプ。テレンス!ワタシはこの映画のキャストはジム・キャリー以外全く知らずに行ったので、突然のテレンス登場に大受け。いや?、なんという存在感。朗々と響き渡る声に、タダモノではない雰囲気をびゅうびゅうと放出しつつ、どことなく胡散臭いテレンス・スタンプ。まさに打ってつけ。前から思っていたのだが、テレンス・スタンプって平 幹二郎と似ている。そのありようもなんとなく被る気がする。このセミナー会場でのテレンス・スタンプの演技は圧巻。有無を言わせぬ勢いと間と存在感で圧倒的に浚って行く。ジム・キャリーも押しまくられてタジタジ笑顔を浮かべるばかり。

 出た???!

この主催者に、「今後は判断を迫られる全ての機会にYes!と言うこと」とを約束させられ、キャリーはその晩からしぶしぶ実践することになり、その結果、その晩にスクーターをすっ飛ばすアリソンという女の子と知り合いになる。このアリソンを演じているゾーイー・デシャネルは今回初めて観たが、キュートでいい感じ。個性的だが可愛い女の子をさらりと印象的に演じていて作為がないのが清々しく感じられた。ジム・キャリーとの演技の掛け合いも呼吸がピッタリで、二人でハリウッド・ボウルに夜中に忍びこみ、ステージ上でビートルズナンバーを歌うカールにyayayayaとあいの手を入れるアリソンの間合いが微笑ましくもピッタリだった。些細なところだけど相手のこういうところが好きなんだよね、という感じがよく伝わってきた。二人で行き先を決めずに旅行に出ようと、空港で待っているアリソンを後ろから来たカールがいきなり荷物のように小脇に抱えてカウンターに行くシーンなど、楽しそうでいい。

 キュートなゾーイー

また、融資係であるカールの元に融資を頼みに来る人の中に、スターの似顔絵ケーキを売り出したいという女性が出てきて、サンプルに持ってきたケーキを見て、「わお、ミッキー・ロークだね?」とカールが言うと「…U2のボノよ」と女性が言う。この似て蝶ギャグは再度使われて、「あら、このケーキ、ジョン・グッドマン(でぶちんの俳優)にそっくり!」と言われて「アレック・ボールドウィン(元二枚目俳優、現でぶちん)よ」と女性が答える。この2回目の似て蝶ギャグにはかなり受けた。アレック・ボールドウィンってちょっと見ない間に「誰?」というほど平気で太ってしまう。いまは俳優じゃないらしいので、幾ら太っても構わない世界に溢れ出たようだ。またこの似顔絵ケーキ作りの女性がかなり太めでメガネをかけていて、ちらっと今は亡きナンシー関が脳裏をよぎった。

ハリウッド映画にはかならずマイノリティがちらほらと出演するのもお決まりだが、70年代まで主流だった中国人、80?90年代の日本人に代わって極東系ではコリアンが昨今の流行りらしい。ジム・キャリーのカールはハングル語もしゃべるシーンがあるが、あまりハングルに聞こえなかった。イラン人女性のお見合いサイトなども出てきて、今のアメリカ(しかもロス)らしさってこういう感じなんだろかしらんね、と思った。コリアンをフィーチュアした事については、いまさら日本人では目新しさが無いからね、今回はコリアンで行こうか、というぐらいなところだろうという感じがした。ブームになってあれにもこれにもコリアンが出てくる、という事は無さそうな気がする。なんとなく。

コスプレ・パーティ好きのカールの上司ノーマン(リス・ダービー)がカールに必要以上に好意的で、仕事中にメールで自宅でのコスプレ・パーティへの誘いなどを送りつけ、イエスマンと化したカールがYesと返信すると「え!?」というほど大喜びしたり、(この上司は「300」のコスプレで髭王姿で現れたりする。ハリポタの方がお似あいだった)何度も何度も断っているのに、めげずに何度もカールを誘う周辺の人間の根気の良さについて、なぜにそんなにカールに構うのか?という素朴な疑問はあるものの、映画全体としてはしつこくなく、さらっと面白かったのが何より良かったと思う。演出は「恋は邪魔者」レビューはこちら)のペイトン・リード監督。この人はさらっとしたコメディにセンスがあるようだ。

 はははは。

来るもの拒まずYesと言っているうちに彼女は出来るわ、出世はするわと、ウホウホのカールだが、果たしていかなる時もYesばかりでうまく行くのか?というところは観てのお楽しみ。まぁ、コメディですからどうせハッピーエンドに決まっているけど、観ている間中、なんとなく新鮮な気持ちで楽しく観賞した。
ジム・キャリーは小顔で長身、脚も長く、黙っていれば(凡庸な感じの)ハンサムマンなのだが、その二枚目っぷりを打ち壊す百面相を今回も様々にみせてくれた。やりすぎずにオハコの変顔を見せるさじ加減が絶妙だった。
また、ギターを抱えて歌も披露するが、もちろん歌もうまい。
Noばかり言っているネガティヴな男も似合うし、Yes連発でアクティヴになったところはお約束のジム・キャリー全開。




