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「カルテット」は面白い

−たとえ、夢が叶わなくても−
TBS 金子文紀 他 演出 坂元裕二 脚本



地上波の連続ドラマを見なくなって随分たつワタシなのだけど、ごくたまに放送開始前にそのドラマの情報が目に入り、「面白そうだな」と思うことがある。それでこのたび、珍しくも1回目から見ている地上波民放ドラマが「カルテット」だ。松田龍平や満島ひかりなど出演者の顔ぶれも興味が湧くし、何より軽井沢+弦楽四重奏というのに、何やらそそられた。なんで軽井沢?とも思うけれども、「軽井沢」って、相変わらず強力である。

軽井沢の別荘で共同生活しつつ、カルテットとして週末に演奏活動をする男女4人、という基本設定も面白いが、ふぅん、と思ったのは、彼らがもはや20代ではなく、好きな事を仕事にすることができなかった30代の「夢が叶わなかった人たち」である、という部分であろうか。
「人生のピークにたどり着くことなく、ゆるやかな下り坂の前で立ち止まっている者たち」
それは、世間の大半の人々が共有する通奏低音かもしれない。子供の頃に、あるいは学生の頃に夢見た通りの自分になっている、という人はそう多くはないだろう。好きな事で食べてはいけないが、夢も捨てきれない。そんな30代の男女が「偶然」出会い、カルテットを組んで共同生活を送ることになる。

というわけで、物語は冬の軽井沢を舞台にそれぞれのバックグラウンドを折々明らかにしながら、個々の関係性をゆるやかに変化させつつ、紡がれていくわけである。
主演の4人は絶妙の間合いで坂元裕二のセリフを自然にこなし、毎回、ふふふ、という感じの掛け合いを見せてくれる。セリフの背景にあるものについて、4人がきちんと感じとるべきものを感じ取っているからこそ、掛け合いの間が生きているような感じがする。

まずは、巻 真紀(まき まき)という名の人妻バイオリニストを演じる松たか子について。真紀は夫に突如失踪された人妻である。都内にあるマンションの部屋は、夫が失踪した時のまま(脱ぎ散らかした服や靴下などがそのまま)になっている。彼女は結婚する前も結婚していた間も、結局のところ夫がどういう人間なのかを全く知らなかった自分に気づく。そして「夫婦って、別れられる家族なんだと思います」と言う。なるほど。元は他人なのだから、「別れられない家族」にならなくては結婚は続かないわけである。

松たか子はいかにもシュアにこの手の役をこなしている。盤石の安定感である。ルックスも地味目にしているのだろうけれど、このドラマを見ていて、松たか子は年をとるにつれて、だんだん森光子に似てくるのではないか(というか、今すでにもう似ている?)という気がする。あと数年すると、「放浪記」の舞台ででんぐり返しをやっていそうである。このドラマとは全く関係ない感想だけれど。

チェリストで無職の世吹(せぶき)すずめを演じる満島ひかりにちょっと驚いた。ワタシは彼女を「夏の終わり」の映画化作品で見たことがあるだけだったので、もっとオトナオトナした女優なのかと思っていたのだが、こういう、ある種の不思議ちゃんみたいな役もやすやすとこなしてしまう柔軟性があるというのは知らなかった。ただ、彼女が演じるすずめちゃんの過去の秘密については、「…え?」という感じで、ちっと脱力な感は否めなかったけれど…。でも普通にOLとして生きようとしていた彼女が過去を知られて職場で陰湿なイジメを受け、仕事を続けられなくなる、というあたりは、今の世の中を表しているのかもしれない。(しかし、あの過去が分かったぐらいで、あんな陰湿なイジメを受けるものだろうか…)
それはそうと、すずめちゃんがよく使う「みぞみぞしてきた」というのは、どういう感じのことだろうか。ざわざわする、とかぞわぞわする、というのに近い感覚だろうか。



屁理屈屋でこだわりの強いヴィオラ奏者の家盛諭高(いえもりゆたか)を演じるのは高橋一生。ワタシはこの人を見るのは今回が初だけど、理屈っぽい男にそれなりの現実感をもたせていると思う。「ボーダーを着る時には、他に着ている人がいるかもしれないとか考えません?」なんてセリフがあったが、そんな事いちいち考えてボーダー着やしないだろうよ、と思ってしまった(笑)見ていると、なんか、こういうやたらに細かいこだわりの強い男っているわね、という気分になる。この家盛の秘密というのも大した秘密じゃなさそうな気配が漂っているけれど…。

そして、松田龍平演じる別府 司は、祖父が世界的な指揮者であるという音楽一家に生まれた普通の人、という設定。一応、バイオリンは弾くけれども、演奏家でやっていけるほどではないのでサラリーマンをしているのである。司は学生時代に偶然、バイオリンの練習をしている真紀の姿を見て以来、彼女に恋をしているという設定である。いかにも10年ぐらいずっと片思いをしていそうな雰囲気を醸し出している。
松田龍平は最近、こういうメガネをかけたお坊ちゃんの植物系キャラを演じることが多い気がするが、上品でのほほんとしたボク、というのがハマり役になって他の役ができなくならないように、たまに違うタイプの役も混ぜていってほしいとは思う。

1話目のゲストにイッセー尾形が出演。音楽家として生きていきたいと願いつつ、成功できなかったが夢を諦めきれないピアノ弾きの悲哀を漂わせて、イッセー尾形ならではの空気感だった。
彼が余命わずかという嘘をついて仕事をもらっている事を知った真紀(松たか子)は、その事を彼がピアノを弾くレストランのオーナーに話してお払い箱にし、代わりにカルテットの仕事をもらう。真紀のように控えめで物静かだが、いざとなると思い切った行動をとる女性というのは、実際にもけっこう世の中に存在する。というか、おとなしそうに見える人ほどそういう傾向が強い気がする。
イッセー尾形演じるピアニストに自分たちの未来の姿を見たカルテットの4人。同じく「夢の沼に沈んだキリギリス」として、彼が嘘で仕事を得ているなら、自分たちは奪うしかないのだ、という真紀の言葉に他の3人は反論できない。



この初回が良かったので、毎週チェックすることに決めたワタシ。2話目は司(松田龍平)の勤め先の同僚の女性の話がメインで、これもなかなか味わいがあった。男女を超えて仲のいい存在で、カラオケに行って終電がなくなって女性の部屋に泊まっても何も起きない。が、互いに男と女であるという事と完全に無縁にはなれない。こういう関係性というのは、どこの職場にも存在すると思う。
そして、相手に自分ではない本命がいる以上は、他に相手をみつけて別の人生を歩きだすしかない。そういう事が自分のなかできちんと割り切れている司の同僚を演じた菊池亜希子がさらりと良かった。



3話目がすずめちゃん(満島ひかり)の過去が明らかになるエピソードなのだが、正直、ワタシはちょっとこの過去恥部の設定にはなんだかなぁ…と思ってしまった。せっかくこれまでいい流れで来ていたのに、なにやら嘘くさい設定が混ざり込んで些か残念な感じもしたが、まぁ、まだ3話目だしね。
すずめちゃんに絡んで、もたいまさこが彼女特有の空気感で登場し、やってるやってる、とニヤニヤしたが、この人もこういうねじくれた感じが定番になっているので、違う雰囲気の役でも見てみたい気もした。

…ともあれ、彼らが一冬を軽井沢の別荘を拠点にカルテットを組んで過ごすことで、何が生まれ、何が変わるのか、ちょっと楽しみなドラマではある。夢を諦めつつあるとはいえ、彼らはまだ30代であるというところがミソだろうか。これが全員40代となると、定職に就いていなかったり、いつまでも実現しない夢をふわふわと追っているというのは痛いものを漂わせるようになってくるだろう。しかし、世間にはそういう人も多いのだし、むしろその方がリアルかもしれない。ドラマとして40代を設定できれば思い切ってるなぁ、と感心したところだけれど、まぁ、40代に設定すると、やや身も蓋もなくなる感は拭えないし、やはり30代の方がドラマとしてスイートだものね。

彼らのカルテットがひと冬で終わるのか、それともそれなりにささやかに成功して長続きするものになるのか。そして、4人の間のそこかしこに発生している恋愛の芽はどう育っていくのか、失踪した真紀の夫はいつ、どういう風に姿を表すのか、など、どう回していくのかな、ふふ、ふふ、と気になる展開ではある。