ワタシ的に今回は、ずっと興味があったドゥカティの荒馬のような走りも、ジム・キャリーのお尻とともに観賞することができたりして(お尻は見なくてもよいシロモノだったけど)、わぉ、ドゥカティ!と話の筋に関係ないところまで楽しめた。

観終った後で、知らずに少し顔がニヤニヤしちゃうような、微妙に気分がハイになるような気のする映画だった。タイトルのわりに押し付けがましくない作りなのが良かったと思う。ゾーイー・デシャネルのキュートさもかなりの好感度だった。そして、忘れちゃいけないテレンス・スタンプ、少ししか出ないが絶大な出演効果だった。さすがである。


***
余談だが予告編タイムにLuxのショートムービーを流していた。ゼタ・ジョーンズを使って大層金をかけた映画仕立てのCMだが、“輝きの秘密”を盗みに来るバイクの男を見ていて、どうせ違うに決まっているけど、ここでヘルメットを脱いだらダニエルだった、な?んて展開だといいのになぁ、なんてあらぬ妄想をしてしまった。ワタシがキャスティングしたら絶対にそうする。ゼタ・ジョーンズだけでもかなりのギャラなんだから、この際ギャラについては糸目をつけずに相手役も奮発するべきじゃなくってかしらん、なんてね。

コメント

  • 2009/03/29 (Sun) 02:02

    私もアレック・ボールドウィンネタには笑いました!試写会で観てたんですけど、そのシーンで笑ってるのは私だけでした(爆)。もうボールドウィンは過去の人なのね~。
    それにしてもあの似顔絵ケーキ、商品としてヒットするんでしょうか(笑)。

  • 2009/03/29 (Sun) 08:27

    確かにボールドウィンは過去の人でしょうね。誰もクスっとも来てなかったですね。このシーン。でもジョン・グッドマンが咄嗟にどんな人か分からないって事もあるかな、と思いましたわ。似顔絵ケーキは、サンプルに持ってくるのにいかにも美味しそうな女優じゃなくてむさい俳優の似顔を作ってくるというのがマニアックですね。美味しくなさそうだものね~。女優やキレイな俳優のだったら売れる、かも。

  • 2009/04/02 (Thu) 23:00

    私も昨日この映画観てきました。意外とジム・キャリーお得意の顔芸が出てないなーと思ったんですが、最初のほうのシーンでバーのウェイトレスと激突してひっくり返るシーンの体のさばき方など、流石だなあ・・・と思うシーンもちらほらあって良かったです。

    あと、私も本編を観るまでテレンス・スタンプが出ていることを知らなかったので、自己啓発セミナーのシーンでジャンジャジャ~ン♪という音楽と共に登場したときにはのけぞりました。ジム・キャリーのところに頭の位置固定でダダダダッと駆け寄り、ステージに戻ったときのスチャッ!という感じのポーズを決めるのを見たところで、ああ、これ劇場で観て良かったあ、と。内容も、気軽に楽しめるコメディに徹していて楽しかったです。

  • 2009/04/03 (Fri) 07:21

    yukazoさん。あの教祖サマ的なテレンスの登場には驚きつつ大受けした、という人はけっこう居るかもしれませんね。自分でもやってて楽しいのか、確かに漫画的な動きでした。キャラのツボを押さえてましたね。いきなりマイクでゴッと殴ったりして楽しそうでした。
    ジム・キャリーは運動神経もいいから、体の動きも滑らかですね。ワタシは彼がニカっと笑った時、眉間にシワが寄り、歯が剥き出された状態での口元と目元に漂うそこはかとない禍々しさみたいなのも結構好きなんですよ。爽やか青年の役をしていても、よりによって笑顔を繰り出した時に胡散臭いにおいがしてしまう、というのがキャリーらしいなぁ、と。サイコな犯人とかやったらハマリ過ぎてそういう役から戻ってこられなさそうだわ、と思いながら毎度見てます。「シャイニング」をリメイクするならジャックの役はジム・キャリーで決まりだな、とかね。顔芸は控えめだったけど、ワタシが予想していたよりは繰り出してたなぁと感じました。どうしてもやってしまうのね、お約束だから。あの、顔にセロテープを貼っての変顔なんていかにも彼らしかったです。そこまでしないでもよくってよ…となだめつつ見てました。

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