以前から、赤の他人が一つ屋根の下に共同生活をするうちに疑似家族のようになる、という関係性はドラマや映画でけっこう描かれてきているが、共通の趣味なり、仕事なりを持った人間同士で集まって共同生活をするのはいくつになっても楽しそうである。疑似家族の要素もあるし、落ち着いた「テラスハウス」的要素もある。10代や20代だけでなく、30代になっても、そういう状況(あるいは人生の猶予期間)を楽しんだりできる、というメッセージが、このドラマの隠し味であるかもしれない。

適度な距離とポライトネスな空気感を保ちつつ、軽井沢の、暖炉のある別荘で共同生活しながら、カルテットを組む、というのは、おとぎ話のような設定である。この、ややホロニガなヤングアダルトのおとぎ話にどんな結末が用意されているのか、ハズレのオチにならない事を願いつつ、楽しみに見ていきたいと思う。

コメント

  • 2017/02/06 (Mon) 12:13

    今シーズンのTVドラマはなんだか評判が先行して、批評家らの揚げ足取りというか、いつものことだけど初回視聴率がどうの、打ち切られそうだとか、(視聴率)持ってない女優だとか、出鼻を挫くような前評判が囁かれて、その影響を受けてかどれも中途半端に鑑賞している自分がいます。
    まあ、演技下手でネガティブな雰囲気しか醸し出さないだけの松田兄が出るドラマ/映画は出来るだけ避けてきたわたくしですから、今回もスルーを決め込んでいましたが、ピーマンやネギを皿の端に避けて好きなものだけ食べるというのもちょっと大人げないなあと思うこの頃。
    kikiさんの初期レビューを読んで、興味を持ち始めております。
    松たか子は実力的にもわたしは好きな女優。将来は森光子ですか。
    うふふ。なにかと懐の深い女性ですし、あり得るかも。
    満島ひかりは離婚してから更に演技力に磨きがかかった気が致します。
    元歌手のガリガリ三角形の女優ですが、クオーターの血のおかげか、自分をしっかりと持った方なのだろうなと昔から注目していました。
    ヘンテコな弟くんも何気に好きですし。
    3週逃しましたが、今週から観てみますです。

    • Sanctuary #V0sVL5lk
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    • 編集
  • 2017/02/06 (Mon) 23:16
    Re:

    Sanctuaryさん
    ワタシが地上波の連ドラを見るのは、本当に久々です。前は何を見たのかもう忘れてしまったけど(笑)
    「カルテット」は、今のところ、初回と2回目は面白かったですが、3回目はちと、うむむむ…な展開でもありました。回によって当たり外れがありそうですし、Sanctuaryさんの鑑賞に耐えるかどうか保証の限りではございませんが、一度ご覧になってみても悪くはないかもしれませんね。何やら外した設定だね、という感じの筋書きの回でなければいいのですが(笑)

  • 2017/02/08 (Wed) 23:49
    No title

    Hello、kikiさん!

    すぐオンデマンドで第3話見て昨日のオンエアで第4話見ました。ネットには、ラブサスペンス!とあったので私の頭に浮かんだのは「クライングゲーム」(古いかな?)。でもこのドラマは、ラブコメ&サスペンスって感じですね。得てしてサスペンスってコメディの要素がありますしね。なかなかに面白かったです。松田龍平と満島ひかりの演技見るの初めてなのでkikiさんの感想と合わせて興味深く感じました。

    松たか子がどうしても森光子に見えて仕方なかったです(笑)。高橋一生は好きな役者なので昨夜の子供との絡みには柄にもなく目がうるうるしちゃいました。

    従兄弟が某フィルハーモニー交響楽団に所属するチェロリストなのですが(勿論チェリストですがある時叔母がチェロリストと言ったので以来我が家ではチェロリストとよんでます、爆)何というかその〜変人ぽいのね。藝大出て楽団入るまでやっぱり不安定だったようだし、入っても日本のオーケストラは経営難が多いしね。個人的にCD出したり活動してるみたいですが。なのでこのドラマ結構親近感が湧きました。ちょっといろんな要素詰め込みすぎの様な気もしますが今後の展開に期待したいです。あ、有朱の吉岡里帆が良い役どころですね。

    「ザ・クラウン」kikiさんの仰せ通りサクッと鑑賞しようとNetflixダウンロードして第1話は見たのですが(初っ端から嫌味なマットスミス、飛ばしてますね〜)「Sherlock」S4を見てしまうわ、全豪opは始まるわで時間が無くっていよいよ無料視聴の期限が迫っております。Sherlockは原作にあるキーワード(シーズン3の最後にも出てくる)の扱いを確認したくて観たのですが「そう来るのかっ!」って思いました。ロシアがやってくれましたね。UKでのEp3放映前にロシアの放送局が流してしまってBBCはおかんむりでした。早くnhkでも放送してくれないかなと思うのは毎度の事です。早くkikiさんの感想キキたいです。

    私もいろいろ詰め込みすぎですが、最後に全豪オープンの感想を。こちらでも盛り上がっていましたが、今年の印象は何と言ってもフェデラー夫人のあのピンクのセーターです。アレ目にした途端、こりゃピンクの熊さんバブワウリンカ(笑)に対してピンク地に虎で威嚇する気だなと。バブワウ危しと。で結果はやっぱり虎は熊より強かった!!私はナダル好きなので最後は残念でしたが優勝したフェデラーには敬意を払わずにはいられませんでした。

    • ジェーン #io8unDfk
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  • 2017/02/10 (Fri) 08:48
    Re:

    ジェーンさん こんにちは。
    ご覧になったざますか。これまでのところ、1話目が一番良かったような気がしますが、ようやく中盤にさしかかろうというところだし、これからもっと密かに盛り上がってくるんでしょうね。高橋一生の家盛さんの息子エピソード、案外良かったですね。関西弁の奥さんもなかなかいい味でした。

    松たか子、森光子に似てますよね。似てるでしょ?目もととかほっぺたとか鼻の感じとかね。あとは長持ちしそうな女優根性や女優生命も、松たか子は森光子二世って感じがします。

    ご親戚にプロのチェ(ロ)リストの方がいらっしゃるんですね。音楽って一番潰しが利かない分野ですよね。友達にも音大出た人が何人かいますが、みな、演奏家にはなっていず、結婚してピアノを教えているとか、趣味で演奏するだけ、とかいう人が多いです。楽団もなかなか欠員が出ないし、出ても給料あまりよくないらしいですよね。従兄弟さんはひとまず楽団に入れて良かったですね。

    吉岡里帆、なかなかですよね。こういう娘っていますよね。確かに(笑)

    「ザ・クラウン」もご覧になったざますか。結構面白いでしょう?見始めるとけっこう見ちゃいますよ。ワタシは無料期間だけでやめようと思っていたのだけど、別のドラマも見始めたら止まらず、結局、もっとも安い月額料金で暫く継続することにしました。Netflixはとにもかくにもオリジナルドラマの質でもってるんですわね。見始めたら止まらないドラマ揃えてますわ。ニクイ奴ざます。

    「Sherlock」いつ放送するんでしょね。そろそろ告知してもいいんじゃないかと思うけれど。ロシアはなんだかんだとフライングしますよね。中国に次いで、著作権とかのルール違反が多そうです。

    そしてフェデラー。どっかり妻の悪趣味なセーターの印象も吹っ飛ばすほどの快進撃で、半年の休養のあとで再び主役に躍り出ましたね。ワタシは彼の全盛期を見ていないので、なんぼのもんなのかしらん、と思っていたのだけど、やはりさすがにリビング・レジェンドと奉られるのも伊達じゃないなと感心しましたよ。確かに、特別な選ばれた人ですね。ちょうどジョコやマレーが揃って早期敗退するというのも、彼が「持っている」証拠かもしれません。

  • 2017/02/23 (Thu) 17:47

    う~ん…視聴者を置いてけぼりされたような感覚にさせるこの展開は…。

    • Sanctuary #V0sVL5lk
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    • 編集
  • 2017/02/26 (Sun) 22:07
    Re: タイトルなし

    ははは。ダメでしたか。
    まぁ、好き嫌いは分かれそうなドラマですよね。視聴率もイマイチらしいですが、ワタシはそこそこ面白く観ていますわ。ふほ。

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